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イノベーションインサイト:第144回

イノベーションインサイト:第144回

『仏EV充電ステーションのElectra、累計調達資金が10億ユーロを突破』、『Candi Solar、クリーンエネルギー普及拡大に向け2,400万ドルを調達』、『みずほ証券、専門M&Aアドバイザリー買収で再エネ事業強化』、『Armada、移動可能なAIデータセンターで1.3億ドルを調達』、『多様な応用領域を持つ光学技術のLumotive、Amazonなどから資金調達』、『マルチモーダルAI のReka AI、ユニコーンステータス獲得へ』、『Respiree、AIによる健康モニタリング拡大に向け1,160万ドルを調達』、『HeyMax、香港のkripを買収しロイヤルティ報酬基盤を拡充』を取り上げた「イノベーションインサイト:第144回」をお届けします。

仏EV充電ステーションのElectra、累計調達資金が10億ユーロを突破

フランス発超高速EV充電サービス・プロバイダーのElectraが、新たに43,300万ユーロのグリーンローンを調達し、設立以来の累計調達額も10億ユーロを超えたと発表した。2021年に設立され都市部、交通要所、ビジネスまた主要な交通道路をターゲットとする同社のネットワークは現在、9つの欧州諸国に500ヶ所を超える充電ステーション(+3,000のアクティブ充電ポイント)に広がる。さらに2030年までに、2,200ヶ所の充電ステーションと15,000の高出力充電ポイントの設置を目標としているが、1ヶ所の充電ステーション設置に50万ユーロの資金が必要となり2030年までに総額11億ユーロ以上が投入されることになる。今回の調達資金は、インフラ拡張だけでなく、アプリの導入、スマート道路の計画ツール、自動充電機能の追加などによりユーザー体験の最適化に充てられる。またその充電ステーションを自社開発技術を応用したEV充電と電力網の負荷最適化を組み合わせたスマートエネルギーハブへと進化させ、バッテリー貯蔵や太陽光パネルの活用により、エネルギーとネットワークの耐障害性を確保するための取り組みも進めていく。 

 

 

 

 

Candi Solar、クリーンエネルギー普及拡大に向け2,400万ドルを調達

スイス発クリーンテックのCandi Solarは、2,400万ドルの新たな資金調達に成功し、今までの調達資金$14,000万ドルを超えたと発表した2017年設立のCandi Solarは、インドと南アフリカにおける商業施設および産業施設向けの太陽光発電と蓄電池のターンキーソリューションを提供し、企業のグリーンエネルギーへの容易な移行を支援している。現在までに、Candi Solar165件の設置を完了し、総契約容量は現在132MWに達している。これにより、年間約17万トンの二酸化炭素算排出量を削減する効果をもたらしている。2024年には、インドにおける屋上太陽光発電開発企業のトップ3に選出されたCandi は現在、顧客には南アフリカのSchneider Electricとトヨタ、さらにインドのAvenue Supermart、Airtel, Jindal Saw、Eveready Industries などを顧客に持つ。この調達資金をもとに、同社は主要市場におけるプレゼンス強化や製品ラインナップ拡大に取り組む予定だ。また2026年にさらに高額なシリーズDラウンドも計画しているという。 

 

 

 

みずほ証券、専門M&Aアドバイザリー買収で再エネ事業強化 

みずほ証券が先週、再エネおよびエネルギー・トランジションに特化した独立系アドバイザリーAugusta & Coを買収すると発表した。Augusta再エネ分野のM&Aにおいて20年以上の経験を有し、クリーンエネルギー発電、貯蔵、エネルギー管理、Power-to-Xをはじめとする新興エネルギー・トランジション技術で事業を展開する主要な業界プレイヤーを支援してきた。現在までに130件を超える取引を完了し、顧客のために約300億ユーロを調達してきた実績もある本買収完了後も、Augustaは自社チームとブランドを維持し続けるとともに、みずほグループ内で提供されている既存のグローバルM&Aアドバイザリーサービスとシナジーを創出。顧客の低炭素経済へのスムーズな移行を支援していく計画だ。 

 

 

 

 

Armada、移動可能なAIデータセンターで1.3億ドルを調達

Armadaは、エッジAI向けのメガワット級耐環境型データセンターモジュール「Leviathan」のローンチとともに、マイクロソフトのM12を含む投資家から戦略的資金調達として13,100万ドルを調達した。12メートルのモジュール式データセンター2つと6メートルの電源ユニットから構成され、Armada Edge Platformによって運用されるLeviathanは、原子力、天然ガス、また通信インフラが整備されていない遠隔地においては太陽光発電などの現地電力源を利用して稼働する。また同システムは数週間で配備可能であり、建設工事の許可なども必要としない。Armadaは現在、Fidelis New EnergyBakken Energyといった企業と提携し、ノースダコタ州、テキサス州、ウェストバージニア州、ルイジアナ州をはじめとする米国および同盟国領土内の戦略的拠点において、余剰電力を高密度計算資源に変換するためにLeviathansを配備している。このLeviathansのローンチにより、ArmadaAIならびにエネルギー分野における米国の優位性を強化支援に貢献し、エッジによる高速で柔軟かつ主権的なインフラを実現する。 

