『ルネサス、仏5GプロバイダーSequansを買収へ』、『半導体のTSMC、工場建設で独に100億ユーロ投資』、『蘭Meatable、培養豚肉ソリューションで3,500万ドル調達』、『LGとClearbrook、1億ドルのVCファンド設立』、『AIチップ開発のTenstorrent、1億ドル調達』、『CO2をファッションバッグに変えるNewlight、約1.2億ドル調達』、『BintanGo、220万ドルの資金調達でライブコマースに進出』、『Gentari、グリーンモビリティでBMWグループと提携』を取り上げた「イノベーションインサイト:第44回」をお届けします。

ルネサス、仏5GプロバイダーSequansを買収へ
東京に本社を置く半導体サプライヤーのルネサス エレクトロニクスが今週、5G/4Gセルラー向けのIoTソリューションプロバイダーである仏Sequansを、約2億4,900万ドル相当で買収する旨の基本合意書を締結した。ルネサスは、2024年の第1四半期までに株式取得を完了する見込みだ。2003年に設立されたSequansは、IoT機器向けのチップセットやモジュールを設計・開発するファブレス半導体メーカー。ルネサスとSequansは2020年から協業しているが、今回の買収により、Sequansのセルラー・コネクティビティ製品およびIPがルネサスのコアラインナップに統合され、進化する顧客ニーズに対応するために必要なルネサスのIoT能力が強化される。なお、スマートメーター、資産追跡システム、スマートホーム、スマートシティ、コネクテッドビークルなどに対する顧客の需要増加により、セルラーIoTデバイスの数は毎年10%以上増加すると予想されている。 
半導体のTSMC、工場建設で独に100億ユーロ投資
台湾の半導体メーカーTSMCは今週、ドイツに100億ユーロ以上を投資し、マイクロチップ工場を建設・運営すると発表した。その対価として、TSMCは50億ユーロの補助金を受け取ることになる。同工場は、Bosch、Infineon、NXP などの欧州企業とともに建設・運営され、各社が10%ずつ株式を保有する。特にドイツの自動車産業向けのチップを生産する予定で、その建設作業は2024年後半に始まり、生産開始は2027年を想定している。ドイツは最近、世界最大のチップメーカー数社の誘致に成功している。Intelは今年6月、EU域内のマイクロチップ生産能力を2030年までに世界市場の20%まで引き上げることを目的に、EUを半導体関連企業にとって魅力的で、競争力のある地域にするため、430億ユーロの資金を投入するEU Chips Actの一環として、ドイツにチップ工場を建設するために300億ユーロを投資すると発表したばかりだ。 
蘭Meatable、培養豚肉ソリューションで3,500万ドル調達
オランダ発Meatableが、その培養豚肉ソリューションにより3,500万ドルのシリーズB資金を確保し、その資金調達総額も9,500万ドルに達した。Dealroomによると、同社は同じくオランダを拠点とするMosa Meatに次いで、欧州で2番目に大規模な培養食肉企業となった。Meatableは、豚の幹細胞を使って培養肉を生産しており、従来の農法よりも30倍速い、わずか8日間で本物の筋肉と脂肪細胞を作り出すことができると主張する。同社はこの資金をもとに、プロセスの規模を拡大し、生産コストの最適化と商業的な立ち上げを加速させる。またシンガポールでの事業開始も目標としており、2024年からソーセージや豚肉団子を含むMeatable製品の一部がレストランや小売店で販売される予定だ。そのために、シンガポールで唯一商業認可を受けた培養肉製造業者であるEsco Aster、および植物由来の精肉業者であるLove Handleと商業生産で提携し、製品ラインナップの開発を進めていくという。

