『伊藤忠、太陽光パネルリサイクルのRosiと資本業務提携 』、『海外投資家の注目を集めるリズボンエコシステム 』、『サウンドシミュレーションのTreble Technologiesが資金調達 』、『トロント発GoBolt、「グリーン物流」掲げ5500万ドル調達 』、『宇宙データ分析のSlingshot Aerospace、4085万ドル調達 』、『米エネ大手NRG Energy、Vivint Smart Homeを28億ドルで買収』、『シンガポール と仏VC、東南アジア向けの新ファンド設立へ』、『インドネシアのグリーンテック企業Fairatmos、シード資金を調達』を取り上げた「イノベーションインサイト:第10回」をお届けします。
伊藤忠、太陽光パネルリサイクルのRosiと資本業務提携
日本でもFIT制度の導入により2012年頃から普及してきた太陽光発電だが、20年程度という寿命により、2030年代にはパネルの大量廃棄が発生すると予測されている。そんな中、伊藤忠が太陽光パネルリサイクルのビジネス推進・拡大に向け、フランス発Rosi との提携を発表した。Rosiの先進的なリサイクル技術は、パネルに含有される素材の中から銀・銅・シリコンを化学処理によって純度高く回収することで、パネルの廃棄量及び廃棄コストを大幅に削減できる。既に伊藤忠の出資・提携先である独立系電力会社「i Grid Solutions」と太陽光発電開発会社「Clean Energy Connect」がパネル回収に協力する予定だ。これにより、伊藤忠は太陽光パネルリサイクルチェーンの確立を目指すとともに、今後も産業廃棄物処理業者やリサイクルに実績のある企業との提携を模索していくという。 
海外投資家の注目を集めるリズボンエコシステム
Dealroomの最新レポートによると、1000社以上のスタートアップ、80社以上のスケールアップ、さらに2社のユニコーンが拠点を置くリズボンのエコシステムが急成長しているという。2022年は特に好調で、リスボンに所在するテック企業は今年現在までに3億3300万ユーロを調達しており、VC投資総額としては過去最高、2021年通年と比較しても3.2倍となった。この記録的な成長は、EV充電ネットワークのPowerDot や、ゲーム開発のFRVRによるシリーズCラウンドなど、レイターステージのラウンドに加え、2022年の資金調達総額の80%以上を占める海外投資家からの投資に後押しされている。またリスボン発のユニコーンであるソフトウェア構築プラットフォームOutSystemsとコンタクトセンターソフトウェアTalkdeskは、南欧の最も価値のある企業でもある。産業別では、フードテックとヘルス、次いでフィンテックの注目度が高まっているという。 
サウンドシミュレーションのTreble Technologiesが資金調達
実世界のアプリケーション向けサウンドシミュレーションに特化したディープテック企業のTreble Technologiesが、800万ユーロを調達した。このうち、550万ユーロはNOVA(Saint-Gobainのベンチャー部門)などが参加したシード資金である一方、250万ユーロは欧州イノベーション会議の助成金として提供された。アイスランド発の同社は、仮想環境におけるサウンドシミュレーションと、空間音響向けのクラウドベースのバーチャルサウンドプラットフォームを開発しており、このソリューションにより、建設、自動車、家電、メタバースなど複数の業界で、より良い「音」体験の設計が可能になるという。まずは建築業界に特化し、その後、より幅広い業界に対応できるようプラットフォームの機能を拡張していく予定だ。なお、今回の調達資金は、来年初頭にリリースが予定されているプラットフォームの開発・展開に充てられる。 
トロント発GoBolt、「グリーン物流」掲げ5500万ドル調達
物流スタートアップGoBoltが、世界のIKEA店舗のほとんどを運営するIngka Groupなどが参加したシリーズCラウンドで5500万ドルを調達した。トロントを拠点とするGoBoltは、倉庫保管からピックアンドパックサービス、配送、ラストマイル配送などを提供。下請け業者を使わず、全てGoBoltの従業員により同社独自の技術で運営している。顧客の多くは同国アパレルブランドFrank and OakなどのD2Cビジネスで、顧客からの注文が入ると、自社倉庫の商品を梱包して出荷し、顧客の玄関先まで直接配送、リアルタイムで注文の追跡も可能だ。同社は、CO2排出量の4分の1以上を占める物流業界において、サステイナビリティを優先し他社と差別化を図っている。2023年末までに、配送の90%以上をEVトラックで行う目標を掲げ、EV充電ネットワークとインフラ構築に、少なくとも4,000万ドルを費やす予定だ。また、カーボンニュートラルを超え「カーボンマイナス」になることを視野に入れ、キャッシュフローの一部を炭素回収と森林再生プロジェクトに投資するという。 
