『AI技術で自然災害の被害状況を自動判定』『インパクト投資の中心地、スウェーデン』『新しい床構造でコンクリートを75%削減』『デンマークのFieldSense、農家に優れた気象情報の提供』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第98回」をお届けします。
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このニュースレターでは、日本企業のグローバル展開、新規事業開拓に役立つ欧州の最新イノベーション、エコシステム、テクノロジー情報を、毎週ピックアップして現地から配信しています。
AI技術で自然災害の被害状況を自動判定
SOMPOホールディングス及びグループ会社とイスラエルのスタートアップ企業
GEOXとの提携により、イスラエル製の3D航空画像解析のAI技術が日本の自然災害による物的損害の評価に活用されることになった。3D衛星画像などの地理空間データ技術の進歩により、保険会社はこれまで考えられなかったような方法でデータを活用することができるようになっている。この提携では、GEOXのAIを活用したリスクアセスメントツールにより、自然災害の保険に加入している顧客により良いプロセスを提供することが可能になる。SOMPOホールディングスは以前からイスラエルのスタートアップのエコシステムに関心を持っており、今回の提携は同社のイスラエル子会社が同国で「イノベーションセンター」を運営することによって実現したものである。
インパクト投資の中心地、スウェーデン
欧州の主要イノベーションハブの1つであり、インパクト投資家の主要な目的地でもあるスウェーデンのスタートアップエコシステムは、2021年記録的に成長した。Dealroomのレポートによると、スウェーデンのスタートアップに対するVC投資は昨年だけで2倍以上に増え、2020年の36億ドルから88億ドルと過去最高を記録した。これは、大陸の成熟したスタートアップエコシステムに対するVCの関心が急上昇しているというトレンドを反映している。また、スウェーデンにおけるスタートアップへのインパクト投資は2020年の15億ドルから2021年には48億ドルと欧州のどの国よりも早く成長し、世界でも3番目の規模となる。スウェーデンのスタートアップは、金銭的リターンを生み出す可能性だけでなく、幅広い社会または環境に対するポジティブなインパクトを与える可能性も魅力的であることが示唆されている。
新しい床構造でコンクリートを75%削減
建設業界のネットゼロ目標達成に貢献する新しいシェル構造床のプロトタイプが開発された。コンクリートは水に次いで世界で最も多く消費される材料であり、その生産は世界のCO2排出量の7%以上を占めていることから、建設業がネットゼロへの道を歩み始める最も簡単な方法はコンクリートの使用量を減らすことだといわれている。そんな中、英国のバース大学、ケンブリッジ大学、ダンディー大学が設計した新しいアーチ型スタイルの床は、従来のフラットスラブ構造の床よりも75%少ないコンクリートで同じ荷重を支えることができ、建設業界の二酸化炭素排出量削減に貢献することが期待されている。この試作フロアは、
ACORN(Automating Concrete Construction)研究プロジェクトによって作成され、英国研究・イノベーション機構の資金援助を受けている。
デンマークのFieldSense、農家に優れた気象情報の提供
農業はデジタル化が進んでいる産業の一つであり、農家は日々の計画や運営にデータを活用するようになってきている。農業向け意思決定支援ツールを開発するデンマークのスタートアップ
FieldSenseは、資金提供を受けてアグテック気象ソリューションの拡張を加速している。同社が提供する超ローカル気象情報と予測により、農家は地域の微気象条件の変化をモニタリングし、それに基づいて行動できる。同社はこれまでに2000台以上の太陽電池式気象観測所を設置し、スカンジナビア、バルト海、北ドイツで強い存在感を示している。なお、革新的なアグテック・ソリューションに関心を持つのは欧州だけではなく、変革が強く求められる中国の農業分野も海外のアグテック・イノベーターに大きなチャンスをもたらしている。先日弊社上海オフィスが公開した
ブログでも、中国のアグテック業界に関する動向が取り上げられている。

植木 このみ
Open Innovation Group, Intralink Limited
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