『VolvoのEV充電、英ICL発企業の技術で最大30%高速化』、『ナビゲーション・システムのFixposition、中Autocityと提携』、『仏Greenly、炭素会計ソリューションで5,000万ドル超調達』、『バイオテックLoyal、犬の寿命延長薬開発で4,500万ドル調達』、『EコマースデリバリーのPandion、4,150万ドルを調達』、『PocketHealth、医師・患者間ファイル共有プラットフォーム構築へ』、『ベトナム発Techcoop、アグリテックで500万ドル調達』、『Akulaku、東南アジアでのサービス拡大に向け資金調達』を取り上げた「イノベーションインサイト:第76回」をお届けします。

インペリアル・カレッジ・ロンドンからスピンオフしたBreathe Battery Technologiesが、Volvoと商業提携を結んだ。同社のバッテリー充電ソフトウェアをVolvoの新世代EVに組み込むことで、充電時間の短縮と運転・充電体験の向上を実現するという。この提携の一環として、BreatheはVolvoのCVC部門である Volvo Cars Tech Fundからの出資も受ける予定だ。2019年設立のBreatheは、これまでに2021年にシード資金として150万ポンド、2023年にシリーズA資金として785万ポンドを調達している。バッテリーの性能と寿命を損なわない方法でダイナミックに充電するために、バッテリーの健康状態を考慮した同社の適応充電ソフトウェアは、 Volvoが自社開発したバッテリー管理プラットフォームに統合され、バッテリーパックの設計変更や、余分な材料の採掘を必要とすることなく、充電時間を最大30%短縮する。これにより、VolvoのEVに新しいデザインと性能向上の可能性を提供する。

スイスを拠点とする精密ナビゲーション・システム・プロバイダーのFixpositionが、中国のスマートシティ・ソリューション・プロバイダーのAutocityと戦略的提携を締結した。これにより、Fixpositionの位置センサーがAutocityの自律型道路清掃車に組み込まれ、都市衛生部門のコスト削減だけでなく、効率や労働条件の改善にも支援を提供する。2017年に設立されたFixpositionは、都市などを中心に、建物や木々により衛星信号が限られた環境向けにセンサーを開発している。これは、複数の独立したセンサー技術(GNSS、IMU&コンピュータビジョンシステム)の能力を組み合わせることで、個々のセンサーの弱点を補うもの。これにより、Autocityの道路清掃車は、自律航行、障害物検知と回避、自動廃棄物処理、天候適応機能などを実現するセンチメートルレベルの精度で動作することができる。Fixpositionのソリューションは、Greenzie(ロボット芝刈り機)やAgtonomy(農業用ロボット)などの企業ですでに採用されているが、今回の提携により、新たな用途への拡大が可能になる。

フランス発炭素会計スタートアップのGreenlyは、HPやHSBCなどの投資家が参加したシリーズBラウンドで5,200万ドルを調達した。2019年設立の同社は、特に中小企業にとって炭素会計をより直感的で手頃なものにしたい意向だ。これは、さまざまなソフトウェア・リソース(公共料金データ、運賃請求書、クラウド・コンピューティングの使用状況、財務記録など)からの企業データの収集を合理化することによって実現され、独自のデータとアルゴリズムと組み合わせることで、カテゴリーとスコープごとに炭素排出量を計算する。昨年、年間1,000万ドル以上の経常収益を記録したGreenlyは、今回の資金調達により、大幅な成長が見込まれる市場での地位拡大を目指す。そして今後、企業レベルの炭素会計だけでなく、個々の製品のライフサイクル評価にも進出し、2030年までに10億トンのCO2を管理・削減することを目標としている。


サンフランシスコ発、犬用長寿薬の開発に取り組むLoyalは、Bain Capital Ventures主導のシリーズBラウンドで4,500万ドルを確保、2019年創業からの調達総額は1億2,500万ドル超となった。今回の資金調達は、犬の健康寿命を延ばす初のFDA承認薬を市場投入するLoyalの努力を後押しすることになる。同社は、犬がより長く健康的な生活を送れるよう、犬の老化の根本的なメカニズムと原因をターゲットとする薬剤開発をすることで、多くの老化関連疾患の発症を遅らせ、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を維持できるよう開発を進める。Loyalは、大型犬の健康寿命延長を目的とするLOY-001とLOY-003、体重約6.4キロ以上のシニア犬向けLOY-002と、3つの薬剤を目下開発中であり、シニア犬向けLOY-002はFDAの条件付き承認を受け次第、米国内50以上の動物病院で1,000匹以上を対象とするテストを経て、2025年初頭に発売開始される予定だ。

