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海外オープンイノベーション戦略において ヨーロッパに注目すべき理由

海外オープンイノベーション戦略において ヨーロッパに注目すべき理由

日本企業の多くは、オープンイノベーション戦略の一環として、最先端のテクノロジーを手掛ける海外のスタートアップ企業に目を向けています。急速に変化するグローバルな技術環境/ビジネス環境の中で、市場シェアの拡大・多角化・維持に役立つ新たな製品やサービスを開発するために、最先端技術は不可欠だと考えているからです。
 
しかし、注目度の高い米国のイノベーション環境への参入を急ぐあまり、ヨーロッパで急成長しているスタートアップのエコシステムをすっかり見落としている企業も少なくありません。米国は世界的に有名なイノベーション聖地ですが、テクノロジーパートナーを探すために本当にシリコンバレーのみに注目すれば良いでしょうか?
 
実は、そうとも限りません。ヨーロッパにも、シリコンバレーに劣らない規模のスタートアップ企業が溢れ、充実された環境も提供されているため、日本企業は欧米にも視野を広げてパートナーを探していく価値があります。
 
イノベーションを生み出す土壌 
ヨーロッパではさまざまな分野でイノベーションが推進されており、AngelList(angel.co)によると、63,000社超のスタートアップ企業が存在しています。TransferWiseやKlarna、Adyen、Funding Circleのように有名なユニコーン企業(評価額が10億ドル以上で未上場の新興企業)もヨーロッパに本社を構え、大手金融機関や豊富な人材プールの近くに拠点を置くことで恩恵を受けています。
 
ヨーロッパでの成長資本金も潤沢です。2017年にヨーロッパに集まった成長資本金は、シリコンバレーの121億ドルを上回る、176億ドルでした。

また、昨年中にIPOを実現したヨーロッパ企業は250社もあり、これもシリコンバレーの15社と、米国全体の46社の合計を越しています。
 
ヨーロッパでは、スタートアップ企業だけでなく、スタートアップ企業を支援するアクセラレータープログラムの数も260にのぼります。

重点分野
ヨーロッパは、自動車や航空宇宙などの既存分野でも急速な成長を遂げています。その主な牽引役はBMWやAirbus、世界最大の自動車メーカーであるVolkswagenといったグローバル企業です。また、自動車企業だけでなく、クリーンテックやフィンテック、ディープテック、AI、VR、AR、仮想通貨といった分野でヨーロッパは他国の一歩先を進んでいます。
 
さらに、このような強みが、イノベーションの新たな機会を次々ともたらし、「インダストリー4.0」やIoT分野において、スタートアップ企業の成長につながりました。その結果、スマートファクトリーやコネクテッドカーの製造に成功することができたのです。
 
ヨーロッパでは、製造業以外の分野でもイノベーションが進んでいます。グローバル・イノベーション・インデックス2017年によると、世界で最も革新的な国の10ヵ国のうち8ヵ国がヨーロッパに位置し、トップ3にはスイス、スウェーデン、オランダが名を連ねています。
 
テクノロジーの集積地 
ロンドンやベルリン、アムステルダム、ヘルシンキ、バルセロナはこうしたテクノロジーの中心地として活況を呈し、ヨーロッパ各地から優れた人材が集まってきています。中でも開発者の層が厚く、米国の440万人に対して、ヨーロッパは550万人もの優秀な人材のデータベースがあります。
 
2018年の「Clean 200」ランキングでは、上位20社のうち14社をヨーロッパ企業が占めました。進歩的な気候変動対策を追い風に、コペンハーゲンを中心とした各地で、エネルギー技術分野のスタートアップ企業が続々と誕生しています。



世界最大の金融センターとして知られるロンドンではフィンテック分野のスタートアップ企業が次々に生まれ、ストックホルムやダブリン、パリがこれに続いています。
 
DeepMindやMagic Pony Technology、Movidius、Vision Factory、Dark Blue Labsといったヨーロッパのスタートアップが外資系企業に買収されていることからも、AIの分野でヨーロッパがいかに進んでいるかがわかります。
 
ヨーロッパにはAIが深く根付いています。機械学習や音声認識、コンピュータービジョン、自然言語処理、データマイニングなどの分野で先端を行く世界トップ10のコンピューターサイエンス企業のうち半数はヨーロッパ企業です。
 
政府規模でも、EUは2020年までにAI分野へ200億ユーロ(243.6億ドル)の投資を行う見通しです。
 
ヨーロッパは量子技術にも多大な投資を行っています。エコノミスト誌から抜粋した下記のグラフをご覧ください。


世界的な視野
ヨーロッパでは、小国のスタートアップ企業でもさらなるグローバル化を見据えているため、野心と豊富なアイディアを持っています。この地の起業家は昔から国際的な発想が求められていたため、ヨーロッパのみならず世界に目を向けたスタートアップ文化が生まれました。
 
その好例がスウェーデンです。人口が1,000万人に満たない国にもかかわらず、SpotifyやiZettle、Klarnaなどの世界的なユニコーン企業に成長させてきました。また、スウェーデンのみならず、人口が100万人に満たないエストニアでも、Skypeが生まれました。今ではデジタルIDカードや電子住民権(e-Residency)の仕組みの整備がされ、世界有数のテクノロジー先進国へと発展しています。
 
ヨーロッパのイノベーションを過小評価してはいけない
このように、ヨーロッパには起業家を生み出す豊かな土壌やスタートアップを支えるエコシステムがあり、ベンチャー投資も拡大しています。
 
こうした状況を踏まえれば、これほど多くのグローバル企業が革新的なヨーロッパ企業の買収や提携を求めてきた理由もよく分かります。2011年以来、AmazonやApple、Google、Microsoft、Facebookの5社だけでも、合計52社以上のヨーロッパ企業を買収してきました。
 
ヨーロッパに対する中国系ベンチャーの投資も増加傾向にあります。ロンドンに拠点を置く二大中国系投資ファンド、Cocoon NetworksとSilk Venturesはそれぞれ、7億2,100万ドル、5億万ドルもの資金を運用しています。
 
日本企業はオープンイノベーション戦略の一環として、米国(特にシリコンバレー)のパートナーやテクノロジーに目を向けがちですが、米国や中国の軌跡を辿り、ヨーロッパにも視野を広げていくことがこれからの日本にとっての重要な課題です。
 
ヨーロッパはイノベーションや新技術を育む豊かな土壌であり、最先端技術やサービスの開発には不可欠な場所なのです。

About the Author

ポーター・ ジャック

プロジェクト・コーディネーター ヨーロッパ事業開発部門

ジャックはマンチェスター大学で「日本学」を勉強し、2013年に卒業した。その間、日本学生支援機構から奨学金を取得、一年間早稲田大学に留学した。大学を卒業してから、ジャックは英国で勤務し、日立マクセルと現代自動車でマーケティングで就職していた。

現在は 英国オックスフォードのイントラリンク本社を拠点としている。日本語が堪能である。

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