『気候変動に左右されないホップでビール生産、Ekonoke』、『Asda、Wayveと自動運転による食料品配送を試験的に実施』、『3D印刷のQuantica、1,400万ユーロを調達』、『スマートシティテックMiovision、約1.9億ドル調達』、『光中継ネットワークKepler、9,200万ドル調達』、『心不全治療のBioVentrix、4,850万ドル調達』、『Mito Health 、AI活用予防医療ソリューションで資金調達』、『東南アジアのサステナブルテック投資、世界平均を上回る成長』を取り上げた「イノベーションインサイト:第28回」をお届けします。 
気候変動に左右されないホップでビール生産、Ekonoke
気候変動は、私たちの生活のさまざまな側面に影響を及ぼしているが、その中には実はビールの供給も含まれる。ビールに苦味や香りを添えるホップは、水を大量に消費する作物で、気候変動による頻繁な干ばつや疫病の被害を被ってしまう。この問題を解決するべく、スペイン発Ekonokeは、従来の屋外栽培に比べ、水の使用量を95%近く削減できる、再生可能エネルギーベースの屋内水耕栽培システムを開発している。同社の垂直農場は、LEDライトを使用し、湿度からCO2レベルまであらゆるパラメーターを測定する多数のセンサーを備えている。また、害虫が発生しないよう衛生管理も徹底しており、殺虫剤を使用する必要がない。Ekonokeは、既に飲料メーカーのHijos de Rivera(別名Estrella Galicia)と提携し、このホップを使用した限定IPAを展開している。今後は生産量を拡大し、収穫後の自動化プロセスも検証する予定だ。 
Asda、Wayveと自動運転による食料品配送を試験的に実施
英国第2位の規模を誇るオンラインスーパーのAsdaは、ロンドンを拠点とする自律走行車技術のWayveと提携し、自動運転車を活用してウエストロンドンのスーパーから食料品を配達するという。両社は72,000世帯、17万人以上の住民を対象とした1年間のトライアルで本技術を検証する予定で、利用者は、通常通りにオンラインで食料品配達の注文を行い、無作為に選ばれた注文を自動運転車両が配達することになる。Wayveの「AV2.0」ソリューションは、機械学習を利用して車両を訓練し、あらゆる環境での運転方法を経験から学習させるため、あらかじめ設定されたルートに制限されることなく、今まで行ったことのない場所でも運転することができる。なお、同社によると、これは欧州最大の都市型自律食料品配達の検証実験であり、既にMicrosoftやOcado Groupなどから約2億5,800万ドルの資金を調達している。 
3D印刷のQuantica、1,400万ユーロを調達
ベルリンを拠点とするQuantica が、そのアディティブ・マニュファクチャリング技術で、1,400万ユーロのシリーズAラウンドを完了した。Quanticaの主要技術は、NovoJetと呼ばれるマルチマテリアル3D印刷ヘッド技術で、ユーザーは複数の高性能素材を1つのオブジェクトに組み合わせて、より豊かな外観や機能を実現するとともに、後処理に必要な時間を短縮することができる。このヘッドは、特に超粘性材料を必要とする用途に適しており、需要が高い歯科業界では、競合他社が提供するものよりも本物らしく、カスタマイズされた歯科模型を印刷する。NovoJetはこれまでに、生体材料、半透明、耐熱性材料、伸縮性ポリマーなどでもテストされてきた。同社は既にベルリン、バルセロナ、ケンブリッジにチームを置いているが、今回の資金調達で商業化計画をさらに加速させる予定で、2023年末までに最初の3Dプリンターを出荷することを目標としている。

スマートシティテックMiovision、約1.9億ドル調達
カナダの交通最適化スタートアップMiovisionが、交通信号優先システムOpticomを製造するGlobal Traffic Technologies (GTT) を、1億700万ドルで買収した。この買収は、Telus Ventures、Maverix Private Equity、Export Development Canada(EDC)からの約1億9,400万ドルの資金調達で可能となった。Miovisionは、コンピュータビジョン、AI、高度な分析を組み合わせ、交通渋滞と車両排出量の削減を支援するソリューションを提供、コミュニティが交通ネットワークを遠隔で管理・追跡するためのソフトウェアとハードウェアの両方を製造している。買収したGTTのOpticomは、青信号優先を提供することで、公共交通機関の定時性を向上させるだけでなく、緊急車両の対応時間を最大25%、また交差点におけるそれらの衝突事故を最大70%削減できるという。今回の資金調達及び買収で、今後北米10万近くの交差点においてMiovisionとGTTの技術が使用される予定だ。 
