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イノベーションインサイト:第130回

イノベーションインサイト:第130回

『欧州エコシステム、第1四半期はヘルスケアが顕著な活躍』、『英Nyobolt、高出力バッテリー技術拡大に向け3,000万ドル調達』、『楽天、新たな開発組織設立で欧州内技術プレゼンスを強化』、『Exowatt、データセンターのエネルギー需要対応に7,000万ドル調達』、『Exaforce、エージェント型SOCプラットフォームの拡大に向け7,500万ドル調達』、『生成AI患者対応プラットフォーム開発のAssort Health、2,600万ドル調達』、『Eratani、インドネシア農業支援で620万ドル調達』を取り上げた「イノベーションインサイト:第130回」をお届けします。

欧州エコシステム、第1四半期はヘルスケアが顕著な活躍

Dealroomの最新レポートによると、欧州スタートアップは2025年第1四半期だけで、前年比2%増の139億ドルを調達した。今期最大のVCラウンドは、英国発創薬企業Isomorphic Laboratories3/6億ドル)、肥満関連のバイオテック企業のVeriva Bio1/41,000万ドル)、ストックホルム発予防医療のNEKO Health1/26,000万ドルを調達)など、主にヘルスケアや医薬品関連に集中し、その結セクター別では、ヘルスケアが圧倒的な金額で48億ドルを調達した。またAI企業の資金調達額も記録的で、34億ドル(今四半期の欧州VC資金調達額の25%)に達し、これは前年同時期と比較しても55%急増したことになる。そんな中、NEKO HealthTinesAIワークフロー自動化)、Dren Bio(バイオ医薬品)、Loft Orbital(スペーステック)、Namirial(デジタル取引管理)、Diagnostyka(医療診断)など6社が評価額10億ドルに達し、ユニコーン入りを果たした 

 

 

 

 

 

 

 

 

英Nyobolt、高出力バッテリー技術拡大に向け3,000万ドル調達

英国を拠点とするバッテリースタートアップのNyoboltが、ScaniaCVC部門であるScania Investや高砂工業などが参加した最新ラウンドで3,000万ドルの資金を確保し、調達総額も1億ドルに達したケンブリッジ大学からのスピンオフとして2019年に設立された同社は、エネルギー貯蔵と急速充電技術を開発し、EV、産業&ロボット、大型オフハイウェイ市場のニーズに対応することを目指している。Nyoboltの技術は、より高い出力密度を持つ特許取得済みの負極材料、バッテリーセル設計、統合パワーエレクトロニクス、ソフトウェア制御の組み合わせで、リチウムイオン電池でよく見られる充電による劣化のないバッテリーおよび充電システムを作り出すことに強みを持つ。EV車のバッテリーを5分以内に80%まで充電することに初めて成功した企業として歴史に名を刻んだ同社は、すでに15,000万ドル以上の契約額を確保しており、売上高が3倍に拡大すると想定されている。  

 

 

 

 

 

 

 

 

楽天、新たな開発組織設立で欧州内技術プレゼンスを強化

楽天はイノベーション促進やコラボレーション強化、そして欧州市場における同社の技術的プレゼンス確立を目的に、仏パリに「Rakuten Tech Center Europe」を設立した。同センターは、AI、データセンター運用、クラウドコンピューティング、ITサポートなど幅広い専門知識を持つ専門家と、AIやその他最先端技術のインキュベーションセンターである楽天技術研究所のメンバーの50人以上で構成されまたフランスのeコマース事業を展開するRakuten France S.A.S.に併設されている。これにより、新たな技術センターから生まれたイノベーションが欧州のあらゆる事業で活用されることが期待される。約13年前に欧州で最初の技術部門を設立した楽天は、今回のRakuten Tech Center Europeの立ち上げを重要なマイルストーンとし、欧州エコシステム内でのイノベーションに対する同社のコミットメントを明確に示した。 

 

 

 

 

 

 

 

 

Exowatt、データセンターのエネルギー需要対応に7,000万ドル調達

マイアミを拠点に陽光発電とバッテリー貯蔵ソリューションを開発するExowattは、a16zOpenAIのサム・アルトマン、レオナルド・ディカプリオなど著名なエンジェル投資家が参加したシリーズAラウンド$7,000万ドルを調達した。ラウンドにはHSBC Innovation Bankingからの$3,500万ドルの債務融資も含まれExowattのモジュール式で調整可能なP3システムは、太陽光エネルギーを捕集、長寿命熱電池に熱として貯蔵し、必要に応じて電気に変換した後に供給するもの。最大24間の連続電力供給が可能で、標準的な40フィートコンテナ内に収まる設計により、柔軟なオフグリッド電力供給を実現し、エネルギー需要が急増するデータセンターやハイパースケーラーに最適だという2023年設立Exowattは既に90GWhを超える注文を獲得しており、今年中に国内製造の拡大と米国での商業展開を開始し、持続可能でオンデマンドな電力ソリューションへの急増する需要に対応する計画 

 

 

 

 

 

 

 

 

