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海外イノベーション・スタートアップ最新情報:最新トレンドまとめ|2025年9月25日版

海外イノベーション・スタートアップ最新情報:最新トレンドまとめ|2025年9月25日版

『Nvidia、英国AIエコシステムに20億ポンドを投資』、『蘭Revyve、酵母由来の卵代替品生産拡大に向け資金調達』、『知能ロボットの量産体制構築に向け、Dyna Robotics 社が1億2,000万ドルを調達』、『地熱発電の革新技術に向けRodatherm 社が3,800万ドルを調達』、『CIMB、PingPongと提携でASEAN内の越境決済を強化』、『AmogyとA*STAR、アンモニア利用ソリューション加速で提携』、『複数の日本企業、カルナータカ州へのさらなる投資を計画』、『IBMとBharatGen、インド特化型LLMで国内AI導入を推進』を取り上げた「イノベーションインサイト:第152回」をお届けします。

Nvidia、英国AIエコシステムに20億ポンドを投資

NVIDIAは、英国のAIスタートアップ・エコシステムに20億ポンドを投資する計画を発表した。これにより、経済成長の促進、より革新的なAIの技術開発、新規企業の創出、雇用創出を促進する上、ロンドン、オックスフォード、ケンブリッジ、マンチェスターといった主要なイノベーション拠点における資金調達機会を拡大させる狙いだNvidia は今後、AccelAir Street CapitalBaldertonHoxton VenturesPhoenix Courtなどのべンチャーキャピタルと提携し、投資パッケージの構築に取り組むという。またこれに伴い、英国の有力スタートアップへの投資も計画中で、生成AISynthesia、フィンテックのRevolut、自動運転企業のOxaWayveAIエージェントのPolyAI、バイオテック向けAILatent LabsBasecamp Researchなどが投資先として挙げられているこの発表に先立ち、NVIDIAとパートナー企業(CoreWeave、Microsoft、Nscale)は、英国のAIインフラ整備に110億ポンドを投資する計画も明らかにしており、2026年までに英国内に6万台のNVIDIA GPUが導入される見込みだ。 

 

 

 

蘭Revyve、酵母由来の卵代替品生産拡大に向け資金調達

オランダ発フードテックのRevyveが、酵母原料メーカーLallemand Bio-Ingredientsの子会社Danstar Fermentと、アグリフード企業Cereal Docks Groupの投資部門であるGrey Silo Venturesが参加した最新のシリーズB資金調達ラウンドで、2,400万ユーロの資金をウ調達した。2021年にワーヘニンゲン大学研究センター(WUR)からスピンアウトしたRevyveは、ベーカリー製品、ソース、肉代替品、乳製品代替品などの用途向けに、卵由来の特性を模倣する酵母タンパク質を開発する。このソリューションは、卵価格の変動性、添加物削減の需要、サプライチェーン全体でのCO排出量削減圧力、という生産者が直面する3つの主要課題への対応を支援する。昨年には、この種で世界初となる生産施設を設立し、現在は欧州、英国、米国、カナダ、メキシコ、オーストラリアにまたがる複数の顧客向けに稼働中だ。なお、今回の新規投資により、年間生産量を1,600トン以上に拡大し、増加する顧客需要への対応を強化する。 

 

 

知能ロボットの量産体制構築に向け、Dyna Robotics 社が1億2,000万ドルを調達

汎用型ロボットの開発に取り組むDyna Roboticsは、Robostrategy、CRV、First Round Capitalが主導し、AmazonのIndustrial Innovation Fund、Samsung Next、LG Technology Venturesなどが参加するシリーズAラウンドで1億2,000万ドルを調達した。今回の資金は、エンジニアリングチームの拡充と、次世代ロボティクス基盤モデルの開発加速に充てられる。Dynaは、AI搭載スマートカートを手がけていたCaper AI(35,000万ドルで買収)の創業メンバーによって立ち上げられた企業で、商用向けの高性能汎用ロボットに特化している。2024年初めに2,350万ドルのシード調達を実施した後、同社はDYNA-1というモデルを発表し、24間稼働テストで99%以上の信頼性を達成。わずか6ヶ月でホテル、レストラン、コインランドリー、ジムなどに導入され、1日最大16間の稼働を実現している。特定用途向けのロボットと異なり、Dynaの基盤モデルは単一の重みで業界横断的なタスクに対応し、現場での使用を通じて自律的に学習化する。理論よりも現場での実装を重視する姿勢を強みに、同社は実用的な自律ロボットのスケール展開、さらには物理的AGI(汎用人工知能)への道を切り拓こうとしている。 

 

 

 

地熱発電の革新技術に向けRodatherm 社が3,800万ドルを調達

熱スタートアップのRodatherm Energyは、ステルス状態からのローンチにあわせて、Evok Innovationsが主導し、TDK Ventures、トヨタベンチャーズ、Tech Energy Venturesが参加するシリーズAラウンドで3,800万ドルを調達した。今回の資金をもとに、ユタ州で2026年末までに1.8メガワット規模のパイロットプラントを建設する計画で、発電された電力はUtah Associated Municipal Power Systemsが購入する予定。Rodathermの技術は、Fervo EnergyやSage Geosystems、Quaiseといった競合他社とは一線を画す。同社は、水ではなく冷媒を充填した鋼製ボアホールを用いた閉ループ型の熱交換システムを採用しており、この設計により、従来の水ベースの方式と比較して50%高い効率を実現できると主張する。さらに、冷媒循環により水使用量を最小限に抑え、異物や砂利の除去フィルターも不要になる。ただし、この閉ループ構造には掘削や設置にかかるコストが高くなるという課題もあり、その効率性がコストに見合うかどうかは、ユタ州でのパイロット運用後に明らかになる見込みだ。 

