『蘭SkyNRG、欧米でのSAF工場建設に向け2.5億ユーロ調達』、『EVインフラのEasyGo、スコットランドで3億ポンド規模の事業参加』、『英Colorifix、DNAシーケンス技術を用いた持続可能な衣料用染料を開発』、『クボタ、Agtonomyと自律農業ソリューションを共同開発』、『Heron Power、送電インフラ革新に向け3,800万ドル調達』、『Cerby、アプリのセキュリティ自動化で4,000万ドルを調達』、『RGEとTotalEnergies、インドネシアでバッテリー併設型太陽光発電所建設』を取り上げた「イノベーションインサイト:第136回」をお届けします。

持続可能な航空燃料(SAF)を供給するアムステルダム発SkyNRGが、オランダ最大の年金サービス提供機関であるAPGから2.5億ユーロの投資を確保した。この資金により、SkyNRGは国内外で複数の生産施設を建設する予定で、その計画にはオランダのProject Delfzijl(年間10万トンのSAFL、PGやナフサなどの副産物3万5,000トンを生産予定)、スウェーデンのProject SkyKraft(再生可能エネルギーとバイオ由来のCO2を使用したeSAFを生産予定)、そして米国のProject Wigeon(年間15万トンのSAF生産を目標)などが含まれる。2009年に設立された同社は、航空会社、大手企業、貨物代理店、旅行会社、個人消費者など、多様な顧客にSAFを提供、スコープ1(ジェット燃料の燃焼)とスコープ3(出張と航空貨物)における排出量削減を支援する。既存の提携先には、KLM、Finnair、DHL、Cargolux、LOT、Air New Zealandを含む40社以上の航空会社が名を連ねている。

アイルランド発EasyGoが、スコットランド全土におけるEVインフラの供給と運営管理に関して3億ポンドの契約を獲得した。この20年に及ぶ契約は、スコットランド内複数の地方自治体との提携を含み、EasyGoは2028年までに570基の新たな充電ポイントを設置するほか、参加自治体区域内にある既存の公共充電器425基(DC型133基、AC型292基)の管理も引き継ぐことになる。2018年設立のEasyGoは、アイルランド最大手のEV充電ソリューションプロバイダーであり、1,500ヶ所以上で4,500基超の充電器を運営している。既に10万人以上が同サービスを使用する中、特にDCによる急速充電に注力している。なお、同社初の主要海外事業となる同プロジェクトには、スコットランド政府が3,000万ポンドを投入する「Electric Vehicle Infrastructure Fund(電気自動車インフラ基金)」から700万ポンド以上が拠出されているという。

大量の水を必要とし、その環境への影響が懸念される合成染料の問題を解決するため、英国発Colorifix は、微生物を活用した新たな繊維染色プロセスを開発している。同社はまず、動物、植物、または微生物によって生成された特徴的な色を特定し、その色の生成方法が生物のDNAに記録された「情報」を公開データベースで探し出す。そのコードは、酵母などのバイオエンジニアリングされた微生物に組み込まれ、ビール醸造に似たバイオリアクターで糖と窒素を吸収しながら培養される。最終的に生成された混合物は、染色対象の繊維と共に標準的な染色機で使用される。2023年には、英国王室のウィリアム皇太子が創設したグローバル環境賞「The Earthshot Prize」の最終候補に選出されたColorifixは、2030年までに世界中で衣類の15%を染色することを目指し、現在欧州と南米で事業を展開しており、1年以内に南アジアへの拡大も計画している。そしてPangaiaやVollebakなどのファッションブランドと提携しながら、技術の商品化を進めている。


クボタは、カリフォルニア州を拠点に農業用自動化ソフトウェアを開発するAgtonomyとの戦略的提携を発表した。2024年に実施された実証試験が好結果を収めたことを受け、現在は販売戦略や顧客サポート体制の構築に向けた協議が進められており、両社は今後、北米市場における高付加価値作物(スペシャリティクロップ)向け自律走行ソリューションの商用化を目指す。この提携は労働力不足やコスト上昇、持続可能性といった課題に直面するカリフォルニア、オレゴン、ワシントン州のスペシャリティクロップ生産地域に対応することを目的に、Agtonomyの精密な自動化ソフトウェアとクボタの農業機械を融合させることで、農薬使用量や人手を削減できる自動散布システムの開発、そして農場データのリアルタイムな処理と効率的な作業の創出に貢献すると期待されている。

