『富士通、西CESGAと量子産業発展に向けた拠点設立』、『新型ロボット発表のSynSense、中国企業から資金調達』、『ガラスや鉄に代わる木材製品開発のWoodoo、3,100万ドル調達』、『クリーンエネルギー開発Avalanche Energy、4,000万ドル調達』、『スマート電気パネルのSPAN、9,600万ドル調達』、『地表面温度データ監視Hydrosat、2,000万ドル調達』、『プログラム合成データのBetterdataが資金調達』、『EVバッテリー交換サービスの Oyikaが、875万ドルを調達』を取り上げた「イノベーションインサイト:第29回」をお届けします。 
富士通、西CESGAと量子産業発展に向けた拠点設立
先週、富士通とスペインの科学技術研究機関であるSupercomputing Center of Galicia(CESGA)が、西ガリシア州での量子拠点設立に関する覚書を締結した。今年9月からの運営を目指す本施設は、欧州内、さらに国際的な量子産業の発展加速を目的に、量子技術の活用を推進する。CESGAは、本提携の第一ステップとして、富士通の34量子ビット量子コンピュータシミュレータをベースにしたクラスターシステムや、英国発Oxford Quantum Circuitsが開発した32量子ビットの量子コンピュータで構成するシステムを導入する。さらに両社は、量子及び量子関連技術の可能性と、その実用的な利点を実証するため、量子技術への戦略的な投資を行うガリシア州の代表企業とともに、実践的な3つのユースケースに取り組む予定だ。 
新型ロボット発表のSynSense、中国企業から資金調達
スイス発SynSenseは、中国VCのMaxvisionとRunWooから戦略的投資の一環として、数千万規模に及ぶ資金を調達した。SynSenseは、人間の脳の働きと同じような方法で学習し、ロボット、自律走行、スマートホーム、スマートトイ、セキュリティなどの領域で活用されるニューロモーフィックチップの開発に特化している。同社はこの資金を活用し、自律飛行や障害物回避などの複雑な視覚アプリケーションを低消費電力でサポートするために設計された、DYNAP-CNN2 チップの更なる開発を進めていく。チューリッヒ拠点を維持しながらも、2020年に本社を中国の成都に移したSynSenseは、プログラミングが可能で、インテリジェントな玩具を販売する中国のQunYuとともに、今月初めに中国汕頭で開催された国際玩具博覧会にて初のニューロモーフィックプログラマブルロボットを発表したばかり。このロボットは、人体認識、視覚認識、擬態が可能であり、ロボットと人間の関わり方に変化をもたらしている。 
ガラスや鉄に代わる木材製品開発のWoodoo、3,100万ドル調達
革、ガラス、建材などの炭素集約型製品に代わる木材由来の製品を提供するフランス発Woodooが、3,100万ドルを調達した。同社は、腐った板や低級木材製品からリグニンと呼ばれる天然の結合化合物を抽出し、木材の特性を変える独自のバイオフィラーに置き換える方法を開発しており、リグニンの除去量に応じて、ガラスの代替品としてCO2排出量を7倍削減する自動車内装向け半透明木材、カーボンフットプリントを30倍削減する高級ファッション向け非動物性代替革、建設用アルミニウムより220倍近く低いカーボンフットプリントを残す持続可能な建設用素材などを製造することができる。なお、今回の調達資金は、初期段階にある建設資材の開発加速とともに、2つの工場の生産能力とチーム規模の増強に充てられる計画だ。

クリーンエネルギー開発Avalanche Energy、4,000万ドル調達
シアトル発Avalanche Energyが、Lowercarbon Capitalが主導し、Founders FundとToyota Venturesなどが参加したシリーズAラウンドで4,000万ドルを調達した。同社は、無限の電力を生み出す可能性があることから、クリーンエネルギーの「聖杯」とも呼ばれる、核融合発電の小規模ソリューションを開発している。原子をぶつけ合うことで融合し、パワーを放出することで生み出される核融合エネルギーだが、Avalancheが開発するシステムは、デスクトップに収まる大きな靴箱サイズ。そのマイクロ核融合炉は、長距離トラック輸送や航空産業などで水素燃料電池と競合する可能性がある上、小規模な電力網に接続することも可能だ。例えばトヨタ自動車は、水素燃料製造装置を動かすため、核融合炉を使うことに関心を持っているという。Avalancheは、200キロボルトで動作する第2世代核融合装置で、技術的なマイルストーンに達したが、今後半年から1年かけて300キロボルトまで到達することを目指している。 
