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デジタルを活用した脱炭素化の意義〜産業の脱炭素化と新たなビジネスチャンス開拓に必要な「デジタル触媒」〜

デジタルを活用した脱炭素化の意義〜産業の脱炭素化と新たなビジネスチャンス開拓に必要な「デジタル触媒」〜

本ブログでは、コーポレート・デベロップメント・サービス統轄ディレクター兼グループ・サステナビリティ・オフィサーを務めるノエル・プリッチャードが、デジタルとサステナビリティの両分野で数多くの事業開発プロジェクトに携わってきた弊社の経験や、グローバル大手企業のケーススタディとともに、現在日本企業間で最も大きなテーマの一つとなっている脱炭素化の中でも、今後のカギとなりうる「デジタル技術の活用」について言及します。

はじめに

人類はいま、前例のない難局に直面しています。排出量の多い製品やサービスを段階的に廃止し、よりクリーンな代替品に移行するためには、数多くの問題を解決しなければなりません。具体的な課題としては、再生可能エネルギーの積極的な拡大と普及、化石燃料の段階的な廃止、鉄鋼やセメントの生産における脱炭素化、二酸化炭素の回収・貯蔵(または無害化)などをどのように実現していくかが例として挙げられます。

そんな中、明るいニュースとして、スタートアップ・エコシステムではこのような課題がビジネスチャンスとして捉えられ、ベンチャーキャピタルが支援するクライメートテック開発企業への多額の投資が続いています。こうしたソリューションの多くは、科学や工学に基づくものですが、本ブログでは、さらにクリーンな製品やサービスに対する需要が急速に高まる中で、どのように企業がデジタルの力を活用して自社事業の脱炭素化に取り組み、新たなソリューションを開発するべきかについて追及します。

とはいえ、本ブログで焦点を当てている脱炭素化は、大きなサステナビリティという枠組みの一部分でしかありません。リジェネレーション(環境再生)、生物多様性、サーキュラー・エコノミー、ネイチャー・ポジティブをはじめとするその他様々なテーマも、企業にとってますます重要になってきており、これらにおいても、デジタル・ソリューションが同様に重要な役割を果たしているという点は留意いただきたいと思います。

GXのカギを握る「デジタル触媒」

太陽光発電や電気自動車のような物理的技術が、いかに環境に優しい世界につながるかを理解するのは容易でしょう。しかし、特にITに精通していないビジネス・リーダーにとって、デジタル・ソリューションに対して同様の理解を持つことは困難かもしれません。

しかし、イントラリンクはデジタル・ソリューションがあらゆる産業の「グリーン・トランスフォーメーション(GX)」の触媒になると考えています。デジタルとサステナビリティの両分野で数多くのプロジェクトに携わってきた事業経験を通じて、弊社はデジタルを活用するべき5つの明確な「触媒(分野)」を特定しました。これらについて、ケーススタディとともに以下で解説したいと思います。

 

1.   可視化

デジタル・ソリューションは、モニタリング、監視、測定、算定を得意とし、生データを洞察に変える力があります。この可視化はカーボン・フットプリントを定量化し、その削減努力を管理しようとするすべての企業にとって、重要な第一歩といえます。

現在市場で最も普及しているソリューションの例には、SinaiPersefoniAsueneなどの炭素会計プラットフォームがありますが、これらは実際の排出量を算出するための補助ツールとして、既存企業のERPやその他の間接的なデータを活用しています。しかし、さらに進んだモニタリング・ソリューションも登場しています。例えば、弊社が国際事業成長を支援するクライアントであるGHGSATは、ほぼリアルタイムの高解像度衛星と航空機のデータを活用し、上空からの排出量を直接検出しています。

 

·      ケーススタディ:化学メーカー向けのプロダクト・カーボン・フットプリント(PCF)計算

o   課題:化学製品のPCF評価は、特に困難と言われている。これは、多くの化学プロセスが複数のアウトプットを生み出す上、多数の化学製品が他の化学製品生産に使用されることに由来する。

o   ソリューション:AtosとBASFは、ドイツ発Carbon Mindsの環境生命科学データを利用して、このような課題に取り組む専門プラットフォームを立ち上げた。化学業界の企業向けに製品のカーボン・フットプリントの特定から監視、さらに最終的な削減の実現を支援するこのソリューションは、IT業界以外の企業がデジタル・ソリューションを収益化した一例である。

 

2.   シミュレーション

AI、シミュレーション・ソフトウェア、デジタル・ツインなどのデジタル・ツールは、強力な予測・モデリング能力を提供することができます。GXは、すべての産業において根本的な変革を必要とし、特に研究開発(R&D)、製造、物流、その他多くのビジネス・プロセスがそのような変革の必要性に迫られています。場合によっては、業務改善によって課題の解決が達成されることもある一方で、施設の閉鎖や再設計により多額の設備投資が必要になることもあります。このようなシナリオにおいて、デジタル・ソリューションは、組織が設備変更を行う前にその影響をモデル化することで、変革に伴うリスクやコストを削減し、導入効果を最大化することを可能にします。

 

·      ケーススタディ:コンピュータ支援エンジニアリングに基づく仮想R&Dシミュレーション

o   課題:企業は、ライフサイクルを通じて環境負荷の少ない製品を開発するために、R&Dプロセスにおけるサステナビリティを考慮している。しかし、そのような製品の開発には、さらなる複雑さとコストが発生し、通常よりも多くのプロトタイピングと反復が必要になることがある。

o   ソリューション:2022年、AnsysとLG Electronics は、シミュレーションベースのR&Dによる共同イノベーション促進に向け、複数年契約を締結した。このソフトウェア統合は、コンピュータ支援エンジニアリング(CAE)に基づく仮想R&Dシミュレーションを製品開発の初期段階に統合することによる、LGのサステナビリティとデジタル・トランスフォーメーションの取り組み強化を目的に行われた。これにより、開発時間、物理的プロトタイピングの必要性、関連コストを削減しながら、エンジニアリングと製品の効率向上を実現。

