【ウェビナーレポート】英国量子技術の最前線2025 〜UKQuantumとQ-Starが語る!スタートアップ連携からエコシステム構築まで〜
イベント種別: ウェビナー
主催: Intralink Japan
登壇: UKQuantum/Q-STAR/ORCA Computing/Universal Quantum
タグ: #量子コンピューティング #量子ネットワーク #産業実装 #国際連携
要旨
量子は「将来技術」ではなく、「実装フェーズ」にある。英国・日本・韓国の産官学が、ミッション志向の国家戦略、企業のユースケース創出、責任ある実装と標準化を具体化。日本企業にとっては、早期“価値仮説”検証が勝ち筋。
登壇者
- Jonathan Legh-Smith 氏(UKQuantum・Executive Director)
- 森 弘史 氏(Q-STAR・Global Consortium Alliances WG Chair / Toshiba)
- Richard Murray 氏(ORCA Computing・Co-founder/CEO)
- Luke Gerardin氏(Universal Quantum・Business Development)
キーメッセージ
- 国家は“ミッション”で牽引:量子計算・ネットワーク・センシング/タイミング等に長期目標を設定し、研究・人材・商用化を一体設計。
- 企業は“価値”から逆算するべき:ユースケース同定→PoC→組織内運用へ。生成AI×量子のハイブリッドが実用最短ルート。
- 責任ある実装と標準化:用途志向の規制、責任あるイノベーション原則、産業界主導の標準化ネットワークが進行。
- 国際分業が前提:部材・装置・アルゴリズム・人材のサプライチェーン多元化が競争力とレジリエンスを両立。
セッションサマリー
1|UKQuantum:国家戦略と産業実装の加速
登壇者:Jonathan Legh-Smith 氏(UKQuantum・Executive Director)
ポイント
- 4本柱:世界トップ級の科学・企業支援・産業採用・規制/標準。
- ミッション志向:量子計算・ネットワーク・センシング/タイミングで長期目標を明確化。
- NQCC(英・国立量子計算センター):複数方式のテストベッドとエンドユーザー伴走(SPARK)で実装を前倒し。
- 規制:“技術規制ではなく用途規制”(金融・通信等の既存枠組みに量子を適用)。責任あるイノベーション原則を業界主導で実装。
- 標準化:NPL/BSI等とQuantum Standards Networkを組成、企業の参画障壁を低減。
講演のキーポイント:「量子は“技術そのもの”ではなく“用途”を規制対象に。産業界が主体となって責任原則をビジネスに埋め込む」
日本企業への示唆
- PoCはNQCCのような中立的ハブと結ぶと進む。日本側はG-QuAT/Q-STARと英側の窓口連携が近道。
- 金融・通信など既存規制対応を最初に設計(後付けは高コスト)。
2|Q-STAR:日本の国家戦略とユースケース創出
登壇者:森 弘史 氏(Q-STAR・Global Consortium Alliances WG Chair / Toshiba)
ポイント
- 量子経済の創出を掲げ、利用者拡大と産業化を推進。会員はユーザー企業が約半数、実課題ドリブン。
- 50超のユースケースから16件を重点深掘り。例:大規模交通シミュレーションで消費電力17%削減の示唆(量子/量子インスパイアド併用)。
- 国際連携:UKQuantumほか欧米アジアのコンソーシアムとMoU、ICQIA枠組みで協働。
- 量子安全通信:東京QKDネットワーク等で実証と産学官連携を拡大。
講演のキーポイント:「“普及後に始める”では遅い。 早期導入企業が洞察と人材・優位性を先取りする。」
日本企業への示唆
- 業界横断の分科会で“課題→仮説→実証”を共同で回す。
- 量子インスパイアドで短期ROI、量子本丸で中長期の布石。
3|ORCA Computing:データセンターに“そのまま”入る量子×生成AI
登壇者:Richard Murray 氏(ORCA Computing・Co-founder/CEO)
技術の立ち位置
- 光量子方式。19インチラック/室温/モジュール式で既存DCに即時統合。
- PyTorch/CUDA-Q対応でML人材がそのまま触れる。**“量子+古典(ハイブリッド)”**を前提に価値創出。
実例
- 生成AI×新材料/創薬:量子を既存生成モデルに埋め込むことで、未学習領域の分子多様性・妥当性が向上。
- ネットワーク最適化(通信・電力・防衛など)でもハイブリッドで近接価値を提示。
講演のキーポイント:「量子は単体でなく“古典の隣”で使う。 1–2年スケールで実用価値を出すにはハイブリッドが現実解。」
日本企業への示唆
- MLチーム主導で“生成AIワークフローへの量子組込み”を試すと立ち上がりが速い。
- **DC要件(電源/冷却/運用)**を満たすプロダクトは内製難度が低い。
4|Universal Quantum:長期“百万量子ビット”への正面突破
登壇者:Luke Gerardin氏(Universal Quantum・Business Development)
技術の立ち位置
- イオントラップ×マイクロ波制御+チップタイル化で指数的スケーリングを狙う。
- 全結合に近い移送アーキテクチャでアルゴリズム実装効率を高める。
- 独政府大型案件などで長期道筋を確保。
フォーカス
- 誤り耐性時代の本命問題(創薬・新素材・複雑最適化等)。
- 日本ではG-QuATや大手商社/メーカーと供給網・アプリ・テストベッドを協業構築中。
講演のキーポイント「短期案件も進めつつ、“本当に世界を変える問題”を解くハードの壁を越える。」
日本企業への示唆
- 供給網(部材・製造)での参画余地が大。中長期でグローバル標準部品の座を狙える。
パネル/Q&A ハイライト
- 参入障壁(企業側):価値命題が抽象的だと組織が動かない。→“具体ユースケース×事業KPI”で定義し、既存人材(ML/最適化)で触れる環境を。
- 地政学と供給網:自国優先と国際協調の両立が鍵。単一国依存はリスク、マルチ供給が必須。
- 日本エコシステムの強み:設計の一貫性とガバナンス、要素技術の裾野。韓国も将来の重要拠点。
日本企業の“次の一手”
- ユースケースを1つに絞る:生成AIワークフロー強化/ネットワーク・ロジスティクス最適化/量子安全通信のいずれか。
- ハイブリッド前提でPoC設計:既存ML基盤(PyTorch)に量子呼び出しを埋め込み、“改善差分”だけを評価。
- 規制・リスク設計:用途別に既存規制適用方針とデータ扱いを先に決める。
- 人材:“量子専門”ではなく“ドメイン×ML”人材に権限付与。外部パートナーはNQCC/G-QuAT/Q-STAR/ベンダー連携で補完。
- 標準化へ参加:自社要件を標準に反映し、後戻りコストを回避。
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