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イノベーションインサイト:第45回

イノベーションインサイト:第45回

『今後10年間で大きく成長が見込まれる3つのセクター』、『独Kraftblock、蓄熱技術で 2,000万ユーロを調達』、『マイクロプラスチックろ過技術のMatterが資金調達』、『Anthropic、通信業界向けLLM構築で1億ドル調達』、『グリーン水素のVerdagy、7,300万ドル調達』、『炭素会計プラットフォームPersefoni、5,000万ドル調達』、『資産管理プラットフォームEndowus、3,500万ドル調達』、『廃棄物管理会社Blue Planet、マレーシアPEより資金調達』を取り上げた「イノベーションインサイト:第45回」をお届けします。

今後10年間で大きく成長が見込まれる3つのセクター

欧州エコシステムは、私たちが抱える基本的な課題を解決するため、ディープテックを活用するスタートアップに道を開いている。とはいえ、どのセクターがその先頭を走っているのだろうか。フィンランドのVC、Maki.vcの創業パートナーであるIlkka Kivimäki氏は、今後10年間で欧州は量子、フードテック、エネルギーの3つの産業で主要プレーヤーになると予測している。量子分野では、EUは量子フラッグシップ・プログラムのような研究活動を通じてエコシステムを支援しており、IQMPasqalOxford Quantum Circuitsなど、成功を収めた企業が既に数多く存在している。2022年に63億ドルの資金を調達したフードテックも成長が見込まれる分野で、Onego BioYnsectMeatableなどが良く名の知れたスタートアップとして挙げられる。また世界的にリードする再エネ分野を中心に、NorthvoltGreen Hydrogen SystemsFuseboxなどがEUの脱炭素化に向けた取り組みを支えている。さらにKivimäki氏は、今後10年間は研究、オープンなコラボレーション、そしてグリーン・トランジションが欧州のハイテク産業の原動力になると強調した。

独Kraftblock、蓄熱技術で 2,000万ユーロを調達

ドイツ発エネルギー貯蔵技術のKraftblockが、Shell Venturesが主導する最新のシリーズBラウンドで2,000万ユーロを調達した。Kraftblockは、重工業から発生する余剰熱を蓄える蓄熱技術「廃熱リサイクルシステム」を開発しており、その貯蔵ソリューションは1,300℃までの温度に耐えることができる上、1m³あたり最大1.2MWhの貯蔵が可能。同社のコンテナは15,000回以上も繰り返し使用でき、これは40年以上の耐久年数に相当する。同ソリューションは環境にも優しく、その貯蔵システムに使用されている素材は、最大85%がリサイクル材料で構成されている。Kraftblockは今回の資金調達により、従業員数と生産能力を拡大する。これにより、欧州と東アジア全域の鉄鋼やガラスといったエネルギー集約型産業への対応が可能になる。また、新たなパートナーシップを活用し、米国や中南米での事業機会を模索する。

マイクロプラスチックろ過技術のMatterが資金調達

英国発Matterが、マイクロプラスチックを回収、再生、リサイクルするためのソリューション開発に向け、1,000万ドルのシリーズA資金を調達した。同社の試算によると、私たちが1回洗濯するたびに、最大70万本のプラスチック繊維が洗濯機から水路に放出されている。Matterが初期製品として開発したGulpは、エンドユーザーがこれを洗濯機に取り付けることで、衣類のマイクロプラスチック繊維が水路に流れ込むのを防ぐことができる。同社は現在、特許取得済みの技術を家庭用および業務用洗濯機に直接組み込むため、産業界とも協力している。特にフランスでは、2025年1月までに新しい家庭用・業務用洗濯機にマイクロファイバー・フィルターを搭載することを義務付ける法律が施行されるため、Matterのソリューションは、クライアント企業の長期的なビジネス展開にも役立つと期待されている。なお、今回の調達資金により、このマイクロプラスチックろ過技術は、商業用と産業用の両方に展開される予定だ。

Anthropic、通信業界向けLLM構築で1億ドル調達

AIスタートアップのAnthropicは、5月の大規模なシリーズCラウンド、SAPからの支援に続き、韓国の通信大手SKテレコム(SKT)から1億ドルを追加調達し、調達総額が15億ドルを超えた。SKTは、今回の投資に関して、Anthropicが通信業界のニーズを満たす大規模言語モデル(LLM)を開発するための戦略的パートナーシップの一環として位置付けている。Anthropicは、ChatGPTの競合Claudeアシスタントを含む最先端のAI技術と、SKTの電気通信と韓国語LLMに関する深い専門知識を組み合わせ、韓国語、英語、ドイツ語、日本語、アラビア語、スペイン語をサポートするモデルを構築する。このモデルは、カスタマーサービス、マーケティング、セールスからインタラクティブな消費者向けアプリケーションまで、さまざまな通信業界特有のユースケースに合わせて微調整される予定だ。

