記念すべき10回目の開催を迎えたSingapore Week of Innovation & Technology(SWITCH)2025 が、今年も2025年10月29日から3日間にわたり、シンガポールのマリーナ・ベイ・サンズで開催されました。
「Powering Innovation, Creating Our Future(イノベーションで未来を創る)」をテーマとした今回は、AI、量子、健康・ライフサイエンス、サステナビリティなどに焦点が当てられ、400社を超える出展者と30以上の国際パビリオンとともに、シンガポールが「ディープテックハブ」であることを明確化する機会となりました。
本イベントには、弊社からもシンガポールを拠点とする細井武蔵と、日本で事業開発を担当する内山七海が参加してきました。本稿では、この2名が、SWITCH 2025のハイライトをお届けします。
展示フロアではディープテック領域のスタートアップや研究成果に焦点が当てられた中、出展の約半数を占めたシンガポール企業に加え、海外からも日本、韓国、台湾、中国、スペイン、ブラジルからの参加企業も多くみられ、広範な技術交流が見られました。
特に印象的だった各国・地域のパビリオンは、
その中でも、展示の重点領域は以下の四つに集約されていました。
開会スピーチに登壇したシンガポール副首相の Gan Kim Yong 氏は、複数の新施策を発表しました。いずれも研究開発から事業化までを一気通貫で支援する設計で、ディープテックへの国家的コミットメントを強く示しました。
これらの動きから、産官学と大手テック企業が一体となって先端技術の社会実装を進める姿勢が明確になりました。研究成果を迅速に実証・事業化する“サンドボックスとしてのシンガポール”が一段と進化し、グローバル市場での検証と収益化の仕組みが着実に整ってきたように感じます。
世界150カ国・6,800社超が参加するアジア最大級のスタートアップ・ピッチ「SLINGSHOT」が開催され、SWITCH期間中にはそのうち上位60社が優勝をかけたピッチを行いました。
上位進出企業に共通した特徴は、技術の完成度のみならず「事業の実行可能性」と「国際適用力」を明確に示した点でした。特に、
日本勢は研究起点・大学発の企業が中心でしたが、残念ながら上位進出には至りませんでした。英語での質疑応答を含むコミュニケーション面は、依然として克服すべき課題となるようです。
SWITCH は展示会だけでなく、サイドイベントも非常に充実しています。
特に日本関連のサイドイベントには、企業・大学・自治体が幅広く参加し、All Japanとして世界に向けて信頼できるパートナーとしてのメッセージを発信していました。
2025年の SWITCH は、シンガポールの「ファイナンス・ハブからディープテック・ハブへ」という方針を明確化する機会となりました。研究→応用→事業化(R2C:Research to Commercialisation)を国家として一貫支援する体制が確立し、ASEAN域内でも突出した成果につながっています。司令塔である通商産業省(MTI)の方針のもと、EnterpriseSG(起業支援・共投資)/EDB(産業誘致・成長資本)/A*STAR(国家研究機構)が シンガポール国立大学(NUS)・南洋工科大学(NTU) や病院群と連携し、研究成果の産業化と外資・人材の誘致を同時並行で進める「選択と集中」モデルが機能しています。
これらのシンガポールの動向は、ASEAN諸国にも影響を及ぼしています。
東南アジアにおける成長が次のステージに移行しようとしている今、シンガポールはその中心で、研究・資本・市場を結ぶ中核ハブとしての位置づけを一層強化しています。
日本企業は、このタイミングでシンガポールでのプレゼンス強化、さらにそれを足がけに東南アジアでの事業拡大の機会を再検討するべきなのではないでしょうか。
しかし、東南アジアは、成長を続ける魅力的な市場であるものの、経済・インフラ環境のギャップや文化・ビジネス慣行、法規制の違いなど、その市場参画・新規事業開発に向けて乗り越えるべき課題が多く存在しています。
この市場の細分化に対応し、効果的な事業拡大・開発を進めていくためには、「東南アジア」と一括りに捉えるではなく、各市場における特徴を深く理解し、個別のGo-to-Market戦略を構築することが重要です。
東南アジアならではの課題を乗り越え、事業機会を最大化するための道筋について、ディスカッションなどご希望の際は、是非イントラリンクにお声がけください。