『Quantum Motion、QC分野で英国過去最高額を調達』、『仏政府が期待する、2023年仏スタートアップトップ120』、『JLR 、自動運転特化のテックハブを欧州3ヶ所に開設』、『サイバーセキュリティのDeepwatch、1.8億ドルを調達』、『BCI の注目株、B・ゲイツやJ・ベゾスが出資するSynchron』、『PG&E、今夏2種類のVPPスキームを検証』、『Transcelestial、Airbus Venturesなどから1,000万ドル調達』、『ベトナム発GIMO、510万ドルを調達』を取り上げた「イノベーションインサイト:第20回」をお届けします。 
Quantum Motion、QC分野で英国過去最高額を調達
ロンドンを拠点に量子プロセッサーを開発するQuantum Motion Technologies が、Robert Bosch Venture CapitalやPorsche SEなどが参加した最新のシリーズBラウンドにて、英国量子コンピューター分野で史上最高の調達金額となる4200万ポンドを確保した。UCL及びオックスフォード大学のスピンアウトとして2017年に設立された同社は、最も一般的な超伝導体やトラップイオンではなく、シリコンベースの量子プロセッサーを開発している。これによりQuantum Motionは、大規模なシリコンファウンドリーがすでに製造に慣れている材料で作業することができるため、必要とされる専門性が低くなり、より幅広い顧客層に向けて技術の量産を容易にすることが可能となる。同社は今回の資金調達により、検証プロセスにおけるティア1ファウンドリとの連携を強化するとともに、2024年初頭までにチームを50人にまで増強する予定だ。 
仏政府が期待する、2023年仏スタートアップトップ120
フランス政府が推進する国家的なイノベーションイニシアチブであるLa French Techが、今年最も活躍が期待される仏スタートアップのトップ40及び120を発表した。2022年に選定されたトップ120社の売上総額は113億ユーロに達し、2021年の95億ユーロから大きく成長した。2023年のリストには、人々の生活に直結する製品やサービスを提供するスタートアップが数多く名を連ねており、仏国内の5人に3人(62%)が月に1回以上、このTech Next40/120にランクインした企業が提供するサービスを使用しているという。今年のトップ40には、グリーンテック系が10社、産業系が7社、ディープテック系が8社ほど選出され、診察予約のDoctolib、従業員向けフィンテックソリューションのSwile、相乗りサービスのBlablacarなどの有名企業に加え、ビジネスサステナビリティ格付けプロバイダーのEcoVadis、EV充電のElectraとZePlug、航空貨物プロバイダーのFlying Whales、バイオテックのInnovaFeed、バッテリーメーカーのVerkorなど幅広いセクターから注目スタートアップが選出された。 
JLR 、自動運転特化のテックハブを欧州3ヶ所に開設
高級自動車メーカーのJaguar Land Rover(JLR)が、テックジャイアントであるNVIDIAとの提携の一環として、自律走行技術関連のテックハブを欧州内に新たに開設すると発表した。米国、ハンガリー、アイルランド、英国、中国、インドの既存6拠点に加え、JLRは今後、ミュンヘン、ボローニャ、マドリードにて次世代高級車向けに自動運転システムの開発を進める。同都市の選定理由として、ミュンヘンは既に欧州随一のテックハブである一方、ボローニャとマドリードも必要とされるデジタルエンジニアリングの専門性を持つ人材を見つけやすく、重要かつ成長中のテックハブとして認識されている点が挙げられた。この新たなテックハブの設立は、自動車メーカーが次世代自動運転システム、新たなデジタルサービス、顧客向け体験の開発に取り組む中、JLRとNVIDIAの複数年にわたるパートナーシップの進展につながると期待されている。

サイバーセキュリティのDeepwatch、1.8億ドルを調達
MDR (Managed Detection and Response)にフォーカスをおく、フロリダ発セキュリティ企業Deepwatch が、製品開発の推進とパートナー・エコシステムの拡大のため、Splunk VenturesやVista Credit Partnersなどから株式投資と戦略的投資で1億8000万ドルを調達した。Deepwatchは、顧客チームの一員として働く専門家に支えられた常時稼働のサイバーセキュリティ・プラットフォームを提供し、セキュリティイベントを検証、関連付けることで、顧客が通常対処に追われる大量の誤報を減少させることができる。その結果、同社は重要度が低・中程度のアラートを98%削減し、脅威の検出を10倍向上させる上、サイバーセキュリティ運用への投資を400%以上回収すると主張している。なお、Crunchbaseによると、先週のSandboxAQ(5億ドル)、1月のNetskope(4億100万ドル)など、今年最初の2ヶ月間だけで、サイバーセキュリティ企業への投資は既に約17億ドルに達しているという。 
