『英国、エネルギー移行で韓国と更なる連携へ』、『DOTS、農業に革新をもたらす電気光学センサーを開発』、『タイピングやマウスの使い方で、職場でのストレスを検知』、『ブロックチェーンのLayerZero Labs、1.2億ドル調達』、『Oshi Health、胃腸ケアの規模拡大に向け3,000万ドル調達』、『リチウム抽出スタートアップEnergyX、5,000万ドル調達』、『フィンテックSoft Space、JCBなどから3,150万ドルを調達』、『シンガポール発EEaaS、TablePointerが資金調達』を取り上げた「イノベーションインサイト:第27回」をお届けします。 
英国、エネルギー移行で韓国と更なる連携へ
今週、英国と韓国は、再生可能エネルギーと原子力を通じたエネルギー移行に関する共同声明を発表した。韓国を訪問した英グラント・シャップス・エネルギー・安全保障相は、韓国の洋上風力発電エンジニアリング契約の60%を英国企業が占める一方、韓国も既に英国の洋上風力産業を支えるプロジェクトに投資している点を強調した上で、エネルギー移行においてこれまで以上に緊密に協力していく姿勢を示した。また、韓国産業通商資源部(MOTIE)のイ・チャンヤン長官とともに、30年以上にわたるパートナーシップ強化や、安全基準や規制を含む民間原子力発電の推進についても共同で合意した。なお、今回のシャップス氏の韓国訪問は、再生可能エネルギー分野における英国での投資機会や、他国が実現を目指す化石燃料からのエネルギー移行を、専門知識を持つ英国がいかに支援できるかをデモンストレーションすることを目的としている。 
DOTS、農業に革新をもたらす電気光学センサーを開発
硝酸塩は、植物の生育に重要な栄養素であるものの、土壌中に過剰量が含まれると、環境や人体に悪影響を及ぼす可能性がある。そんな中、イスラエルのDOTS (Data Of The Soil)が開発する電気光学センサーと情報システムは、土壌データを継続的に監視し、詳細で、ダイナミックな硝酸塩濃度の画像を提供することで、農家の肥料を与えるタイミングの最適化や、肥料の過剰使用の防止に貢献している。DOTSは既に、国内のトマト温室で、作物にダメージを与えることなく、30%の肥料節約を生み出すことができることを実証済みだ。これにより、時間、費用、資源を節約するだけでなく、地下水の汚染や二酸化炭素、亜酸化窒素の排出を防ぐこともできる。DOTSはまず、約250億ドル規模の灌漑農業をターゲットとした上で、将来的には、農家の施肥・灌漑システムと連携し、リアルタイムの硝酸塩測定に基づく完全自動施肥の実現に取り組む方針だという。 
タイピングやマウスの使い方で、職場でのストレスを検知
従業員の3人に1人が職場のストレスに悩まされている、という状況を抱えるスイス。オフィスでの慢性的なストレスを早期に防ぎ、その状況を改善するため、スイス連邦工科大学チューリッヒ校の研究者が、人がパソコン上でどのようにタイピングしたり、マウスを動かすかを把握することで、ストレスを検知する画期的な方法を開発した。初期の調査によると、ストレスを感じている社員は、マウスを動かす回数が多く、正確さに欠ける一方、リラックスしている社員は、より短く、直接的なルートを取ることがわかっている。また、ストレスを感じている社員は、文字入力の際にミスをすることが多く、何度も短い間を取りながら書き続ける傾向がある。研究チームは現在、特定グループの職場での行動や、心拍データをアプリを通じて記録しながら、主観的なストレスレベルに関してフィードバックを受けることでモデル改良を行なっており、その結果は年内に発表される予定だ。

ブロックチェーンのLayerZero Labs、1.2億ドル調達
カナダ発、ブロックチェーン・プロトコルの相互通信支援技術を構築するLayerZero Labsが、Andreesen Horowitzの一部門であるa16z crypto主導、OKX Ventures、Samsung Next、Sequoia Capitalなど、33の投資家が参加した資金ラウンドで1億2,000万ドルを調達した。無数のブロックチェーンの相互運用性とクロスチェーンメッセージングを可能にするLayerZeroは、分散型アプリケーション(dApps)が複数のブロックチェーンにまたがって機能するために必要な基礎インフラを提供する。テストネットで3万件以上、メインネットで3,500件以上の契約を持ち、1万件以上のアプリケーションと数十万人のエンドユーザーを抱える。このプロトコルは、Sushiswap、Uniswapといった世界最大の分散型取引所(DEX)を含む、オンチェーンアプリケーションで利用されている。バンクーバーと香港にオフィスを構える同社は、今回調達した資金を、人員増強、およびAPAC地域におけるプレゼンスの強化に充てる予定だ。 
