『OKI、ベルリンに外部連携を目的とした研究開発拠点を設立』、『AIデジタルツインとシミュレーションの英Skyralが資金調達』、『アイルランド発Nomupay、ソフトバンクからの出資で企業価値が約3億ドルに』、『AI業務自動化事業のSwimlane、4,500万ドル調達で黒字化へ前進』、『Runwise、建物向けスマートOSの拡大に向け5,500万ドル調達』、『Guardzが5,600万ドル調達、SME向けに高水準のサイバーセキュリティ提供へ』、『丸石製薬も連携、Allay Therapeuticsが5,750万を調達』、『B GrimmとDigital Edge、タイに10億ドル規模のデータセンター投資を発表』を取り上げた「イノベーションインサイト:第137回」をお届けします。

OKIは今月、オープンイノベーションを通じたフォトニクス技術の強化ならびに社会実装を目的に、独ベルリンに「OKI Berlin Lab」を設立した。優れたフォトニクス技術を持つ欧州の研究機関との共同研究、また関連企業との連携により、OKIの光ファイバーセンサーや小型レーザー振動計などのエッジデバイスの高性能化・高機能化、さらにインフラや製造、ヘルスケアなどの分野での社会実装を通じた技術優位性の確立を目指す。またこれらの活動による研究開発成果をEUで価値検証した上で、APACなどへグローバル展開していくという。同拠点には共同研究を担当する研究員とオプトメカトロニクス技術の社会実装を推進する技術マーケッターが常駐する一方、OKIの最新技術を紹介する来訪者向けショールームも併設されている。

近年、地政学的不安定と気候変動リスクを背景に、予測シミュレーションとデジタルツインに対する世界的な需要が急増している。そんな中、モデリングとシミュレーションに特化した英国発Skyralが、防衛、国家安全保障、ヘルスケア、インフラなどの分野でAI主導デジタルツイン技術の世界的な拡大を図るため、2,000万ドルのシリーズA資金を確保した。2023年に設立された同社は、行動データ、交通機関やエネルギーネットワークをはじめとするリアルタイムのインフラシステム、予測モデリングを統合し、都市や国全体の戦略的「デジタル・ツイン」を構築する次世代プラットフォームを開発している。これにより、公共機関や民間企業は、政策、投資、または混乱がもたらす波及効果をシミュレートし、シナリオ・プランニングと運用上の洞察の両方を提供することができる。Skyralはパンデミック流行時、英国政府による複数のシナリオ・シミュレーションを支援した上、インドネシアでも効果的な政策介入策の特定を従来の手法の50倍以上の速さで加速させることで、子どもの発育阻害の削減に取り組んだ実績を持つ。そして現在までに、NATOや英国国防省をはじめ、世界各地の官民パートナーとの間で商業関係を築いてきた。

ソフトバンクの100%子会社としてファイナンス事業を担うSBペイメントサービスが、欧州やアジアで事業を展開するアイルランド発決済サービス・プロバイダーのNomupayに約4,000万ドルを出資、戦略的パートナーとしての資本業務提携を発表した。Nomupayのプラットフォームは、国境を越えた決済システム向けにバックオフィスを複雑化することなく、外国為替(FX)を管理するための多通貨バーチャル口座やトレジャリーサービスも提供しながら、顧客により多くのローカル決済オプションを提供する。同社のビジネスモデルは、買い手と売り手の双方にサービスを提供するプラットフォーム上で、加盟店が決済受付サービスやペイアウトを利用しながら処理した取引量に応じて手数料を徴収するもので、同サービスはすでに世界中で2,000以上の加盟店に採用されている。今回の提携によりNomupayは直ちに日本市場に参入するほか、今後シンガポール、インドネシア、ベトナム市場も視野に入れながら、APACでのプレゼンスを大幅に拡大する予定だ。


セキュリティ業務向けのAIハイパーオートメーションを提供するSwimlaneが、Energy Impact Partners、Activate Capital、Trinity Capitalの主導により4,500万ドルの成長資金を調達した。2025年第3四半期までの黒字化を見込む同社は、収益の伸長と業務効率の向上を背景に、AI駆動型「Turbine」プラットフォームや民間初のSecOps向けエージェントAI「Hero」の開発強化、さらにグローバルでのチャネル拡大を進める。Swimlaneは現在、1社あたり1日2,500万件以上の業務を自動化しており、これは一般的なSOAR(セキュリティ・オーケストレーション・自動化・対応)製品の17倍の速度に相当する。50社を超えるGlobal 1000企業や26機関の米連邦政府機関、大手SI企業を顧客に持ち、売上の75%をパートナーチャネル経由で構成する。ISO 42001のAI認証を取得した初期企業の1社であり、投資家にも「セキュリティの複雑性を実効性のあるスケーラブルな手法で打破する力」を評価されている同社は、ベンダーの競争力を評価する2025年版SPARK Matrixでも成長の可能性を示唆する「Ace Performer」に選出された。