スマート電気パネルのSPAN、9,600万ドル調達
サンフランシスコ拠点、スマート電気パネルのスタートアップSPANは、Wellington Managementが主導し、Fifth Wall、A/O PropTech、AmazonのAlexa Fundなどが参加したシリーズB2で9,600万ドルの資金調達を行い、同社の総資金調達額は2億3,100万ドルに達したと発表した。Kenmoreなどの大手家電ブランドや、Sunrunなどの大手太陽光発電・蓄電池プロバイダーとの提携を通じて、SPANは業界で最も統合された全家庭電化技術を構築し続けている。今回の資金調達により同社は、研究開発能力を加速させ、主要家電製品、スマートホーム機器、グリッドインテグレーションなど、新たなカテゴリーへの提携拡大を継続、家庭用電化製品分野でのマーケットシェア拡大を狙う。今回の資金調達により、SPANは家庭全体のエネルギー管理のためのエコシステムを拡張し、2030年までに1,000万世帯の電化を目指す電化分野でのリーダーシップ強化を推進する。 
地表面温度データ監視Hydrosat、2,000万ドル調達
赤外線センサー搭載の人工衛星で地表面温度データ収集を目指す、ワシントンD.C.拠点の気候テックHydrosatが、Statkraft Venturesが主導する最新の資金調達ラウンドで2,000万ドルを調達した。近年、気候変動によって加速された水ストレスが、世界の食料供給を混乱させている上、巨大干ばつ、山火事、大嵐などの異常気象は、地域社会や経済に脅威を与えているのが現状だ。赤外線データによるモニタリングは、頻度が低く、画像解像度が粗いため、限定的なものだった。Hydrosatはこれにチャレンジすべく、水ストレスの発生を追跡するための頻繁で高解像度データに基づく監視機能で、政府機関、農業関連企業、保険会社、緊急対応チームに、インサイトをリアルタイム提供している。同社は最近、米空軍のイノベーション部門を通じて120万ドルの契約を獲得し、米航空宇宙情報センターのニーズに合った形で地表面データを提供する予定だ。

プログラム合成データのBetterdataが資金調達
シンガポールを拠点に、プログラム合成データを活用してプライバシー保護に貢献するBetterdataが、155万ドルのシード資金を獲得した。Betterdataは、第1回Tokyo Financial Award 2022で準グランプリを受賞した企業だ。2021年に設立された同社は、リアルデータを、実際のリアルデータのように振る舞う無限の合成データに変換することで、データ共有を瞬時に、より安全に行う。この合成データは実在の個人に属するものではなく、プライバシー規制を100%遵守した上で、グローバルに共有することができるという。なお、今回の資金調達により、Betterdataは製品発売や、シングルテーブル、マルチテーブル、時系列データセットのサポートを含むプログラマブル合成データ技術スタックの強化を図る予定だ。 
EVバッテリー交換サービスの Oyikaが、875万ドルを調達
スマートバッテリー交換ソリューションのOyikaが、最新のシリーズBラウンドで、タイのスマートエネルギー企業Banpu Nextの傘下であるBPIN Investmentから875万ドルの新規資金を調達した。同社は現在、インドネシアとカンボジアの交換ステーションで、電動バイク用のフル充電バッテリーを提供しており、東南アジアにおける主要なEVサービスプロバイダーになることを目標としている。Oyikaの契約プランは、都度払い、週次前払い、月次後払いなどから選択することができ、利用者はOyikaの交換ステーションにて、1分以内というスピードで、消耗したバッテリーを満充電のバッテリーに交換することができる。このバッテリーはブランドにとらわれず、東南アジアで普及しているほとんどの電動バイクブランド及びモデルに対応している上、IoTを活用して、最適なパフォーマンスと安全性のために遠隔で監視することができる。これにより、盗難にあった電動バイクを追跡し、遠隔操作で電源を切ることもできるため、盗難防止にも効果的だ。
植木 このみ Open Innovation Group, Intralink Limited イントラリンクについて イントラリンクは、日本大手企業の海外イノベーション・新規事業開発、海外ベンチャー企業のアジア事業開発、海外政府機関の経済開発をサポートするグローバルなコンサルティング会社です。