宇宙データ分析のSlingshot Aerospace、4085万ドル調達
カリフォルニア州とテキサス州に拠点を置き、宇宙開発の安全性を高めるためのデータアナリティクスを構築するSlingshot Aerospaceは、オーバーサブスクライブのシリーズA2ラウンドで4085万ドルを調達した。Sway Venturesが主導したこのラウンドには、ATX Venture Partners や Lockheed Martin Venturesなどが参加した。Slingshotのプロダクト群には、衛星オペレータが衛星操作をコーディネートし、他のオペレータと通信して衝突を回避するために使用される宇宙交通管制ソフトウェアツールが含まれる。また、米スペースフォース(宇宙軍)との契約により、軍人訓練用の仮想宇宙環境「スペースデジタルツイン」を開発した。昨今の地政学的不安から、防衛予算は増加する傾向にあり、投資家の宇宙への関心は経済不況でも揺らいでいない。Slingshotは、政府独自のシステム開発に固執することなく、一般企業からのサービスを取り扱うオフィスを設立した米国宇宙軍に対し、宇宙領域における認識サービスが提供できるかどうか、可能性を見出すつもりだ。 
米エネ大手NRG Energy、Vivint Smart Homeを28億ドルで買収
テキサスのエネルギー大手NRG Energy Inc.は、ユタ州拠点のホームセキュリティ企業Vivint Smart Homeを28億ドルで買収することで合意したと発表し、より多くのアメリカの家庭で、エネルギーサービス企業の存在感が大きくなることを示唆した。この買収は2023年の第1四半期に完了する予定で、NRGは自社のホームエネルギーサービスをVivintのホームシステムに統合する意向だ。また、NRGは、スマートフォン向けアプリを含むVivintのバックエンド技術にもアクセスすることで、ホームセキュリティやオートメーションなどの製品ラインアップを拡大する機会も得ることになる。統合後は、北米で約740万人の顧客を持つ住宅ソリューションプロバイダーとなり、市場をリードするブランドと補完的な販売チャネルを通じて、大きなクロスセルの機会が見込まれている。この買収により、両社の消費者重視のビジネス戦略が加速されると同時に、より持続可能でシームレスに繋がるソリューションによる、エネルギーとスマートホームへの取り組みに、消費者の期待も高まりそうだ。 
シンガポールと仏VC、東南アジア向けの新ファンド設立へ
2020年に設立されたシンガポール発VCのIterativeは、東南アジアスタートアップへの投資を継続するために、5500万ドルの2号ファンドをクローズした。同社はこの2年間で、Spenmo(Tiger Global主導のBラウンドで8500万ドル調達)、GoZayaan(パキスタンでの展開に向けた提携先を買収)、Propseller(シリーズAにて1200万ドルを調達)、Sendhelper(PropertyGuruによる買収)などをはじめとする65社以上のポートフォリオを構築し、その企業価値総額は12億ドルに達している。同様に、仏VCで弊社イノベーションネットワークパートナーでもあるPartechも、アーリーステージ企業を対象とした1億2700万ドルの第4号ファンド(Partech Entrepreneur IV)をクローズした。欧米だけでなく、東南アジアも対象となる同ファンドは、30万〜300万ユーロの規模でプレシード及びシードステージの約50社に出資する予定だ。 
インドネシアのグリーンテック企業Fairatmos、シード資金を調達
インドネシアに拠点を置くグリーンテック企業のFairatmosが、最新のシードラウンドで450万ドルを調達した。同社は炭素排出量計算機、カーボンクレジット市場、専門家へのアクセスなどを提供し、企業の環境リスク低減を支援する。また、新しい環境プロジェクトと機関投資家、個人投資家のマッチングも行っている。同社によると、インドネシアで炭素分離回収の取り組みを行う40社以上のプロジェクト開発者と連携しているという。今回のシードラウンドは、GoToグループが支援するGo-Venturesと、地元のエネルギー企業Toba Bara Sejahtraの投資部門であるKreasi Terbarukan TBSが主導し、Vertex Ventures Southeast AsiaやVertex Ventures Indiaが参加した。
植木 このみ Open Innovation Group, Intralink Limited イントラリンクについて イントラリンクは、海外ベンチャー企業のアジア事業開発、日本大手企業に対する海外オープンイノベーション支援、海外政府機関の経済開発をサポートするグローバルなコンサルティング会社です。