LGとClearbrook、1億ドルのVCファンド設立
LG Electronicsと世界的な資産運用会社であるClearbrook, LLCは、人と地球に前向きな変化をもたらすソリューション開発企業を支援する戦略的提携を発表した。両社は1億ドル以上を目標とするVCファンド、NOVA Prime Fundで協力することになる。NOVA Prime Fundは、持続可能エネルギー、デジタルヘルス、イマーシブ(没入型)AI、未来の産業に集中するミッション駆動型企業への投資に重点を置く。同ファンドはシリコンバレーを拠点とし、国内外の市場に投資する。ファンドの目的は、LG Electronicsの北米イノベーション・センターであるLG NOVAが主催するMission for the Future Programに参加する企業の中から、より良い未来を築くためのイノベーションを進める企業に投資することである。LG NOVAは、外部からLGにイノベーションをもたらすために編成されたチームで、Santa Claraを拠点とする。 
AIチップ開発のTenstorrent、1億ドル調達
シリコンバレー発、AIチップ開発のTenstorrentが1億ドルを調達した。今回の投資は、Hyundai Motor Groupから3,000万ドル、Hyundai傘下のKiaから2,000万ドル、残り5,000万ドルをSamsung Catalyst Fund、Fidelity Venturesとその他投資家から調達。同社はこれまでに2億3,450万ドルを確保しており、前ラウンドでの評価額は10億ドルだった。Tenstorrentは、クラウドとエッジの両方向けにスケーラブルなAIアクセラレータを構築、NvidiaのGPUとの競合を目指し、近年人気を集めつつあるコンピュータチップ向けオープン標準「RISC-V 」CPUを開発している。Hyundai Motorは昨年、独自の半導体開発グループを立ち上げたが、今回の契約で、Tenstorrentの設計を将来のHyundai、Kia、Genesis車に採用すると発表した。Tenstorrentは今年初め、スマートテレビに同社のチップを搭載する契約をLGと結んだばかり。 
CO2をファッションバッグに変えるNewlight、約1.2億ドル調達
地球温暖化と並んで、世界中で増え続けるプラスチック廃棄物への解決策となる技術を開発する、南カリフォルニア発Newlightが、GenZero主導、 Oxy Low Carbon VenturesとCharter Next Generation参加のラウンドで1億2,500万ドルを調達した。同社は海洋に生息する微生物を使って、温室効果ガスを生物学的にポリマーに変換する。微生物が温室効果ガスを食べ、PHB(ポリヒドロキシ酪酸)と呼ばれる分子を細胞内で成長させる。このPHBポリマーは一度精製されると溶融や成形が可能で、様々な素材機能を提供できるという。Newlight独自の高性能バイオマテリアルAirCarbonは、PHBの天然で高性能な特質を活かし、プラスチックを大量に消費する産業の脱炭素化に利用されている。現在Newlightは、AirCarbonベース素材をフードサービス、ファッション、自動車産業など世界5,000ヶ所以上に供給している。

BintanGo、220万ドルの資金調達でライブコマースに進出
インドネシアのデジタルコンテンツ制作者向けにツールを提供するBintanGoは、Investible、Contents Technologiesなどが参加したシードエクステンションラウンドで220万ドルを調達した。これにより、累計資金調達総額は480万ドルに達した。同社は、2021年6月に50万ドルのプレシードラウンド、2022年4月に210万ドルのシードラウンドを終えている。現在、BintanGoはコンテンツ制作者に生産性と収益化ツール、金融ソリューションを提供しているが、今回の投資により、ライブコマース・プラットフォームにサービスを拡大する予定だ。また中央ジャカルタで15のライブコマーススタジオを運営している同社は、今後TikTok、Instagram、Shopee、YouTubeなどのプラットフォームでライブコマースの実現を目指す。 
Gentari、グリーンモビリティでBMWグループと提携
マレーシアのクリーンエネルギー・ソリューション・プロバイダーであるGentari Sdn Bhdは、完全子会社であるGentari Green Mobility Sdn Bhdを通じてBMWマレーシアと覚書を交わし、グリーン・モビリティ・サービスおよびソリューション、ならびに再生可能エネルギーの導入を検討する。両社は今後、BMWのディーラー網を含む様々な施設へのEV充電インフラの設置、マレーシア市場における様々なEVフリート・ソリューション、BMWのEVオーナー向けの付加価値サービス(EV充電サブスクリプション・プラン、電気スタンド、ポータブル充電、モバイル充電サービスなど)、再生可能エネルギー・インフラの共同展開などの分野での協力の可能性を探るため、提携していく予定だ。
植木 このみ Corporate Innovation Services, Intralink Limited イントラリンクについて イントラリンクは、日本大手企業の海外イノベーション・新規事業開発、海外ベンチャー企業のアジア事業開発、海外政府機関の経済開発をサポートするグローバルなコンサルティング会社です。