 

3.   管理・効率化

デジタルツールは、企業がカーボン・フットプリントを削減するために産業・ビジネスプロセスの最適化を可能にするオペレーション情報をリアルタイムで提供します。例えば、製造業では、IoT、ロボット工学、AIなどのデジタル技術によって、ダウンタイムの回避や無駄の削減によるプロセスの効率化が可能になります。また他業界でも、デジタルソリューションによって、車両や不動産施設などの資産をリアルタイムで共有、稼働率を高めることで必要なアセット数を削減できます。

また、エネルギー最適化におけるデジタルツール活用事例として、弊社はNTTファシリティーズとフランスのSaaS企業METRONとの事業において、AIを活用したエネルギー管理ソリューションを提供し、日本における製造業界のエネルギー消費量と温室効果ガス排出量の削減を支援しています。

 

4.   コミュニケーション・情報提示

デジタルサービスは、低コストで高質なコミュニケーションの手段を提供し、幅広いオーディエンスに素早く情報を伝えることができます。GXでは、コミュニケーションとコラボレーションが重要です。例えば、迅速な変革が求められているサプライチェーンにおいても、政府、企業、投資家

、その他ステークホルダー間の緊密な連携なしにはこの変革は達成できません。しかし、デジタルツールを活用することで、サプライチェーン全体の生産、排出、その他データの透明性を高めることができるのです。

コミュニケーションとPRもまた、脱炭素化の過程において重要な役割を果たしています。サステナビリティに投資する企業が、その取り組みをメディア、消費者、投資家、その他環境意識の高いステークホルダーに伝えたいと考えるのは当然です。しかし、ここには注意が必要です。EUなどの地域ではグリーンウォッシングに関する取り締まりが強化されており、不器用な企業コミュニケーションは逆効果になる可能性が指摘されています。このような問題に対処するべく、デジタルツールは、広報情報を作成・発信するだけでなく、その正確性、コンプライアンス、表現力を検証する手段を提供してくれます。

 

·      ケーススタディ:製品のカーボンフットプリント(PCF)データに簡単かつ自動的にアクセスできるアプリ

o   課題:GHGプロトコルの炭素会計の枠組みでは、企業はサプライチェーンの上流から下流までの排出量を報告することが義務付けられている。サプライヤーや顧客から正確な排出量情報を入手することは、しばしば複雑で時間がかかる問題となっている。

o   ソリューションCircularTreeとBASFは、BASFの顧客によるPCFの請求を自動化するPACIFICアプリを発表した。顧客は、購入したすべての製品およびその他の関連品目についてPCFを簡単に要求し、標準化されたJSONファイルとPDF文書を通じて包括的なカーボン・フットプリント・データを受け取ることができる。

 

5.   財務・市場ツール

GXを推進するために新しい製品やサービスが生まれるにつれ、そのような商品の売買を行うための新しい市場メカニズムが出現しています。その一例が、企業が排出を回避または吸収したカーボン・クレジットを売買できる炭素市場です。炭素市場の活用率は、現時点でまだ世界各地で平等というわけではありませんが、急速なペースで成長を続けています

商品市場などと同様に、炭素市場も、効率的な取引や測定・報告・検証(MRV)などのメカニズムを提供するソフトウェアの力に依存しています。炭素クレジット制度の信頼性をめぐる最近の論争は、この発展途上分野における透明性の向上、およびそのためのMRVソリューション活用の必要性を示唆しています。

 

 

勝ち組と負け組

これらのデジタルの活用方法やケーススタディからの考察をまとめると、世界がネット・ゼロを達成するために科学と工学の難題に取り組む中、デジタル技術は、さまざまな業界の企業が単に脱炭素化を推進するだけでなく、GXを受け入れ、その中で新たなビジネスチャンスを見出すための強力なツールとなり得るということです。

GXはまだ初期段階にありますが、その勢いは著しく、GXの根本的な影響を受けない業界や領域はもはや存在しないかもしれません。

そんな中、世界が変化するにつれ、市場も変化し、それによって勝者と敗者が生まれます。このグリーン産業革命に積極的に取り組み、技術やビジネス戦略の基盤を築く企業が勝者として市場を突き進む中、世の中の流れに翻弄され、現実を直視しない企業は敗者として取り残されていくことでしょう。

 

イントラリンクについて

イントラリンクは、デジタルおよび物理的なGXの原動力となるテクノロジーを中心とした事業を数多く手掛けています。そして弊社のクライアントが、脱炭素化に向けて急速に変化するテクノロジーの展望を理解するだけでなく、先進的な先端技術を調達し、最終的に独自の新製品やサービスを商品化するためのサポートの提供に努めています。弊社サービスにつきご関心がございましたら、こちらよりお気軽にお問い合わせください。

ノエル・ プリッチャード
About the Author

ノエル・ プリッチャード

日本において、CDSグループの代表を務める。2015年のグループ設立から、同部署を弊社の戦略的支柱に育て上げ、その過程で30社以上の日本企業との新規ビジネスを獲得してきた。現在は、グループ・サステナビリティ・オフィサーを兼務。

1997年に初来日。サウサンプトン大学で日本語学士号、INSEADでMBAを取得。入社以前は、ボーダフォン・グローバル・エンタープライズとベライゾン・ビジネスにてプリセールスやコンサルティング業務に従事。

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