『高度な自律ロボット、アジアを中心に需要増加 』『英バッテリーメーカーNexeon、生産拡大に向け1.7億ドルを調達 』『EITモビリティースケールアッププログラムにて13社選出 』『中国製薬大手、メドテック蘭Xeltisに1,500万ユーロ出資』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第123回」をお届けします。
高度な自律ロボット、アジアを中心に需要増加
自律ロボットは、労働力不足に対する解決策のひとつとして認識されつつあり、また、
危険な環境下で人間の代わりの労働力となることで、従業員の安全性向上にも貢献している。
Interact Analysisによると、特に製造や物流などの用途で強い需要が見込まれ、2025年末までに約210万台の自律ロボットが出荷される見通しだという。しかし、そのパフォーマンス向上には複雑な環境をナビゲートする能力が鍵となり、モーションコントロールや空間的知能に関する高度な技術が必要とされる。そんな中、複数の欧州スタートアップが注目を集めている。例えば、ドイツ発
Toposensは先日、衝突回避のための3D超音波エコロケーションセンサーを発表した。またこのようなソリューションはアジアからも多くの関心を集めており、自律ロボットや家電向けの空間的知能を開発する英国発
SLAMcore は、今年5月にPresidio Ventures 、Samsung Ventures、Toyota Ventures、Yamato Holdingsなどのアジア企業から出資を受けたばかりだ。なお、SLAMcoreは
弊社をアジア事業開拓の実行パートナー企業に任命し、今後アジアでの商業的機会を模索、ならびに最終的な取引確保を目指している。
英バッテリーメーカーNexeon、生産拡大に向け1.7億ドルを調達
バッテリーメーカーは、より安価で高密度な、さらに軽量かつ高性能なバッテリーの開発を常に目指している。英国発の
Nexeonは、エネルギー密度を高めつつ、より長いサイクル寿命を保つサイズを維持したリチウムイオンバッテリー用のシリコン製アノードを開発している。同社は先日、韓国のPEであるDaishin Private EquityとShinhan Investmentsが参加したラウンドで計1億7000万ドルの資金調達に成功したばかりで、今年1月に行われたSK Chemicalsによる出資及び戦略的パートナーシップ締結の
発表に続く形となった。これらの世界的に知名度の高い投資家やパートナーの存在は、同社のテクノロジーや能力への力強い支持母体となっており、今回の調達資金は同社の生産能力拡大にあてられる予定だ。なお、Nexeonは、横浜にも開発拠点を設けている。
EITモビリティースケールアッププログラムにて13社選出
欧州最大のイノベーションエコシステムである欧州イノベーション・技術機構(EIT)は先日、
Urban Mobility Scale-up Programmeに参加する13社のスタートアップを選出した。応募があった100社の中から選ばれた13社は今後、スタートアップの知名度向上を重視したパスA、または欧州内の都市でパイロットプロジェクトを実施し、実際の環境においてソリューションを実装するパスBのいずれかのプログラムに参加することになる。当プログラムでは、1社につき2万5000ユーロ以上に相当する支援が提供され、将来的な投資家、顧客、またパートナー企業への知名度向上が期待される。なお、採用されたプロジェクトの例として、以下のものが挙げられる。
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Isarsoft(ドイツ):監視カメラの映像を分析することで、ハンブルグ高架鉄道(Hamburger Hochbahn)が公共交通機関の乗車率をリアルタイムに掌握
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SOLUM(スペイン):マドリード市による自転車や電動スクーターなどのマイクロモビリティ向け駐輪スペースを導入
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PhySens(ドイツ):充電ステーションと車両の間でEV充電プロセスのデータ収集、表示、評価、検証を可能にするシステムの設計
中国製薬大手、メドテック蘭Xeltisに1,500万ユーロ出資
今日、心血管疾患や慢性腎臓病の患者数が増加する中、その多くが繰り返しの処置、合併症、長期に渡る薬物投与に悩まされている。その問題を解決するため、オランダ発
Xeltis はまだ臨床段階ではあるものの、組織の修復を可能にする微細構造に成形された超分子ポリマーをベースに、患者自身の自然治癒力を生かして心臓弁や血管を自然に形成できるようにする修復デバイスを開発している。この技術に関心を持った中国の製薬大手Grand Pharmaceutical Groupが先日、同社に1,500万ユーロの出資を行った。これにより、Grand PharmaはXeltisの修復型血液透析装置に加え、中華圏においてその他適応症向けに開発された製品の独占的な開発、生産、商業化の権利、さらに先制的交渉権を獲得したことになる。Grand Pharmaのような大企業が臨床段階の製品に出資したことは、同デバイスが持つ大きな商業的可能性を物語っていると言えるだろう。

植木 このみ
Open Innovation Group, Intralink Limited
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