2020年、ユニコーン数が過去最高に
2020年11月、企業価値の評価金額が10億ドルを上回るユニコーン企業数が、世界で500社に達したと米調査会社CB Insightsが発表しました。デジタルトランスフォーメーションの加速と人工知能の発達とともに、2019年にはフィンテックやAI企業を中心に122社が、2020年にはパンデミックの影響で伸びを見せたeコマースやヘルスケア企業をはじめとする89社がユニコーン入りを果たし、この2年間でその数は倍増しました。
国内エコシステムはまだまだこれから
ユニコーンの数は、実際の収益ではなく、企業評価・価値に基づいて算出されるため、時には過度に膨らむこともあるビジネスの潜在的な可能性に対する投資家の期待が反映される傾向があります。そうはいっても、ユニコーンの数はベンチャーエコシステムの規模を示す大まかな指標ともなりえます。さらにユニコーン企業の増加は、そのエコシステムが各国のビジネスの成長の源として大切な役割を果たし、その重要性が増し続けているという点を強調していると言えるでしょう。 今回の結果を国別で見てみると、トップ3は例年と変わらず、米国が242社、中国が119社、英国とインドがそれぞれ24社を輩出しています。さらに、隣国である韓国にも11社(6位)のユニコーンが存在しています。一方、日本はどうかというと、世界トップの経済力を誇るものの活躍が目立つユニコーンがたった4社であり、その国内エコシステムの未熟さが大きな課題の一つとなっているのも事実です。 2020年6月に別の米調査会社であるStartup Genomeが発表したスタートアップの育成環境を評価した都市ランキングで、東京は研究・特許の豊富さや資金調達のしやすさなどが評価され、15位にランクインしました。昨年、初めてランク外からトップ30入りを果たした上、アジアでは4位の北京、8位の上海に次ぐ3番目となり、国内エコシステムが以前からは成長している様子が伺えます。しかし、起業家へのサポートや投資家とのコネクションを提供する機会を評価した「接続性」や、海外進出やユニコーンの輩出率のレベルに関する「市場リーチ」などで、海外と比べて圧倒的に低い数値を示しており、今後海外を見習い、国を挙げたエコシステム成長を支えるシステム構築が必須です。
忘れられがちな「ソフト」な要素
一方、協業や投資を通したイノベーションパートナーを特定するにあたり、ユニコーン数やランキングのような目に見える数値だけが重要な訳ではありません。以前別のブログでも取り上げた通り、テクノロジー領域、ビジネスモデル、創設者・経営陣の考え方、ターゲットの客層、企業文化などより繊細な要素も海外イノベーション成功のカギとなりえます。イノベーションを追求する日本企業が求める技術や企業プロファイル、またその背景や能力は組織によって異なるため、時にはこのような「ソフト」な側面にも目を向けながら各企業に最適な企業を選定することで、提携におけるリスク軽減とともに、コラボレーションによる結果の最大化を実現することができるでしょう。
最後に、、、
つまり、ユニコーン数やエコシステムのランキングを成長指標として考えてみると、やはり日本大手企業がイノベーションを求める際には、あらゆる分野で幅広い技術を活用する企業が集まる海外エコシステムに目を向けていく必要があります。その上で、スタートアップの企業価値や資金調達額をはじめとする目に見える顕著な部分だけでなく、各企業のビジネスや中長期戦略に適切なイノベーションパートナーを選定することが海外イノベーション成功の重要な鍵を握っているのではないでしょうか。
著者
Noel Pritchard(オープンイノベーション・グループ 事業開発統括ディレクター)
植木このみ(同グループ プログラム・マネージャー)
参考URL
Nikkei Asia: Unicorns surge to 500 in number as US and China account for 70%
日本経済新聞:スタートアップの育成環境、東京は15位 米調査会社