『EU、世界初となる炭素税の導入を決定 』、『純シリコンアノード開発の LeydenJar、EIBから融資 』、『バレンシア、ネットゼロに向け街灯でEVを充電 』、『太陽光発電導入における米企業ランキング』、『会計処理自動化のVic.ai、5200万ドル調達』、『米Amgen、希少疾患バイオテックHorizonを278億ドルで買収』、『Aktivolabs、ヘルスケアアプリで700万ドルを確保』、『オンライン通販のShopBack、Fラウンドで2億ドル調達』を取り上げた「イノベーションインサイト:第11回」をお届けします。
EU、世界初となる炭素税の導入を決定
EUは今週、域内市場に入る炭素集約型製品に対する世界初の課税制度となる炭素国境調整メカニズム(Carbon Border Adjustment Mechanism :CBAM)に関して、合意に達した。CBAMは、まずは鉄鋼、セメント、アルミニウム、肥料、電力、水素などの輸入品に適用される。EUにこれらの製品を輸入する企業は、生産国における気候変動に関する法律に求められる説明義務を果たさない限り、製品に含まれる炭素排出量をカバーする証明書を購入しなければならなくなる。CBAMは、高い気候基準を促進することを目的に、2023年10月1日から開始される。なお、移行期間中は対象となる輸入品に関する報告義務のみが発生するが、その期間など、詳細に関する議論はこれからとなる。また、有機化学やプラスチックなどその他産業や製品を含めるかどうかも、移行期間終了までに評価するという。 
純シリコンアノード開発の LeydenJar、EIBから融資
リチウムイオン電池のエネルギー密度を高める純シリコンアノードを開発する蘭LeydenJar Technologiesが、欧州投資銀行から3000万ユーロの融資枠を確保したと発表した。同社は昨年、シリーズAラウンドにて2200万ユーロの資金調達を行なったばかりだ。LeydenJarの純シリコンアノードは、現在一般的に使用されるグラファイトに比べて70%以上のエネルギーをバッテリーに蓄えることができる上、さらに10倍の薄さを実現するため、家電や自動車などをはじめとする幅広い領域での応用が期待されている。またその製造プロセスは、CO2を85%削減する。なお、今回の調達資金により、同社は6000万ユーロ相当の生産設備を建設し、100 MWh 規模の生産能力とともに2026年の稼働開始を目指すという。 
バレンシア、ネットゼロに向け街灯でEVを充電
スペイン南東部に位置するバレンシアは、2030年までにカーボンニュートラルを目指す欧州100都市のうちの1つだ。この野心的な目標を達成するために、最新技術の導入が必要となる中、バレンシアは、スマートシティソリューションの開発と拡大を目的としたEU後援プロジェクト「MAtchUP」のおかげで、エネルギー効率に関する試験場となっている。MAtchUpプログラムのもと、バレンシアはエネルギー、モビリティ、ICTに関する計52の革新的なアクションを開発する予定だ。また重点分野のひとつであるスマート街頭により、市内の街灯がEV充電にも活用されている。同市はこの取り組みの成功を受けて、街灯向けEV充電器を当初の12基から150基以上に増設することを決定している。またこの充電器は、持続可能なモビリティを実現するだけでなく、約2,500ユーロという安価な設置コストで、5万ユーロを必要とする従来のEV充電器から大幅なコスト削減をもたらすという。 
太陽光発電導入における米企業ランキング
Solar Energy Industries Associationの最新レポートによると、クリーンエネルギーで事業を行う米国企業は、国内に設置されたすべての太陽光発電容量の14%、合計19ギガワット以上を担っているという。太陽光発電所からの電力の直接購入と自社敷地内の太陽光発電所を通じて、最も多くの太陽光発電力を活用している上位10社のうち、サステイナビリティの大きな責任を負い、大量の電力を消費するデータセンターにクリーンエネルギーを調達する必要があるハイテク企業がトップを占めている。Facebookの親会社であるMetaは、今年6月時点で3,500メガワット以上を供給して1位、これは2位にランクインするAmazonの3倍にあたる。3位はアップル、マイクロソフトは5位。小売業のWalmartとTargetもそれぞれ4位、6位につけ、記録的な太陽光電力を購入している。太陽光発電の低コスト化と、100%再生可能エネルギー利用に対するコミットメントにより、企業の太陽光発電調達は今後も急増すると予想される。 