オンライン小売業者の商品デリバリーを支援するシアトル発Pandionが、シリーズBラウンドで4,150万ドルを調達した。元アマゾンとウォルマート出身のCEOが立ち上げた同社、米国家庭の80%をカバーする宅配便システムを運営しており、5つの仕分けセンターを持つ。そして、Saks Fifth Avenueなどの小売顧客から物流拠点で荷物を受け取り、50万人の「ラスト・マイル」配送ドライバー網を使って商品を最終目的地まで届ける。全国規模の宅配業者だけに頼るのは難しく、自社で地域レベルの配送能力を構築するには莫大なリソースが必要、という多くの現地企業のジレンマへの解決策として、Pandionが活躍しているという。商務省の発表によると、米国のeコマース売上は昨年7.6%増の1兆1,000億ドルに達した上、オンライン販売も小売総売上高の22%(前年比1%増)を占める。UPS、FedEx、Amazonと競合するPandion、Eコマース成長の波に乗り続けているようだ。

患者が自身のレントゲン写真などの医療画像を他の医療機関に持って行く際、多くの放射線科医が、画像ファイル共有のためいまだにCDなど、時代遅れの技術を使用しているという。そのような現状を受け、トロント拠点PocketHealthは、患者と医療提供者間コミュニケーションをデジタル化する医療画像交換プラットフォームを構築する。同社は、Round13 Capitalが主導し、Samsung NextやDeloitte Venturesなどが参加したシリーズBラウンドで3,300万ドルを調達したばかり。創業8年目のPocketHealth、北米では775の医療施設で150万人以上の患者にすでに利用されている。暗号化されたデータはローカルに保存され、Microsoft Azureがカナダと米国の両方でホスティングする。常にセキュリティ監査と再評価も行われ、データ漏洩から保護されている。患者はデータ必要時にアクセスコードを使用し、画像へのアクセスを安全に共有および取り消すことができる。


ベトナム発アグリテックスタートアップのTechCoop Pte. Ltd.が、500万ドル以上の資金を調達したと発表した。同ラウンドには、地元VCのAscend Vietnam Ventures(AVV)とシンガポールを拠点とするTNB Auraに加え、Ethos Ventures、韓国のインパクト投資家MYSC、およびMandala Capitalも参加した。2022年設立の同社は、2,000以上の国内農業中小企業や、輸出主導型サプライチェーン全体におよぶ農業団体に統合された貿易、デジタル融資、またアドバイザリー・ソリューションを提供している。これには、農業資源(肥料、作物保護、苗、機械サービス)を3~6ヶ月、生産物(ナッツ、果物、野菜)を30~60日の支払期限で提供するサービスも含まれている。この9ヶ月で、ほぼゼロから3,500万ドルの売上高を達成したTechCoopは今後、ホーチミン・アンザン、ベンチェー、ビントゥアン、ビン・フオック、ダクラク、ギアライ、およびラムドンの8つの戦略的事業拠点を通じて、ベトナムの30都市・省での技術開発と事業拡大に注力する予定だ。

インドネシア発のフィンテック企業Akulaku Groupは、HSBC Singaporeから1億ドルの融資を受けたと発表した。Akulakuは、東南アジアでの事業基盤を拡大し、新たな融資商品の発売を促進、銀行口座を持たない人々へのサービスを強化することを目指している。この動きは、今月初めのインドネシア金融サービス庁(OJK)によるBuy Now, Pay Later(BNPL:後払い決済)サービスへの規制解除の影響を受けたもの。AkulakuはBank Neo Commerceとの提携により、BNPLサービスに加え、バーチャル・クレジットカード、資産管理商品、およびデジタル・バンキング・サービスなど幅広い金融サービスも提供している。また2014年の設立以来、同社はインドネシア、マレーシア、フィリピン、またベトナムで事業を展開してきた。

イントラリンクについて
イントラリンクは、日本大手企業の海外イノベーション・新規事業開発、海外ベンチャー企業のアジア事業開発、海外政府機関の経済開発をサポートするグローバルなコンサルティング会社です。