アントレプレナー(起業家)」という言葉を生み出した国の中心地パリで、先週の木曜、欧州最大のスタートアップイベントの一つであるVivaTechが開幕し、100を超える国々から10万人以上の来場者を迎えました。 特に今話題の2つのテクノロジー分野では、東アジア市場で大きなポテンシャルを持つ最新技術が多数展示されていましたが、ここでポイントになってくるのは市場へのルートです。
スタートアップ大国
エマニュエル・マクロン大統領がイベント初日にメインステージに登壇し、フランスを「スタートアップ大国」として掲げる一方、ポルト・ド・ヴェルサイユの展示ホールでは約2000社のスタートアップ企業が自社の製品とサービスを紹介していました。
VivaTechでは、Google、Facebook、Amazon、ファーウェイといったグローバルな巨大テクノロジー企業や、LVMH、ルノー、タレス、フランス郵政公社といったフランスの伝統的な企業がオープンイノベーション活動によってスタートアップ企業を支援することにより、スタートアップ企業が展示や450のスピーカーセッションを通して自社製品を売り込みネットワークを形成することができます。 数多の展示の中で目を引いたのは、中国、日本、韓国の各市場に関連性の高い2つの重要なテクノロジー分野、つまりTech4Good(テックフォーグッド)と人工知能(AI)です。
Tech4Good
Tech4Goodは今年のイベントの主要テーマで、多くのスピーカーセッションでも中心的な話題となりました。アリババグループの創設者であるジャック・マー氏が、テクノロジーが世界に与えるポジティブな影響について力強いメッセージを発信したのをはじめ、今回のイベントは、エコで明るい未来に向けた持続可能な最新テクノロジーを知るまたとない機会となりました。 この分野に共通のテーマをいくつか紹介します。
- 責任ある消費とリサイクルを促すアプリ開発
- CO2 排出量の監視と廃棄物の削減ソリューション
- 導入が容易で低価格かつ再生可能なバイオマスエネルギーおよび水素エネルギー向けソリューション
- 障害のある人々を対象とした「インクルーシブ」サービス
今年のイベントの名誉ゲストであるアフリカ諸国からは、160を超えるスタートアップ企業が参加しました。特にアグリテックとフードテックのセクターが突出しており、多くのスタートアップ企業が、アフリカの農業従事者が収穫量を予測し所得を増やして生活を向上させるためのソリューションを提供しています。 世界的に、このような持続可能なテクノロジーへの関心は、地域の自治体による支援や資源の逼迫と相まって高まり続けています。特に中国では、政府によってバイオマス燃料と廃棄物のリサイクルが強く奨励されており、この分野は成長が見込まれるものの、利益を上げ事業全体の効率化を図るには、VivaTechで展示されているような革新的なテクノロジーが必要です。
あらゆる場面でAIを
今年のVivaTechでは、AIがさまざまな形で幅広く展示されていました。チャットボット、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、コンピュータビジョン、さらに欠陥検査や予知保全を目的としたIndustrial IoT(製造業におけるモノのインターネット)ソリューションやスマートモビリティソリューションにいたるまで、あらゆる場面においてAIが活用されています。 AI x VRとARもまた好評を博しました。 今年のVivaTechでは、小売体験の向上や効率的な在庫管理、自律走行/飛行を目的としたものから、シンプルに睡眠の質を上げるためのものまで、ARまたは完全なVRがこれまでにないほど多く展示されている印象を受けました。 AIは依然として東アジアの企業が最も関心を寄せる分野の一つであり、AIを活用したテクノロジーに対する需要は、現在利用可能なソリューションの供給を上回っています。特に、日本企業は、コストを削減し、ワークフローを最適化し、新製品やサービスの開発を可能にするための効率的で展開しやすいソリューションから恩恵を受けることができます。
Vive la technologie!
欧州本土のスタートアップ企業は、ビジネスの成長や地理的拡大といった面ではいまだ北米の同業他社に後れをとっていますが、それは独創性や斬新なアイデアを生む能力が劣っている訳ではないことがVivaTechで明らかに証明されました。 フランスやヨーロッパのスタートアップ企業は多く存在し、彼らは日本とアジア企業のオープンイノベーションのアジェンダに取り組む用意があります。 展示された多くのソリューションは日本での成功が見込める大きなポテンシャルを持つものと思われます。しかし海外の企業との熾烈な競争を勝ち抜くために鍵となるのは、いかに迅速に行動するかです。 興味をもっていただけた場合は、是非イントラリンクにご相談ください。