Exaforce、エージェント型SOCプラットフォームの拡大に向け7,500万ドル調達

Exaforceエージェント型セキュリティオペレーションセンターSOC)プラットフォームの拡大を推するため、シリーズAラウンドで$7,500万を調達しKhosla Ventures、Mayfield、Thomvest Venturesの支援を受けるExaforceは、AIエージェント「Exabots」を活用し、手動のセキュリティタスクを10倍削減しつつ威の検出と対応を強化する次世代SOCソリューションを開発中。同プラットフォームは、大規模言語モデルLLMとセマンティック、統計的、行動モデルを統合したマルチモデルAIエンジンをサイバーセキュリティ専用に設計している。このアプローチは、LLMのみに依存するシステムの限界を克服し、ログ、クラウドテレメトリ、脅威インテリジェンスを含む大規模データセットの正確でスケーラブルな分析を可能にし、従来のセキュリティ情報イベント管理ツールでは不足している部分を補うまたSOCチームが直面するアラートによる疲弊、誤検知、クラウド脅威のカバー範囲の不足に対応し、今後は雑なセキュリティオペレーションの自動化において変革をもたらすと期待される。 

 

 

 

 

 

 

 

 

生成AI患者対応プラットフォーム開発のAssort Health、2,600万ドル調達

門分野に特化したAIプラットフォームで患者電話対応変革もたらすAssort HealthFirst Round CapitalChemistry共同主導しQuiet Capitalなども参加した最新ラウンドで2,600万ドルを調達した。2023年にApple、スタンフォード大学、Meta出身のJon WangJeff Liuによって設立されたAssort Healthは、医療業界における長い待ち時間とスケジューリングの非効率性を解消することを目指してい同社のAI搭載ボイスエージェントは患者スケジューリングを自動化し、従業員の職率や予約ミスなど従来のコールセンターが直面する課題に対応しているChesapeake Healthcareなど複数の組織で数百万件のインバウンドコールをサポートすることで、待ち時間を短縮し予約の正確性を向上させ診療予約の88%が依然として電話で行われている中、同社は独自のAI術を活用し、オペレーション効率の向上と医療の民主化を推進することで、医療アクセスにおける新たな基準を確立してい 

 

 

 

 

 

 

 

 

Eratani、インドネシア農業支援で620万ドル調達 

インドネシアアグリテック・スタートアップErataniは、Clay Capitalをリードインベスターに、TNB Aura、SBI Ven Capital、AgFunder、Genting Ventures、IIXなど参加したシリーズAラウンドにおいて620万ドルを調達した。Erataniは国内の米自給率向上という国家的課題への取り組で注目を集めている。2021年設立の同社は、ジャワ島およびスラウェシ島において34,000人を超える小規模農家に対し、デジタルエコシステムを通じて農業資金の提供、技術支援、認証済み資材の供給および販売チャネルの整備などを行ってきた。これにより、13,000ヘクタール以上の農地における栽培効率が向上、2024年だけで農家の米収量は29%、収入25%増加し、同社のプラットフォームを通じて112,000トンを超える米および穀物が生産された。データ駆動型のリスク管理手法は、インドネシア農業のレジリエンス強化および気候変動対応型農業の中核としての地位を確立している。今回の資金調達により、Erataniは精密農業ツールの導入、農業機械化の拡大、持続可能な農法の普及を一層推進する計画であり、国家の食料安全保障目標ならびにグローバルな気候目標との整合性を図る構えである。 

 

 

 

 

 

 

 

 

Treehouse、4億ドルの評価額で戦略的資金調達を完了

デジタル資産インフラを手がけるTreehouse Labsは、評価額4億ドルで戦略的資金調達ラウンドを完了した。本ラウンドは、運用資産総額が500億ドルを超えるグローバル金融機関のベンチャー部門が主導し、金融および暗号資産分野の有力投資家が多数参加した。本資金調達は、同社が過去に実施した1,800万ドルのシードラウンドに続くものであり、機関投資家によるデジタル資産領域への関心の高まりを反映している。Treehouseは、Decentralized Offered Rates(DOR)やトークン化資産(tAssets)といった固定利回りインフラの整備を通じて、ネイティブ暗号資産および現実世界資産(RWAs)を対象とする市場の発展を目指している。2024年末の「Treehouse Protocol」ローンチ以降、同社は30,000を超えるウォレット保有者を獲得し、120,000ETHを超える預かり資産を確保している。今回の調達資金は、製品開発、規制対応体制の強化、ならびにグローバル市場への展開加速に充当される予定 

 

 

 

 

 

イントラリンクについて

イントラリンクは、日本大手企業の海外イノベーション・新規事業開発、海外ベンチャー企業のアジア事業開発、海外政府機関の経済開発をサポートするグローバルなコンサルティング会社です。

植木 このみ
About the Author

植木 このみ

オックスフォード本社を拠点に、プロジェクト実行チームの一員として、日本ならびにアジア大手企業を対象としたマーケティング事業をリードしている。2020年より海外エコシステムの最新情報を日本語で提供する「イノベーション・インサイト」を執筆。また欧州におけるイベント企画・運営も担当。

ラフバラー大学にて国際経営学修士号を取得後、ロンドンの日系企業でEMEA在日本企業の経営ビジネス戦略構築をサポートした経験を持つ。

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