 

 

多様な応用領域を持つ光学技術のLumotive、Amazonなどから資金調達

プログラマブルな光学技術を開発するLumotiveが、アマゾンの Amazon Industrial Innovation Fundと、オマーンのITHCAグループを投資家として迎え入れ、総額5,900万ドルのシリーズB資金を調達した。LumotiveLight Control Metasurface固体チップは、電子的に制御可能なナノスケールのピクセルから構成されており、光を曲げたり操作したりすることができる。これらのチップは、自律走行車の周囲環境検知から、機械式LiDARよりも小型でコスト効率の良い代替手段、さらにデータセンターなどの光スイッチまで、多様な用途を応用されている。2018年に設立された同社は、2024年に同チップの販売を開始したものの、現在は顧客リストを意図的に小規模に絞り込んだ状態を維持しているという。今回の新たな調達資金により、同社は販売・マーケティングと研究開発への投資を強化する予定だ。 

 

 

 

マルチモーダルAI のReka AI、ユニコーンステータス獲得へ

カリフォルニア発Reka AIは、マルチモーダルAIプラットフォームの開発とグローバル展開を加速させるため、NVIDIASnowflakeを含む投資家から11,000万ドルを調達した。2022年設立の同社は、動画、画像、テキスト、音声のデータを高効率かつ低計算コストで解釈し、推論するAIツールの開発を手がける。Rekaの主力製品には、同社が最も注力するReka Flash、Reka Vision、およびReka Researchが含まれる。Reka Visionは、動画と画像コンテンツを大規模に解釈、検索、推論するためのマルチモーダルプラットフォームで、すでにShutterstockTuring Videoなどに採用されている一方、Reka Researchは、ウェブやプライベート文書を閲覧して複雑な質問に答えるエージェント型AIとして活用されている。このツールは、複数の情報源から情報を統合する点で優れた性能を誇り、通常数時間かかる作業を数分で完了させることができる。Rekaは今後このAI基盤モデルを新たな分野へ拡大する計画で、開発者、企業、クリエイターを支援するため、次世代AIアプリケーションの構築に役立つAPIとプラットフォームを提供していくという。 

 

 

Respiree、AIによる健康モニタリング拡大に向け1,160万ドルを調達
  

シンガポール拠点のヘルスケアテックスタートアップRespireeは、AIを活用した疾患管理プラットフォームの展開拡大を目的に、最新のシリーズAラウンドで1,160万ドルを調達した。本ラウンドにはWe Venture CapitalおよびClavystBioが主導し、米Mayo Clinicの財団をはじめ、Adaptive CapitalやSeeds Capitalなども出資に参加している。今回調達した資金は、Respireeの商業部門および米国事業の拡張、とりわけテキサス医療センターに新設する拠点の立ち上げを加速するために活用される同社はすでに米国、オーストラリア、アジア太平洋地域にて事業を展開しており、今後は湾岸諸国やタイを含む新市場への進出も視野に入れている。Respireeは Roche Diagnosticsをはじめとする主要パートナーとの連携のもと、AIおよびセンサープラットフォームを、急性期医療と在宅医療の双方におけるスマートなトリアージおよびモニタリング支援へと応用していく計画だ。投資家陣には、同社の臨床的焦点と、既に検証済みの技術をグローバルな医療ワークフローにスケールさせる実行力が高く評価されているという 

 

 

HeyMax、香港のkripを買収しロイヤルティ報酬基盤を拡充

ロイヤルティおよび旅行報酬プラットフォームを手がけるHeyMaxは、香港拠点のフィンテックスタートアップkripを買収し、アジア市場における存在感を一段と強めた。本買収により、3,000以上の加盟店に対応する6,000件超のクレジットカード関連オファーがHeyMaxに統合され、特に香港市場における事業基盤とユーザー特典の強化されるkripの創業者 David B. Wang氏は、HeyMaxのグローバル・ロイヤルティ・パートナーシップ責任者として参画し、香港における事業運営を統括する。なお、今回の買収によりkripブランドは廃止され、そのユーザーベースはHeyMaxのエコシステムに統合される。HeyMaxは、January CapitalおよびMonk’s Hill Venturesの支援を受け、アジア全域における統合型ロイヤルティ体験の構築を進めている。kripが持つ市場ネットワークとクレジットカード分野における深いデータを活用し、日常消費と旅行体験をシームレスにつなぐ高エンゲージメント型プラットフォームの拡大を加速させる方針だ。 

 

 

植木 このみ
About the Author

植木 このみ

オックスフォード本社を拠点に、日本ならびにアジア大手企業を対象としたマーケティング事業を統括する。2020年より海外エコシステムの最新情報を日本語で提供する「イノベーション・インサイト」を執筆。また欧州におけるイベント企画・運営も担当。

ラフバラー大学にて国際経営学修士号を取得後、ロンドンの日系企業でEMEA在日本企業の経営ビジネス戦略構築をサポートした経験を持つ。

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