会計処理自動化のVic.ai、5200万ドル調達
会計自動化プラットフォームを提供するVic.ai,が、GGV CapitalとICONIQ Growthが主導したシリーズCラウンドで5200万ドルを調達したと発表した。ニューヨーク拠点の同社プラットフォームは、主に請求書処理において機械学習によるアルゴリズムを活用して、一定の信頼性を満たす請求書や経費を選択、承認者に自動送信する。また、請求書の承認プロセスにおけるステップ数を判断し、各ステップを確認する必要のある従業員を自動的に決定するプロセスも遂行する。同社は現在、HSB、Intercom、Armaninoなど60社の企業顧客を持ち、アクティブユーザー数は2021年比で280%増加した。Tipalti、Glean AI、Quadient傘下YayPayといった競合のいる売掛金管理プラットフォーム市場は2019年の19億ドルから2024年には31億ドルに成長すると推定されており、Vic.aiも他社との差別化強化のため技術開発とスタッフ増強への投資をする予定だ。 
米Amgen、希少疾患バイオテックHorizonを278億ドルで買収
カリフォルニア拠点の製薬大手Amgenは、アイルランドのバイオテック企業、Horizon Therapeuticsを278億ドルで買収すると発表した。2022年は226社ほどのバイオテック企業が約800億ドルで買収されてきたが、今回の買収は今年最大の製薬関連M&A案件となり、これによりAmgenは初めて希少疾病に進出する。希少疾患は患者が非常に少ないため、製薬会社に希少疾患開発への参入を促す手段として、それを対象とする医薬品には国立衛生研究所(NIH)から非常に多くの資金が提供される。また、希少な疾患であるため、保険会社が保険適用をする可能性が極めて高い。買収されたHorizonは、甲状腺眼症(TED)治療薬Tepezzaや慢性関節リウマチ治療薬Embrelを持つことから、特許失効に直面するAmgenにとって、事業経営の支えになると期待されている。 
Aktivolabs、ヘルスケアアプリで700万ドルを確保
シンガポールに拠点を置くインシュアテック企業のAktivolabsは、三井物産が400万ドルを出資した最新のシリーズAラウンドで、700万ドルを確保した。 2017年設立のAktivolabsは、デジタル介助ツールを用いて保険契約者の生活習慣を正すことで、その健康促進を支援している。同社が独自に開発したアルゴリズムを用いて「健康スコア」を作成し、運動や活動量、座っている時間、睡眠などを分析し、それらの活動が長期的な健康状態に及ぼす影響を測定する。同社のソリューションは、保険会社のみならず、再保険業、銀行業、各種大企業、また通信業界などにおいて、顧客の健康状態をリアルタイムに把握する手助けにもなる。 
オンライン通販のShopBack、Fラウンドで2億ドル調達
ShopBackは、オーバーサブスクライブのシリーズFラウンドで、オーストラリアの大手銀行、Westpac Banking Corporationからの3,000万ドルにのぼる戦略的投資を含む2億ドルを調達した。同社は2020年にTemasek、楽天、East Venturesから7500万ドルを調達している。 ShopBackは、アジア太平洋地域を代表するショッピング、またリワードのプラットフォームで、ユーザーがオンラインで買い物をする際に、参加加盟店よりボーナスキャッシュバックやリワードを得られる仕組みだ。2014年に設立された同プラットフォームは現在、東南アジア10ヶ国、オーストラリア、韓国、台湾まで展開している。 なお、今回調達した資金は、ユーザー向けの新しいショッピング関連サービスのローンチ、加盟店パートナー向けのグロースおよび決済ソリューションの開発などに充てられる予定だ。
植木 このみ Open Innovation Group, Intralink Limited イントラリンクについて イントラリンクは、海外ベンチャー企業のアジア事業開発、日本大手企業に対する海外オープンイノベーション支援、海外政府機関の経済開発をサポートするグローバルなコンサルティング会社です。