光中継ネットワークKepler、9,200万ドル調達
光データ通信用の衛星配置構築に挑むトロント発Kepler Communicationsが、シリーズCラウンドで9,200万ドルを調達した。最新の開発により衛星打ち上げコストは飛躍的に低下し、宇宙へのアクセスは向上したが、地球圏外での接続は依然としてコストがかかり、困難で、一貫性に欠けるという。Keplerは、高速でオープン、また開発者に優しいネットワークを提供し、宇宙空間のあらゆる資産と地球、いずれは火星やその先まで、「そのまま使える」接続を実現しようとしている。同社は、データ中継のためのインターネット交換ポイントとして機能するように設計されたネットワークインフラで、宇宙空間を繋ぐ軌道上の通信の合理化を図る。同社は今回調達した資金で、2024年に光データ中継インフラを立ち上げ、既存の無線周波数ネットワークを補完する。 
心不全治療のBioVentrix、4,850万ドル調達
カリフォルニア発BioVentrixが、心臓から送り出される血液量が少なくなる虚血性心不全の治療法で、FDA(米食品医薬品局)からの承認を受けるため、Andera Partners主導の最新ラウンドで4,850万ドルを調達した。同社のRevivent TCシステムは、心臓発作による激しい損傷から回復する際、左心室を整形し、ポンプ機能を改善するよう設計されている。拡張し、傷ついた心臓の壁に一連の小さなアンカーを埋め込むことで筋肉を引き締め、血液をより効率的に体に送り出す。この方法は、欧州でCEマークを取得し、FDAからブレークスルー指定を受けている。今年初め、FDAは、心不全のハイリスク患者へのインプラントの継続使用を認める拡大アクセスプログラムに青信号を出したばかり。今回の資金調達でBioVentrixは、今年末に予定している市販前承認申請と、米国での販売準備を進めていくという。

東南アジアのサステナブルテック投資、世界平均を上回る成長
Robocashグループの発表によると、2020年以降、東南アジアにおけるサステナビリティテック企業数の前年比平均増加率は15.2%で、世界平均の11.0%を4.3ポイント上回っていることがわかった。また、2022年に同分野で設立された73,200万社のうち、2,135社が東南アジアを拠点としている。これは、世界全体の2.9%以上を占めるに至っている。国別に見てみると、シンガポールが723社、インドネシアが402社で設立社数をリードする一方、その成長率では、ベトナムが年平均22.2%という最高の数値を誇っている。さらに、これら企業の資金調達の年間増加率も、全世界平均の28.2%を40ポイント以上上回る、71.1%を記録しているという。なお、この分析には、シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア、カンボジア、フィリピン、ベトナム、ラオス、ミャンマー、ブルネイでのデータが使用されている。 
Mito Health 、AI活用予防医療ソリューションで資金調達
シンガポール発ヘルステック企業の Mito Health は、予防医療向けのAI搭載ソリューション開発に向け、オーバーサブスクライブのプレシードラウンドで約127万ドルを調達した。Mito Health社は、医学的な専門知識をAIで補強し、診断結果やウェアラブルデータに基づいて、利用者にパーソナライズされた健康プランを提供する。同社は、この最適化により、障害や病気を発症するまでの年数を延ばすことに重点を置き、毎年の健康診断やサプリメントを定期的に取り入れている人だけでなく、健康維持のための本格的な計画を求めている健康志向の高い層に向けてサービスを発信している。なお、今回の調達資金は、人材強化と商品開発の加速に活用される予定だ。
植木 このみ Open Innovation Group, Intralink Limited イントラリンクについて イントラリンクは、日本大手企業の海外イノベーション・新規事業開発、海外ベンチャー企業のアジア事業開発、海外政府機関の経済開発をサポートするグローバルなコンサルティング会社です。