グリーン水素のVerdagy、7,300万ドル調達

水素電解槽を開発する Verdagyは、Shell New VenturesTemasekが共同主導し、Toppan Ventures、Samsungのベンチャーキャピタル部門、肥料大手Yaraも参加したシリーズBラウンドで、7,300万ドルを調達した。グリーン水素製造を通じた脱炭素化需要が高まる中、Verdagyはこの資金で20MWのeDynamic電解槽を商業化する計画だ。このeDynamic電解槽は、水電解技術のダークホースとされる3平方メートルの陰イオン交換膜(AEM)セルを使用し、他技術よりも高い電流密度で運転することが可能。加えて、極めて低コストだという。Verdagyは、石油・ガス、アンモニア、鉄鋼、電子燃料など、重工業分野の顧客をターゲットとする予定で、現在、カリフォルニア州モスランディングのパイロットプラントで、2.8平方メートルのセルを3つ使った、世界最大規模500kWバージョンの電解槽をテスト中だ。

炭素会計プラットフォームPersefoni、5,000万ドル調達

アリゾナ拠点のクライメートテックPersefoni は、TPG RiseClearvision VenturesENEOS Innovation Partners、その他投資家を含むシリーズC-1ラウンドで5,000万ドルを調達した。Persefoniは、企業や金融機関にとって重要な役割を果たす気候管理・会計プラットフォームを提供しているが、サステイナビリティの観点からも、Workiva、Deloitte、Bain & Co., を含むパートナー企業から大きな信頼を集めている。2020年1月の設立以来、同社はその中核にAI技術を統合しており、GPTとLLMモデルにおける最近の躍進は、クライメートテックにおける新時代の到来を告げるとも言われている。間近に迫ったPersefoniGPTのリリースで、その主導権を握ることを目指す。今回の資金調達により、PersefoniはAI開発を強化し、同分野におけるトップクラスのソリューション提供に専念する。またジェネレーティブAIに注力することで、運用コストの大幅な削減も見込んでいる。

資産管理プラットフォームEndowus、3,500万ドル調達

Endowusは2021年と2022年に行われた資金調達に続き、Citi VenturesやMUFG Innovation Partnersを含む新規投資家から3,500万ドルを調達した。これで、今までの調達総額が9,500万ドルに達した。同社はプラットフォーム上で10億SGD以上の年金資産を運用している。さらには個人資産もカバーしており、退職後など、あらゆるライフステージにおける顧客にサービスを提供する。また、Central Provident Fund(CPF:中央積立基金)のために、完全自動化されたデジタルプロセスを作成する技術スタックを社内で構築している。今後、CPFで実現したプロセスを香港の強制積立基金(MPF)に応用することを計画している。同社によると、Endowusはロボアドバイザーではなく、トップクラスの運用成績を誇る実績あるファンドマネージャーを利用することで、機関投資家向けの株式クラスファンドをより個人投資家向けに展開する意図がある。今回の資金調達は、現在10万人以上の顧客にサービスを提供する主要市場のシンガポールと香港における事業拡大に充てられる予定だ。同社は現在、グループ全体で50億ドル以上の資産と4,000万ドル以上の貯蓄を運用している。

廃棄物管理会社Blue Planet、マレーシアPEより資金調達

シンガポールを拠点とする廃棄物管理会社のBlue Planetは、マレーシアのPE、Bintang Capital Partnersから非公開の資金を調達した。2017年設立の同社は、廃棄物の収集、輸送、分別、処理、また加工サービスを提供している。同社は現在、インド、マレーシア、シンガポール、そして英国で事業を展開しているが、今回得た資金を活用して、運営チームと廃棄物管理技術を拡大し、既存および新興市場の両方において、より幅広い種類の廃棄物に対応する予定だ。Blue Planetは、毎日15,200トンの廃棄物を処理しており、有機物から毎日10,000立方メートルのバイオガスを生産、800エーカー以上のレガシー埋立地を市民のために回収していると報告している。なお、昨年は330万トンの廃棄物を処理し、200万トンのCO2を削減したという。 植木 このみ Corporate Innovation Services, Intralink Limited イントラリンクについて イントラリンクは、日本大手企業の海外イノベーション・新規事業開発、海外ベンチャー企業のアジア事業開発、海外政府機関の経済開発をサポートするグローバルなコンサルティング会社です。

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