次世代エネルギーインフラのHeron Powerは、Capricorn Investment GroupのTechnology Impact Fundが主導、Breakthrough Energy Ventures、Valor Equity Partners、Tesla共同創業者JB Straubel氏なども参加した最新のシリーズAラウンドで3,800万ドルの資金を調達した。同社は、老朽化した中圧変圧器(MVT)市場の刷新を目指し、太陽光発電や蓄電池、データセンターなどの拡大に伴い、従来の大型アナログMVTが電力インフラのボトルネックとなっている現状を打破したい考えだ。 Heron Powerが開発する「Heron Link」は、モジュール型のメガワット級電力変換装置で、中圧に直接接続できる設計となっており、従来の変圧器を必要としない。ワイドバンドギャップ半導体を活用し、電圧と周波数の調整機能を内蔵することで、電力網の安定性向上とコスト削減が期待されている。Heron Powerは米国での製造を前提に、2026年にパイロット導入、2027年にはパートナー企業との本格展開を計画しており、今回の調達資金はHeron Linkの最終設計と人材拡充に活用される予定だ。

アイデンティティ・セキュリティ自動化プラットフォームを提供するCerbyは、DTCPが主導し、Okta Ventures、Salesforce Ventures、Two Sigma Venturesが参加したシリーズBラウンドで4,000万ドルを調達、累計調達額も7,250万ドルに達した。Cerbyは、従来のIAMツールでは対応困難な非標準アプリに対するアイデンティティ管理の欠如という企業のセキュリティ課題に取り組んでいる。これらのアプリは可視性が低く、手作業による設定ミスの温床となりやすい。現在発生しているセキュリティー侵害の60%が人的ミスに起因する中、Cerbyは2,000以上のアプリに対応し、アクセス制御、MFA、パスワード管理を自動化、コンプライアンス強化とリスク低減に貢献する。2020年設立の同社は、現在までにARRを10倍、顧客数を5倍に成長させ、既にL’Oréal、Fox、Chimeなどに導入されている。今回の資金は、エージェンティックAIやプラットフォーム拡張、北米・EMEA・中東など複雑な規制を抱える地域での市場拡大に充てられる。


RGEとTotalEnergiesは、インドネシア・リアウ州においてバッテリー貯蔵機能を備えた大規模太陽光発電所の建設に向け、50:50の合弁会社「Singa Renewables」を通じた共同出資契約を締結した。本プロジェクトは、インドネシア国内向けにグリーンエネルギーを供給するだけでなく、シンガポール・インドネシア間の電力輸入枠組みに基づき、シンガポールへの太陽光発電輸出も視野に入れている。発表はジャカルタの大統領宮殿にて行われ、プラボウォ・スビアント大統領およびフランスのマクロン大統領が立ち会った。RGEは、本プロジェクトはインドネシアの国家変革戦略と協調し、現地の太陽光発電バリューチェーン構築、人材育成、長期的な経済価値の創出を目的とするものであるとしている。また、シンガポールのエネルギー市場庁(EMA)は2024年9月、Singa Renewablesに対し、インドネシアから最大1GWの低炭素電力輸入に関する条件付き承認を付与している。これにより、エネルギー供給にとどまらず、ASEAN域内における越境クリーンエネルギー統合の推進、インドネシアの再生可能エネルギーハブとしての地位確立に貢献する。さらに、バッテリー貯蔵、グリッド統合、エンジニアリング分野における雇用創出も期待される。
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シンガポールを拠点とするトラベルテックのTruelyが、独自のSwitchless eSIMプラットフォームを基盤とし、Goodwater Capital、大和ハウスベンチャーズ、Disrupt.comなどから戦略的資金調達を実施した。Goodwater Capitalは、Toss、Kakao、Coupangなどへの投資実績を通じたグローバル消費者向けテクノロジーの拡大を提供する一方、Disrupt.comも、1億ドル規模のAI優先投資コミットメントを背景に、運営支援およびグローバルネットワークへのアクセスを提供する企業だ。また今回の投資により、大和ハウスは日本および東アジア地域での販売網・パートナーシップの強化を図る。Truelyは、2025年にベータ版から正式リリースを迎え、頻繁に渡航するユーザー向けに無制限のローミングフリーデータを提供する。OTA、航空会社、スーパーアプリとのB2B2Cパートナーシップを通じて事業拡大を進めており、自社開発のSwitchless™プラットフォームは、従来のeSIMリセラーに代わるコスト効率と信頼性を兼ね備えたソリューションとして注目されている。
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