Oshi Health、胃腸ケアの規模拡大に向け3,000万ドル調達
ニューヨーク拠点のデジタル胃腸医療スタートアップOshi Healthは、Koch Disruptive Technologies(KDT)が主導し、CVS Health Venturesやタケダ・デジタル・ベンチャーズなどの既存投資家が参加するシリーズBラウンドで、3,000万ドルを調達した。Oshi Healthは、消化器系の問題を抱える患者に対し、消化器専門医、行動医学専門医、栄養士、ヘルスコーチなどへのバーチャルアクセスを提供する。また、クローン病、過敏性腸症候群(IBS)、潰瘍性大腸炎などの消化器系疾患もサポートする。患者は同社の症状追跡ツールを利用したり、プロバイダーとインスタントメッセージのやり取りもできる。先月、CVS Healthが所有する保険会社AetnaがOshi Healthとのパートナーシップを発表し、フロリダ、メイン、マサチューセッツ、オハイオ、ペンシルバニア、テキサスでAetnaの該当プランに加入している企業は、ネットワーク内プロバイダとしてOshi Healthにアクセスできるようになった。同社は今回調達した資金で、米国内の臨床チームとパートナー提携を拡大する予定だ。 
リチウム抽出スタートアップEnergyX、5,000万ドル調達
テキサス発、効率的に塩田からリチウムを抽出・処理する方法を開発するEnergy Exploration Technologies Inc. (EnergyX) が、GM Ventures主導のシリーズBラウンドで5,000万ドルを調達した。リチウムは電気自動車用バッテリーに欠かせない成分であり、GMはEnergyXの技術開発を支援し、同社プロジェクトからリチウムを購入する第一選択権を持つことになる。EnergyXは、南米の「リチウムトライアングル」(アルゼンチン、ボリビア、チリの一部に広がる塩田地帯、世界のリチウム埋蔵量の半分以上が確認されている)で、既存のプロセスよりもはるかに少ないエネルギー、水、土地で、塩水中のリチウムを90%以上回収できることを実証した。EnergyXの技術により、GMは北米でのリチウム採掘におけるコスト削減と、採掘に伴う環境への影響を最小限に抑えられると確信している。EnergyXは、今回の調達資金で、北米と南米に5つの大規模な実証プラントを建設する予定。今後のEV産業の発展、米国内のリチウム供給において極めて重要な役割を果たすであろう。

フィンテックSoft Space、JCBなどから3,150万ドルを調達
マレーシア発 fintech-as-a-serviceのSoft Spaceは、Southern Capital Groupが主導するシリーズBエクステンションラウンドにて3,150万ドルを調達した。同ラウンドには、マレーシアのRHL Venturesと韓国のKB Investmentが共同管理するHibiscus Fundや、昨年1月に同社と資本業務提携を発表したJCBなどが参加した。2012年に設立されたSoft Spaceは、モバイルPOSソリューションと、カスタマイズ可能なオープンAPIを提供している。これにより、サードパーティがプラットフォームに統合する付加価値機能を容易に開発することができるようになる。さらに、ブランドが独自のデジタルウォレットを作成するためのホワイトラベルサービスや、CRMソリューション、カスタマーリワードプログラムなどの付加価値ソリューションも提供する。なお、Soft Spaceの決済ソリューションは、既に日本、欧州、オセアニア、米州を含む世界23市場で、70以上の金融機関やパートナーに採用されている。 
シンガポール発EEaaS、TablePointerが資金調達
Energy-efficiency-as-a-serviceを提供するTablePointerが、仏電力大手ENGIEなどから300万ドルを調達した。同社は、IoT やAI を活用し、初期費用を必要としないEEaaSモデルを通じてソリューションの導入、監視、保守を管理することで、企業のエネルギー効率化を支援する。これにより、事業者はエネルギー節約、カーボンフットプリント削減、運用パフォーマンス向上などの恩恵を受けることができる。現在は特に食品・飲料業界向けに、プラグアンドプレイのエネルギー効率化技術を提供している。なお、今回の調達資金は、新機能や製品モジュールの追加、成長市場への参入のために活用される予定だ。
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