『Scale Cities:コネクテッドテックハブの誕生』、『製造業の持続可能性向上を実現する酵素とは?』、『最もパワフルな欧州VCはどこに?』、『垂直農業が秘めるパンデミック後の可能性』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第46回」をお届けします。
(
配信希望はこちらから)
このニュースレターでは、日本企業のグローバル展開、新規事業開拓に役立つ欧州の最新イノベーション、エコシステム、テクノロジー情報を、毎週ピックアップして現地から配信しています。
Scale Cities:コネクテッドテックハブの誕生
欧州13都市のローカルエコシステム支援組織が、欧州におけるコネクテッドテックハブ創出に向けて『
Scale Cities』の創設を発表した。現在の欧州スタートアップの企業価値トップ10のうち、7社が拠点を置くアムステルダム、ストックホルム、ベルリンなどをはじめとする13都市の政府主導エコシステムビルダーがそのネットワーク、経験、洞察などのベストプラクティスを共有し、共に成長を目指すことで、米国や中国に負けない真のテックハブを作り上げることを目指す。Scale Citiesの都市内で2000年以降に設立された企業の価値は、2015年以降だけで3.5倍も成長した結果、総額3500億ユーロにのぼり、この集合体となる同組織が与えるインパクトに期待が高まる。
製造業の持続可能性向上を実現する酵素とは?
ストックホルム発
EnginZymeが、細胞の自然な製造プロセスを模倣することにより、より少ないエネルギーと資源の使用を実現する技術で、同政府が支援するVCである
Industrifondenから、追加資金を調達した。近年、合成生物学の関連企業の活躍が多く見られる中、EnginZymeは醸造と発酵の古代技術によく似たプロセスで微生物中の酵素を使用する通常の技術とは異なり、大腸菌から必要な酵素を抽出し、輸送やあらゆる産業プロセスでの使用が容易な粉末材料として保存することを可能にする。同社は既にこの新しいプロセスを使用してCO2削減に取り組む複数の製薬・化粧品会社と提携しているが、今後はさらにその活用が期待される化学業界への進出を目指す。なお、今回の資金調達を通じて、商業用に製造を開始する予定。
最もパワフルな欧州VCはどこに?
今週、欧州で活動するペンチャーキャピタルに関する統計データが発表され、VCファンドの数だけでなく、AtomicoやHighland Europeの各8億ドル以上のメガファンド設置もあり、運用資産をベースとした『最も強力』なVCも英国に集中していることが分かった。またDACH地域では特定のセクターに焦点を当てた
A/O Proptech(不動産)、
Heal Capital(ヘルスケア)、
Future Energy Ventures(サステイナビリティ)などのVCが貢献し、過去2年間でローンチしたファンド数で欧州トップとなった。さらに弊社イノベーションネットワークの蘭
Rockstartもベネルクス内で欧州一となるディール数を記録した一方、これからの成長が期待される東欧地域でもハンガリーの
HIVenturesがたった1年で欧州トップとなる200件の投資を行い、その存在感を見せつけた。
垂直農業が秘めるパンデミック後の可能性
専門家によると、昨年から続くパンデミックにより、国や大都市が食料の輸入に頼るべきなのかという点に疑問を持ち始め、国際的な食料ネットワークにおける持続可能性への意識が高まっている。その中でも、特に垂直農業は人口密集地域への食料提供だけでなく、廃熱を使用してエネルギー面での貢献もできると判明しており、輸送コンテナの中で包括的な農業ソリューションを提供する英
LettUs Growによると、今後は垂直農業関連企業のビジネスモデルの多様化が見込まれるという。また最近は資源が乏しいものの、太陽光による電力発電が豊富な中近東などからの同分野への投資が集中しており、その関心の高さを証明するとともに、このような地での垂直農業技術の活用にも注目が集まっている。

植木 このみ
Open Innovation Group, Intralink Limited
イントラリンクについて
イントラリンクは、海外ベンチャー企業のアジア事業開発、日本大手企業に対する海外オープンイノベーション支援、海外政府機関の経済開発をサポートするグローバルなコンサルティング会社です。