『三井不動産がMaaS Globalとともに実証実験を開始』、『ブロックチェーンによるサプライチェーン透明性向上技術』、『東京ガスが提携する「チャレンジャーエナジーサプライヤー」』、『2020年:DACH地域にとって大ヒットの年』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第39回」をお届けします。(
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三井不動産がMaaS Globalとともに実証実験を開始
ヘルシンキを拠点に世界初のMaaSオペレーターとして名の知られている
MaaS Globalが、三井不動産とともに、モビリティサービスを不動産と融合させるための実証実験を日本で開始することを発表した。2015年に設立されたMaaS Globalが運営するアプリ『
Whim』は、サブスクリプション契約で自転車シェアリング、カーシェアリング、バス、タクシーなどへの容易なアクセスを提供し、好きなときに好きな手段で好きな場所への移動を実現する、オール・インクルーシブ型MaaSソリューションとして活用されてきた。その革新的な技術とアイデアは、世界中の大手企業から注目を集め、BP Ventures、三菱商事、トヨタファイナンシャルサービス、あいおいニッセイ同和損保、デンソーなども出資を行なってきた。今回の共同プロジェクトにおいては、三井不動産のパートナー企業とともに、千葉県柏市柏の葉及び東京エリアの複数の同社マンションを対象に、日々の生活における移動ニーズに対して、使い勝手の良いモビリティをサブスクリプションとして提供することを目指し、人々がどのように異なる交通手段を利用するかについて、理解を深めていくという。
ブロックチェーンによるサプライチェーン透明性向上技術
ロンドン発
Circulorは、リサイクルと資源抽出にブロックチェーンを活用する技術で、主要投資家であるJaguar Land RoverのCVC、
InMotionをはじめとする自動車メーカーからの注目を集めている。同社のソフトウェアは、GPS、生体認証、QRコードを組み合わせて、原産地からサプライヤーまでのグローバルサプライチェーン全体で原材料を追跡することができるため、製造材料がどこから来ているのか、またそれらの材料が持続可能なまたは倫理的な方法で抽出されてきたかどうか、などトレーサビリティの確認が可能となる。Circulorは既にブロックチェーンを使用して、電気自動車のバッテリーに使用される鉱物のトレーサビリティを高める取り組みを行なっており、クライアントのサプライチェーンにおける説明責任をサポートする技術として期待されている。またJLRによると、追跡技術だけでなく、Circulorの提供するデジタルプロセスにより、供給ネットワークの二酸化炭素排出量を評価することができるという。今後ブロックチェーンがサステイナビリティ向上にどのように活用されていくか、期待が高まる。
東京ガスが提携する『チャレンジャーエナジーサプライヤー』
英
Octopus Energyが、東京ガスとの戦略的合意の上、同社からの2億ドルの出資と日本国内での合弁会社設立を発表した。Octopusは、その革新的なAIとデータベース型プラットフォーム、及び再生可能エネルギー事業を組み合わせ、顧客毎に最適なメニューを低価格で提供しており、5年間のオペレーションを通して、英国内エネルギー供給市場の5%のシェアと180万世帯の利用者を獲得してきた。またE.Onをはじめとする英国企業や豪Origin Energy、韓Hanwha Corporationともライセンス契約を結ぶ上、近年は米国やドイツにも進出しており、その利用者総数は世界で1700万人に上る。東京ガスは、Octopus との提携により、お客様一人ひとりに合わせた価値創造・提供し、利用者のより良いライフスタイルの実現を目指すとしている。なお、日本国内における合弁事業開始は2021年秋に予定されている。
2020年:DACH地域にとって大ヒットの年
先日発表された欧州テックハブトップ20にランクインしたベルリン、
ミュンヘン、チューリヒ、マインツ、デュッセルドルフ、ウィーンをはじめとしたドイツ、スイス、オーストリアの3国(DACH)にとって、2020年は過去最高の年となったと言えるだろう。四半期毎の投資額では、4〜6月期において史上最高額で、1〜3月期の倍となる26億ドルの投資を受け、ローカルVCも前年比25%増の約23億ドルの資金調達に成功した。近年のトレンドとして、シードレベルでは、DACHを中心とした欧州ファンドからの投資が目立つものの、レイトステージに移ると米国やアジアからの出資が顕著に見られると言う。実際、先月にはソフトバンクが独電動スクーターのTierに2.5億ドルの出資を行なったばかりだ。また同地域でも、欧州全体の流れと同様に、ヘルステック・ライフサイエンスの伸びが期待されている。2020年は、スイスのSophia GeneticsやArvelle Therapeuticsが大型の資金調達、独BioNTechが製薬大手PfizerとともにCOVID-19のワクチン開発に成功した。一方、来年以降は欧州最大の経済とヘルスケアシステムを有するドイツにおいて、可決されたばかり遠隔医療と処方箋の償還を許可する新しい法律を理由に、デジタルヘルススタートアップの更なる活躍が見込まれている。
植木このみ
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