 

CIMB、PingPongと提携でASEAN内の越境決済を強化 

マレーシアの大手金融機関 CIMB Group Holdings Berhadは、中国の決済企業PingPong Global Holding Limitedとの提携を発表し、ASEAN域内の越境決済体制を強化する。両社が締結した覚書は戦略的パートナーシップの第一歩であり、PingPongASEAN地域におけるCIMBの越境決済ソリューション・パートナーとして位置づけられる。CIMBの銀行インフラとPingPongの国際ネットワークを統合することで、企業に対し、迅速・安全・効率的な決済サービスを提供することを狙う。協業はまずマレーシアから始動し、その後インドネシア、シンガポール、タイ、カンボジアといった主要市場へ段階的に展開される計画である。 

 

 

 

AmogyとA*STAR、アンモニア利用ソリューション加速で提携 

アンモニア発電ソリューションを手がけるAmogyと、シンガポールの主要公的研究開発機関である科学技術研究庁(A*STAR)は、アンモニアベース技術の開発・導入に関する共同調査・協力を開始した。この提携は、シンガポール・グリーンプラン2030およびシンガポールの国家水素戦略を支援するもので、両社は今後、ジュロン島におけるアンモニア発電システムの実証試験の機会を模索する。Amogyが独自開発する同システムは、先進触媒を用いてアンモニアを効率的に水素へ分解し、その水素を燃料電池やエンジンに供給して電力を生成する仕組みだ。この技術は化石燃料に代わる拡張性の高い低・ゼロカーボン手段となる可能性を秘めており、今後数年間で急拡大が見込まれるシンガポールのデータセンター産業にまず注力する計画だという。同産業は継続的な電力需要を抱えており、クリーンエネルギー導入の課題が大きい。一方でA*STARは、安全性と基準に関する専門知識の提供やコストと持続可能性の評価、さらにこの電力変換システムを安全かつ効果的に拡大するための新技術の開発を通じて支援を行う計画だ。 

 

複数の日本企業、カルナータカ州へのさらなる投資を計画

先日訪日したインド南部カルナータカ州のM.B.パティル大・中規模産業・インフラ開発相率いる代表団が、複数の日本企業から同州へ合計454,000万ドルの投資を確保したという。カルナータカ州は、過去に日本と韓国への訪問により既に約72万ドルの投資誘致に成功しており、東アジア企業による同州の産業環境への継続的な関心が示される中、今回の投資は特に自動車、鉄鋼、製造業などの分野において、同産業エコシステムの強化に貢献すると期待されている。主要プロジェクトとして、車両およびエンジン生産能力の増強を目的とした同州におけるホンダの事業拡張計画、さらに住友商事とMukand Sumiによる新たな製鉄所設立の共同提案などが議論された。この新製鉄所設立計画は雇用創出と地域サプライチェーン構築の促進を目的とするもの。なお、パティル氏は、インドに進出している日本企業の半数以上が既にカルナータカ州で事業を展開していることを強調し、同州が日本の投資先として戦略的に優れている点、そして好ましい政策、インフラ、熟練労働力を有している点を指摘している。 

 

IBMとBharatGen、インド特化型LLMで国内AI導入を推進

汎用AIモデルは、インドの多様な人口の違いへの対応に苦労することが多いという。この課題解決に向け、IBMBharatGenが提携を発表、インドの言語的・文化的多様性に特化した大規模言語モデル(LLM)とマルチモーダルAIシステムを開発することで、同国におけるAI導入を加速するというこれらのモデルは、教育、医療、銀行、農業、市民サービスなどの分野に適用され、学生の学習体験の向上から医療・金融サービスへのアクセス拡大に至るまで、社会的課題の解決に活用される。これらのモデルは、外国のAIシステムに依存するのではなく、「主権的」かつインドに焦点を当てて設計され、現地のニーズに合わせて最適化されている。また、この協力関係では責任あるAIの活用を重視し、強力なデータガバナンス、倫理的保護措置、文化的配慮を実践している。そして、スケーラブルでありながら地域に即したAIソリューションを創出することで、AIをより包括的で公平、かつ利用しやすいものとし、インドのデジタル変革を広く支援するとともに、同国のAIイノベーションにおけるリーダーシップ強化を目指す。 

植木 このみ
About the Author

植木 このみ

オックスフォード本社を拠点に、日本ならびにアジア大手企業を対象としたマーケティング事業を統括する。2020年より海外エコシステムの最新情報を日本語で提供する「イノベーション・インサイト」を執筆。また欧州におけるイベント企画・運営も担当。

ラフバラー大学にて国際経営学修士号を取得後、ロンドンの日系企業でEMEA在日本企業の経営ビジネス戦略構築をサポートした経験を持つ。

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