建物向けのスマート・オペレーティング・システムを提供するRunwiseが、Menlo Ventures主導のシリーズBラウンドで5,500万ドルを調達した。MassMutual Ventures、Nuveen Real Estate、Soma Capital、Fifth Wallなどの既存・新規投資家も参加し、累計調達額も7,900万ドルに達した。今回の資金は、さらなる製品開発、チーム拡充、新市場展開に充てられる予定だ。Runwiseのシステムは全米で1万棟以上の建物に導入され、すでにNational Grid、MTA(ニューヨーク都市交通局)、Equity Residentialなど1,000社超が採用。これまでに累計1億ドル以上のエネルギーコスト削減を実現してきた。独自開発のハードウェア、無線通信、クラウドソフトウェアを統合した垂直型プラットフォームにより、建物運用の自動化と最適化を行い、平均5ヶ月以内で投資回収を可能にしている。創業以来、売上は30倍に成長し、今年中にはさらに2倍近くの成長が見込まれる。AIとインフラの交差点に立つRunwiseは、従来型の設備管理をインテリジェントかつスケーラブルなシステムへと転換し、省エネ・効率化・持続可能性の実現を支援している。

サイバーセキュリティのマイアミ発Guardzが、ClearSky主導のシリーズBラウンドで5,600万ドルを調達し、累計調達額も8,400万ドルに到達した。同社は現在、中小企業を顧客に持つMSP(マネージドサービスプロバイダー)向けの事業に特化し、AIと人の専門知識を組み合わせたMDR(マネージド検知・対応)プラットフォームを提供している。この統合型プラットフォームでは、Google WorkspaceやMicrosoft 365を含むクラウド、データ、ID、エンドポイント環境において、脅威検知、ユーザー行動の監視、自動対応などを一括管理できる。AIを活用した攻撃が中小企業を狙うなか、GuardzはMSPを通じてエンタープライズ水準の防御体制を実現し、対応の自動化やコンプライアンス対応レポートの提供も行う。攻撃シナリオのシミュレーション機能も備え、すでに世界中で数百社のMSPに導入され、数千の中小企業を保護している。今回の資金調達により、同社は営業体制の拡充、AI自動化の強化、サイバー保険やコンプライアンス機能の拡張を進める。多くのMSPが抱える「分散したサイバー防御ツールの統合ニーズ」に応える、スケーラブルでシンプルなソリューションとして注目を集めている。


臨床段階のバイオテック企業であるAllay Therapeuticsは先週木曜日、5,750万ドルのシリーズD資金調達ラウンドを完了した。また日本市場における同社パートナーとして今回のラウンドにも参加した丸石製薬は、既存のライセンス契約の対象地域を韓国と台湾にも拡大した。現在、同社は日本国内において、術後の持続的な疼痛緩和を提供し、オピオイド依存の軽減と患者の回復促進を狙った新規鎮痛剤であるATX101のフェーズI/II多施設共同オープンラベル安全性試験を実施中だ。今回の調達資金は、人工膝関節置換術(TKA)後の術後疼痛治療を目的としたATX101の第II相臨床試験に活用され、痛みを伴う術後未充足医療ニーズに対応するAllayの超持続型製品プラットフォームのさらなる開発促進に充てられる予定だ。

東南アジアでAI、クラウドコンピューティング、その他デジタルサービスへの需要が高まる中、タイの電力会社B Grimm Power PCLとDigital Edge DCが、国内データセンターに約10億ドルを共同投資する。両社によると、バンコクから約100キロ離れたチョンブリー県東部に位置する同データセンターは100MWの容量を有し、2026年第4四半期に商業運転を開始する。 またB Grimm Powerは追加のデータセンタープロジェクトに少なくとも1.6億ドルを投入し、総容量約200MWの拡張計画も視野に入れている。 なお、タイは現在までにAmazon、Alphabet、ByteDance、Alibabaなど世界中のテック大手から、データセンターとクラウドサービスの建設に関する数十億ドルの投資を確保しているという。