BCI の注目株、B・ゲイツやJ・ベゾスが出資するSynchron
人間が頭脳で機械を制御するためのソリューションであるブレイン・コンピュータ・インターフェイス(BCI)が、新興セクターとして注目を集めている。この技術に取り組むスタートアップの一例として、麻痺のある人々の日常生活を支えるためのBCI技術に取り組むSynchron が挙げられる。2012年にニューヨークで設立された同社は、身体の自由が利かない、あるいは非常に不自由な人が、カーソルやスマートホーム機器などのテクノロジーを使って操作するためのインプラントを開発している。競合他社の多くが開頭手術によってBCIを埋め込む必要があるのに対し、同社は血管を通す、より低侵襲なアプローチをとっており、既に米国とオーストラリアで複数の患者を対象に検証が実施されている。また昨年12月にはビル・ゲイツ氏やジェフ・ベゾス氏などから7500万ドルの資金調達にも成功しているSynchronのソリューションは、今後不自由を持つ人々がオンラインでの買い物、銀行口座の管理、テキストメッセージによる人とのつながりなど、日々の生活においてより自立した生活を実現するものと期待されている。 
PG&E、今夏2種類のVPPスキームを検証
カリフォルニア州の電力会社Pacific Gas & Electric(PG&E)は今夏、猛暑時に電力網を安定させるため、2種類の家庭用ソーラー+バッテリーのバーチャルパワープラント(VPP)をテストする予定だという。PG&Eは昨年の夏、テスラパワーウォールとともに、停電を防ぐためのグリッド緊急時に放電するソーラー+バッテリーの所有者に報酬を支払うVPPの検証を行なった一方、米住宅用太陽光発電事業者Sunrunと今月発表した2つ目のVPPでは、新規及び既存のソーラー+バッテリーの顧客7,500人に、暑い夕方に放電した分の電力が支払われる予定だという。しかし、この試みはグリッド緊急時だけに行われるのではなく、参加者は8月、9月、10月の3ヶ月間、毎日午後7時から9時まで放電するようバッテリーをプログラムする代わりに、参加者は一律750ドルの前払いを受けることになる。今回のSunrunとの新たな試みは、住宅用バッテリーをより永続的な資源としてを使用することで、送電網の緊急事態を起こりにくくする狙いだ。

Transcelestial、Airbus Venturesなどから1000万ドル調達
シンガポールを拠点にワイヤレス技術を開発するTranscelestialは、Airbus Ventures主導の最新ラウンドで1,000万ドルの資金調達を行なった。同社のレーザー通信システムは、設置やメンテナンスにコストがかかる地下ケーブルや、複雑なライセンス規制がある無線周波数ベースの端末を必要とせず、その結果、1ビットあたりのコストを大幅に削減できるという。「CENTAURI」と呼ばれるシューボックスサイズの端末は、すでに南アジアや東南アジア市場で展開されている。また先日、University of Technology Sydneyで行われたデモンストレーションで、同社のレーザー技術が5G接続を実現できることが証明されたばかりだ。そして、Transcelestialは次に宇宙に目を向け、同社の技術を低軌道(LEO)コンステレーションに導入し、軌道上からワイヤレス光ファイバーを都市に直接配備することを目標としている。今回の資金により、同社が運営するTerabit Factoryのサポートを通じ、東南アジアとインドなど5つの主要市場にて無線レーザー通信の普及に貢献する計画だ。 
ベトナム発GIMO、510万ドルを調達
ベトナム発フィンテックスタートアップのGIMOは、TNB Auraがリードし、Y CombinatorやResolution Venturesが参加したシリーズAラウンドで、510万ドルを調達した。2019年に設立された同社は、経済的に恵まれない国民の生活を向上させるべく、給与前払いの分野に参入し、日雇い労働者が稼いだ賃金にいつでもアクセスできるアプリを提供している。現在、約100社に勤める約50万人の労働者がGimoを活用し、稼いだ賃金にオンデマンドでアクセスできるようになっているという。なお、GIMOは確保した資金を用いてプロダクト強化と収益拡大を目指し、さらに今後数ヶ月のうちに新たなフィンテックソリューションをローンチする予定だ。
植木 このみ Open Innovation Group, Intralink Limited イントラリンクについて イントラリンクは、海外ベンチャー企業のアジア事業開発、日本大手企業に対する海外オープンイノベーション支援、海外政府機関の経済開発をサポートするグローバルなコンサルティング会社です。