私にとって日本は単なるビジネスの対象ではなく、長い時間を過ごし、多くの機会と成長を与えてくれた大切な場所です。その恩返しとして、日本企業の成長に少しでも貢献し続けたいという思いを持っています。
日本企業がさらなる成長を促進するためには、新興国を含む海外市場で短期的に「結果」を出すために今まで以上にアグレッシブなアプローチをとることが必須です。私は、その鍵となるポイントが、「ローカルニーズに応えるものづくり」にあると考えています。(コーポレート・デベロップメント・サービス、SVP兼マネージング・ディレクター、ヒュー・トマス)
私は1990年代初頭に来日し、半導体関連の大手日本企業でキャリアをスタートさせました。海外の技術サプライヤーとの連携を含む様々な業務に携わり、その中で、日本企業の意思決定プロセスや業務の進め方を実務として学びました。その後、日本のスタートアップ企業にて、スタートアップ特有のスピード感やリソース制約の中で直面する課題についても理解を深めました。
イントラリンクの一員となってからは、欧米企業の日本における商談・契約締結支援や日本企業の海外展開支援に携わり、ここ10年ほどは英国にて日本企業向けコーポレート事業を立ち上げ、現在その事業を統括しています。
私が長年、日本企業と関わる中で感じてきたのは、技術力の高さと、それを新たな商機として形にする事業化力のギャップです。日本企業は非常に優れた技術と知的財産を持っていますが、海外市場において機会を見極め、迅速に意思決定し、事業展開につなげるスピードという点では課題があると感じています。
現在、日本企業を取り巻く環境は大きく変化しています。国内市場は人口動態の変化とともに縮小傾向にあり、さらに地政学リスクの高まりやAI・デジタル化の急速な進展が、経営の複雑性を一段と高めています。また、円安の長期化も、日本企業の国際競争力や立ち位置にも影響を及ぼしています。
日本企業がこうした状況下で持続的な成長を実現するには、これまで以上に効率的な事業運営やコスト削減とともに短期間で確実な成果を出すこと、そして海外市場、とりわけ成長著しい新興国の事業機会を、確実に取り込んでいくことが不可欠です。
私は、世界中の企業や政府関係者と対話する中で、日本企業に対する期待の高さを日々実感しています。欧米市場など、日本企業の事業基盤がすでに確立されている地域に加え、まだその存在感が十分とは言えないインドや東南アジアなどの新興市場においても、日本の技術力や誠実性に対する信頼は非常に高いものがあります。
特に、インドでは経済成長と産業基盤強化により、自動車(EVを含む)、産業機械、電子機器分野で需要が拡大しているほか、半導体や電子部品といった関連分野でもサプライチェーンの整備が進展しています。さらに、個人消費の拡大に伴う中間層の購買力向上が、BtoC領域、特に食品・飲料分野における新たなビジネス機会をもたらしています。
左:昨年のシンガポール訪問時でのチーム写真、右:今年4月のインド訪問
また、特にベトナム、タイ、インドネシアを中心とした東南アジアでも、製造業の成長と内需の拡大が同時に進み、電子機器や自動車関連産業をはじめ、グローバルサプライチェーン再編の流れの中で、生産・供給拠点としての重要性も一層高まっています。加えて、エネルギー関連市場も、インフラ整備やエネルギー転換を背景に海外企業の技術輸入を加速しています。
こうした中、日本企業が強みとする高品質な部材供給、精密加工、安定した品質管理などが引き続き高く評価されると考えています。また、現地生産や現地調達を強化することは、コスト最適化だけでなく、市場へのアクセス向上にもつながります。
私が2015年にコーポレート事業を立ち上げて以来、多くの日本企業に対してオープンイノベーションの支援を行ってきました。しかし近年では、そうした取り組みを行う中で、オープンイノベーションだけでは必ずしも十分な成果につながらないケースも見られるようになり、日本企業の関心は海外市場をいかに収益につなげていくかといった、より具体的な事業化・収益化の取り組みに移ってきています。
世界が日本を求めている今こそ、海外からの信頼を単なる関係構築で終わらせず、大きな野心を持ち、具体的なビジネスを構築していく時です。
海外で事業を成功させるためには、市場を深く理解し、現地のニーズを的確に把握することが欠かせません。既存製品をそのまま持ち込むのではなく、現地の課題やニーズを出発点として、製品やサービスを設計・開発していくことが重要です。
例えばアグリテック分野では、1〜2ヘクタール規模の小規模農家が大半を占めるインドや東南アジアにおいて、欧米市場向けの大型トラクターやコンバインは必ずしも現地のニーズに合致しません。現地で求められているのは、小型で価格の手頃な農業機械や、スマートフォンを活用した農業支援サービスです。
小規模農家向けの小型トラクターや田植え機、収穫機といった「小規模機械化」のソリューションは、労働力不足への対応や作業効率の向上に寄与しています。 また、米、野菜、果物、サトウキビといった主要作物の栽培では、土壌水分センサーや気象データを活用し、必要な場所に必要な量だけ水や肥料を供給する「精密農業」への関心も高まると同時に、特に水不足が課題となるインドでは、点滴灌漑などの省水型技術への需要が拡大しています。 さらに、スマートフォンの普及を背景に、農家向けアプリを通じて天候予測や市場価格、病害虫情報、栽培アドバイスを提供するサービスも広がっています。こうしたサービスは高額な設備投資を必要とせず利用できるため、多くの小規模農家にとって重要な支援手段となっています。
こうしたローカルニーズに応える製品やサービスを生み出すためには、次の三つの視点が欠かせません。
日本企業には、その高い技術力や知的財産をはじめ、世界で勝てる力がすでに備わっています。しかし、それらを最大限に生かしながら、現地で成果を出すためには、意思決定のスピードと、現地市場を起点とした実行力が未だに課題です。特に変化の速い新興市場では、大胆さと柔軟さが成否を分けます。
また近年では、企業のコスト削減ニーズに対応する形でローカル市場の知見を持つパートナーを活用し、現地での活動を代行する「ソフトランディング支援」の需要が増加しています。これにより、日本企業は現地法人や駐在員を置く前の段階から、最小限の負担とリスクで海外事業を展開することが可能となります。
いずれにせよ、ローカルニーズに応える製品開発から販売までを円滑に進めるためには、その市場に精通したパートナーと連携することが、成果につながる最も有効、そして費用対効果の高い方法と言えるでしょう。
私が個人としても、また仕事においても一貫して大切にしてきたのは、日本企業がすでに持っている強みを最大限に活かせるよう支援することです。
イントラリンクは、欧米、インド、東南アジアに展開する日本語対応可能な現地チームとともに、これまで100社以上の日本企業の海外進出や新規事業開発を支援、委託してきた日本企業向け海外プロジェクトも累計500件以上にのぼり、その多くが継続的な支援となっています。日本貿易振興機構(JETRO)などの政府機関とも連携する弊社は、この長年の実績と日本企業の海外展開を円滑にサポートできる体制を理由に、海外事業開発パートナーとして多くのクライアントから信頼を得てきました。
イントラリンクは今後も日本企業に寄り添いながら、その強みをグローバル市場で確実に成果へと結びつける支援を続けていきます。世界が日本を必要としている今、ともに勝ちに行きましょう。