『カーボン管理プラットフォームのSweep、資金調達』『英国、世界的な暗号資産技術のハブを目指す』『ヤンマー、蘭ELEOの株式を取得』『月面ロボットへの挑戦』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第104回」をお届けします。
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このニュースレターでは、日本企業のグローバル展開、新規事業開拓に役立つ欧州の最新イノベーション、エコシステム、テクノロジー情報を、毎週ピックアップして現地から配信しています。
カーボン管理プラットフォームのSweep、資金調達
企業のESG責任への注目が高まる中、企業のサステナビリティへの取り組みを支援するスタートアップ企業は多額の投資を引き付けている。その一例として、カーボン管理プラットフォームを提供するフランスの
Sweepが最近シリーズBラウンドで7273万ドルを調達した。今回の資金調達は、2021年12月に同社が2000万ドルを調達したわずか数カ月後に行われ、この分野の成長とSweepのソリューションへの信頼を実証している。Sweepは、顧客(従業員、子会社、サプライヤー、ビジネスパートナーを含む)のScope 1-3 CO2排出量の測定、目標設定、削減、報告を支援するSaaSツールを提供している。また同社は、Saint GobainやJCDecauxといった多国籍企業を支援しており、排出量を一箇所で測定、追跡、削減し、環境コンプライアンスを高め、気候変動に伴うコストやリスクを予測するのに貢献している。今回の資金調達により、プラットフォームの機能の更なる拡大が期待できそうだ。
英国、世界的な暗号資産技術のハブを目指す
英国政府は、金融分野における暗号資産とその基盤となるブロックチェーン技術の可能性を探る詳細な計画を打ち出した。この計画では、ビットコインやその他のデジタルトークンの商用利用を妨げるボラリティを回避するために、「ステーブルコイン」(従来の通貨に対して安定した価値を持つように設計された暗号通貨)の創設を掲げている。また、政府は金融市場インフラの「サンドボックス」を設立し、企業がこの技術に関する実験を実現できるようにする予定である。この新技術の可能性を認識し今から規制することで、政府は財政の安定性と高い規制基準を確保し、この技術が信頼性高く安全に使われるようにするねらいがある。
ヤンマー、蘭ELEOの株式を取得
日本の重機・建機メーカーであるヤンマーは、急成長中のオランダのバッテリー技術メーカー
ELEOの株式の過半数を取得したことを発表した。ヤンマーは、ELEOのモジュール式電池技術を取り入れることで、オフロード車向けの電動パワートレイン機能をさらに強化することを計画している。今回の出資により、ヤンマーはエンドユーザーの過酷な使用環境に対応した革新的な技術を実現できる。なお、ヤンマーグループ入り後も、ELEOはオランダにある現在の拠点で、自社ブランドによる独立した事業体として運営を継続し、さらなる技術力の強化と事業成長の加速に注力していく。
月面ロボットへの挑戦
月の極は、水やその他の物質が存在する可能性があり、将来の宇宙探査の魅力的なターゲットとして注目されている。このため、欧州宇宙機関と欧州宇宙資源イノベーションセンターは、12チームが月の資源探査ロボットを開発する「
ESA-ESRIC 宇宙資源チャレンジ」を開催した。第一期では、欧州およびカナダの著名な学術組織や産業界から5台のロボットが受賞し、これにはスイス連邦工科大学チューリッヒ校とチューリッヒ大学がパートナーシップのもとで開発したロボットなどが含まれた。受賞した5チームにはそれぞれ75,000ユーロ(約82,000ドル)の契約金が支払われ、9月に開催される次のコンテストに進むことができる。

植木 このみ
Open Innovation Group, Intralink Limited
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