『欧州エコシステム、2021年のトレンド予測』、『欧州委、スタートアップへの直接投資を開始』、『AIによるバッテリーライフサイクル最適化』、『世界初、仏企業が人工心臓でCEマークを取得』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第40回」をお届けします。(
配信希望はこちらから)
このニュースレターでは、日本企業のグローバル展開、新規事業開拓に役立つ欧州の最新イノベーション、エコシステム、テクノロジー情報を、毎週ピックアップして現地から配信しています。
欧州エコシステム、2021年のトレンド予測
昨年12月に2020年の総まとめを取り上げたが、今回はそのデータに基づいた2021年のトレンド及びデータ予測を一部紹介する。
VC投資総額は、500億ドルを達成:昨年の総額も史上最高となる410億ドルであったが、過去5年間で毎年30%以上の伸び率を記録している。
新たに25社のユニコーンが誕生:シードレベルにおいて、欧州は米国と同じ確率(1/100)でユニコーンを輩出していることから、今年の新規ユニコーン数は昨年の18社から25社に上昇する。
Climate tech(気候テック)の台頭:昨年から社会的影響の強いインパクトテックへの注目が集まる中、特に気候テックがホットなトピックになりつつある。
空飛ぶタクシーの実現化に近づく:より優れたモビリティ社会実現のため、欧州内各都市が空飛ぶタクシーの商業化に向け準備を開始する。
欧州委、スタートアップへの直接投資を開始
ECは現地時間6日、2020年に設立された欧州イノベーション会議(EIC)のファンドを通して、欧州スタートアップへの初の直接投資を発表した。今回はヘルスケア、サステイナビリティ、次世代製造などの分野で、42社のSMEに約1.8億ユーロが投入される予定だ。この42社は、5億6,300万ユーロを超える助成金の対象として、EICアクセラレーターに選定された 293社から、更なる直接投資の対象として審査を勝ち抜いた159社の一部であり、残りの117社も現在プロセスの途中である。最初の投資先として、補助人工心臓の仏
CorWaveが大きく取り上げられているものの、今後も慢性呼吸器疾患の治療薬開発に取り組む
Epiendo、太陽光を活用した持続可能な自律型ドローン設計の
XSUNなどがその出資を受ける予定だ。
AIによるバッテリーライフサイクル最適化
スマートフォンやIoTの発展により、世界中でバッテリーの重要性が高まっている。そんな中、2018年にプラハで設立された
BatteryCheckは、AI分析とデータサイエンスを活用して、バッテリーの最適な使用量を正確に計算し、寿命を延ばすことで電子廃棄物の削減を目指している。バッテリーごとに月額が発生するsoftware-as-a-serviceのビジネスモデルを展開する同社の技術は、使用環境内のバッテリーをリアルタイムで監視することができるため、電気自動車やデバイス市場だけでなく、大量のバッテリーを使用する上、何らかの原因でバッテリーが停止してしまった場合の影響が大きい製造業・工業において重要な役割を果たすと期待されている。
世界初、仏企業が人工心臓でCEマークを取得
世界初の完全な人工心臓を開発する
CARMATが、昨年末にCEマークを取得したと発表した。末期の心不全に苦しむ人々のアンメットメディカルニーズを満たすことを目的に開発されたこの人工心臓システムにより、心臓移植を待ち望む数多くの患者に画期的なソリューションを提供することができるようになる。CARMATは現在までに仏政府からの認定、BpifranceによるSMEを対象とした助成金で最大規模となる3,300万ユーロの金銭支援を受けてきた経緯もあり、今回のCEマーク承認を受けて生産能力を拡大するとともに、2021年後半を目処にEU圏内での販売を開始する予定だ。
植木このみ
Open Innovation Group, Intralink Limited
イントラリンクについて
イントラリンクは、海外ベンチャー企業のアジア事業開発、日本大手企業に対する海外オープンイノベーション支援、海外政府機関の経済開発をサポートするグローバルなコンサルティング会社です。