『2021: The year of Deep Tech』、『プラスチック代替素材Xamplaが資金調達 』、『大手製薬会社が注目する、効率的な創薬技術 』、『Delivery Hero、アーリーステージ企業特化型ファンドを設置 』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第41回」をお届けします。(
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このニュースレターでは、日本企業のグローバル展開、新規事業開拓に役立つ欧州の最新イノベーション、エコシステム、テクノロジー情報を、毎週ピックアップして現地から配信しています。
2021: The year of Deep Tech
革新的な技術や科学的進歩に重要な役割を果たすテクノロジーで、未来を切り開く鍵とされるディープテックへの期待は、欧州委員会がディープテック企業への積極的な投資を進めるなど、欧州でも顕著である。今週発表された下記最新データをもとに、欧州において、2021年はディープテックの年になると予測されている。
- 2020年のディープテックへの投資額は、総額の1/4にのぼる100億ユーロを達成。
- 欧州ディープテック企業の価値総額は、7000億ユーロに到達。
- 過去5年間のディープテックへの投資では、英国(€120億)、フランス(€51億)、ドイツ(€50億)がトップ3を占める。
- しかし、ディープテックに最もフォーカスしたエコシステムは、40%以上のVC投資が同セクターに集中するフィンランドとノルウェーである。
- ディープテック企業は、技術開発と企業成長に時間を要するものの、その他テック企業と同様にエグジットに成功する可能性を秘めている。
プラスチック代替素材Xamplaが資金調達
プラスチックに代わる天然植物タンパク質を開発する英
Xampla (
video)が、Zoom、Facebook、Spotifyに出資してきたHorizon Venturesなどから、新たに620万ポンドの資金調達に成功した。ケンブリッジ大学からスピンアウトした同社は、マイクロプラスチックや使い捨てプラスチックを、自然分解が可能な植物タンパク質と完全に置き換えることを目指している。欧州には、他にも生分解性ストローの
Sulapacや、植物ベースの食品包装の
Vegwareなど、堆肥化可能なプラスチック代替素材を開発する企業が複数存在しているが、彼らの製品は段ボールのような構造と感覚を持ち合わせている。一方、Xamplaのプラスチックは非常にクリアで柔軟な素材であるため、包装用フィルムや小袋、さらに液体に使用されるマイクロプラスチックの代わりになると期待されている。
大手製薬会社が注目する、効率的な創薬技術
世界的なパンデミックにより、効果的で迅速な創薬の重要性が増す中、その機会をチャンスに変えるべく、関連企業の動きが活発化している。Novartisが出資する英バイオテック企業の
Peptoneは、AIと量子コンピュータを活用した世界初のタンパク質工学オペレーティングシステムで、価値の高いタンパク質ターゲットに目をつけ、開発の初期段階で失敗するリスク軽減を目指している。一方、Bayerをはじめとする大手企業と提携してきたブダペスト発
Turbineは、特に腫瘍学のアンメットニーズに焦点を置き、AIを駆使したシミュレーションベースの創薬プラットフォームで、細胞の動きに関する高度なデジタルモデルとクラウドベースのシミュレーションを実現する。大手製薬企業とは異なる方法でアプローチをかける創薬スタートアップの活躍に期待が高まる。
Delivery Hero、アーリーステージ企業特化型ファンドを設置
昨年から日本にも進出しているフードデリバリーサービスの独
Delivery Heroが、アーリーステージ企業に特化したベンチャーキャピタル
DX Venturesを設立した。同ファンドの初期資本となる5000万ユーロは、全額Delivery Heroからの出資となり、今後はグローバルにフードテック、オンデマンドサービス、サステイナブルイノベーション、AI、フィンテック、ロジスティックスなど幅広い業界を対象に投資を進めていくとしている。とはいえ、欧州の食品・サービス業界随一のスタートアップにより設置された新ファンドであることから、フードテックやサステイナビリティなどへの投資に関心の高い日本企業にとって、今後どのようなスタートアップが同社のポートフォリオになっていくのか気になるところだ。

植木このみ
Open Innovation Group, Intralink Limited
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