毎年 1 月初旬に米国ラスベガスで開催される世界最大級のイノベーション・テクノロジーイベント CES(2026年はメディアデー:1/4–5、展示:1/6–9で開催)に、今年もIntralink の米国・英国・日本のメンバーが参加してきました。
本稿では、CESに2018-19年出展、以降オンライン開催2021年を除き毎年現地参加してきた弊社北米事業統括の青木マイクが、中国勢の台頭やフィジカル AIへの注目が集まったCES 2026をもとに、現地の最新動向と日本企業への示唆についてお届けします。
CES は Consumer Technology Association(CTA)が主催する、世界最大級の家電・テクノロジー展示会です。1967 年の初開催以来、家電・コンピュータ・通信機器からインターネット関連技術まで幅広い最新技術を紹介し、現在は企業発表、キーノート、専門家セッション、製品展示を通じて、「その年のテクノロジートレンドを示す羅針盤」として位置付けられています。
CES 2026 は 「Innovators show up」をスローガンに掲げ、注目領域として AI、Digital Health、Vehicle Tech & Advanced Mobility を重点カテゴリーに設定しました。昨年のブランド刷新後 2 回目(通算 60 回目)の開催となった本年は、出展者数 4,100 社(前年比−400)、参加スタートアップ 1,200 社(同−200)が若干減少したものの、総来場者 は148,000 名(同 +6,000)、うちメディア関係者6,900 名(同+400)と増加しており、引き続き世界最大規模のテックイベントとしての注目が伺われました。
また今年は、2 月のミラノ・コルティナ冬季五輪、6 月の北中米 3 ヶ国共催 FIFA ワールドカップに加え、7 月の米国独立 250 周年(America250)や大統領選挙など大型イベントが続く「特別な年」でもあります。生成 AI が登場した 2023 年以降の社会変化、そして 2025 年から始まった新政権体制を背景に、CES も大きな転換点を迎えた印象です。
CES 2026 では、これまで常連であった大手企業の不在が大きな話題となりました。メイン会場(LVCC)では Samsung、SK Telecom、Lotte、Hyundai HD など韓国勢が出展縮小または撤退し、日本勢もSony、Nikon などの出展見送りが見られました。
その一方で存在感を強めたのが 中国企業 です。Hisense、TCL、Lenovo といった大手は、グローバルイベントスポンサーとしての IP を活⽤しながら AI 家電・ロボティクス、新デバイスを大規模に展示。また、新興家電(DREME、CHANGHONG)や掃除ロボ企業(Roborock、Ecovacs、Aiper)なども初出展や規模を拡大していました。特にLenovoはラスベガスの没入型エンターテインメント施設Sphereで「Smarter AI for All」をテーマにAI事業とFIFA World Cupコンテンツを融合させた企業キーノートを展開し、大きな注目を集めました。モビリティ領域でも米国Big3やBMWを除く欧州大手、日本の大手メーカー不在のなかGeelyやGWMが昨年に続き出展するなど、あらゆるカテゴリーでコロナ以降、大手・スタートアップ含め一大勢力となっていた韓国勢から主役を奪取した*ことは政治経済状況を踏まえても注目すべき動向です。
*CTA による国別出展統計は本稿執筆時点(1/14)では未発表
昨年キーノートにて生成 AI 、AIエージェントに続く概念として 「フィジカル AI」 を提唱した NVIDIA CEOのJensen Huang 氏が、CES 2026 新設プログラム「CES Foundry」(会場:Fontainebleau)のメインスポンサーとしてキーノートに登壇しました。同氏はキーノートで「フィジカル AI にも ChatGPT モーメントが到来する」と述べ、会場ではパートナー企業と共に多数の実装事例を展示。フィジカル AI プラットフォーマートップにならんとする存在感を強く示した形となりました。
さらに本年は、各会場でヒューマノイドやロボティクスの展示が大幅に増加。実市場でのユースケースはまだ成熟途上ですが、産業用途における活用可能性の高さから、Hyundai 傘下 Boston Dynamics の取り組みが特に注目されました。
かつて「家電見本市」であった CES は、AI を中核に据えた「テクノロジー・イノベーションの展示会」へと進化し、消費者向けからビジネス向けへのシフト がさらに鮮明となりました。その象徴が Samsung です。メイン会場を離れ、Wynn にて事前登録制・クローズド形式の展示を実施。開催期間も 1/5–7 と本会期(1/6–9)とずらし、「The First Look」を掲げて質重視へと舵を切りました。
また、メイン会場内でも招待客限定のブースが増加し、単なる“見学”では立ち入れない企業が多く見られました。来場者側も、事前調査や企業への関心・目的がより問われる展示会へ変わりつつあると感じられます。
2025年統計の来場者国別では米国に次いで 韓国 2 位、中国 3 位、日本 4 位、台湾 8 位 とアジア勢が強い存在感を示しており、この構図は 2026 年も大きく変わらないと見られます。
2026 年の CES では、家電・ロボティクスなどハードウェアを軸に中国の存在感が鮮明となりました。一方、韓国や台湾は大手こそ減少したものの、スタートアップや学術機関が継続的に参加し、イノベーションの発信拠点としての立場を維持しています。日本はモビリティ領域を中心に大手のイノベーション活動の取り組みは評価できるものの、CES 全体での存在感は相対的に低下傾向にあり、このような場でのプレゼンス強化が望まれます。
AI 技術の進化と地政学リスクの高まりが続く中、CES 参画姿勢や国際プレゼンスは、企業の明確な経営戦略とトップの意思決定に大きく左右される局面を迎えています。加えて、 世界をテクノロジーでリードし、今後も変わらぬ重要性を持ち続ける米国は、日本企業の持続可能なビジネス、さらに成長に直接的な結果をもたらす市場です。
この状況を踏まえ、イントラリンクは東京オフィスにて、「CES2026で読み解く米国テック最前線~米国市場で結果を出すためのマインドセット~」と題した対面イベントを1/28(水)18:00より開催します。当日は、私がCESの現場で得た一次情報をもとに、米国イノベーション動向の最前線と日本企業の実務に直結する示唆を立体的にお伝えしたいと思います。