『好調続く英国のフィンテック投資 』『2022年フランス第2のユニコーン、Ankorstore 』『自律型配送ロボDelivers.AI、スペインで試験運転開始』『新結晶でソーラーパネルの自己修復を実現 』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第92回」をお届けします。
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好調続く英国のフィンテック投資
2021年、上昇基調にあった英国のフィンテック企業への投資は他の欧州諸国を上回る116億ドル(前年比217%増)を記録した。これを後押ししたのは
Monzo、
Starling、
Revolutなどによる「メガラウンド」だ。フィンテックは長い間、英国のテック投資の最大の牽引役となってきた。英国フィンテック企業の大半を擁する首都ロンドン以外のテックハブがより多くの資金を集めている兆しもあり、2021年これらのハブへのフィンテック投資は6億9600万ドル(前年比237%増)と急増した。同国のフィンテック投資は2022年も引き続き好調で、例えばソフトバンクから資金提供を受けたロンドンに拠点を置く
PrimaryBidは
1.5億ドルの資金調達ラウンドの完了に近づいていると報じられている。ブレグジット後も魅力的なフィンテックハブであり続けるべく新しい措置が実施されている英国は、今後も欧州で第1位、世界でも米国に次ぐ第2位のフィンテック投資先としての地位を維持することが期待される。
2022年フランス第2のユニコーン、Ankorstore
2022年もまだ2週目に入ったところだが、フランスではすでに2社目のユニコーンが誕生している。同国のスタートアップ
Ankorstoreは2.8億ドルの新規投資を調達し、評価額約20億ドルの欧州で最も新しいユニコーンとなった。同社が運営するB2B2Cマーケットプレイスは、小売業者が約20万社の独立系ブランドから商品を購入し、それらを自社の顧客に販売する仕組みになっている。同社は地元の小売業者がアマゾンのような存在に対抗できるようにすることを使命としており、これは消費者の嗜好が地元の企業や商品へとシフトしていることを示している。現在21社のユニコーンが存在するフランスでは大規模ラウンドが続出しており、2021年は1億ドル以上のラウンドが23件あった。
自律型配送ロボDelivers.AI、スペインで試験運転開始
マドリードの非営利団体Madrid Futuroと市議会は、同市Villaverde mobility Sandboxでスペイン国内初となる自律型配送ロボットのパイロット運転が始まることを発表した。この自律型配送ロボット企業
Delivers.AIは、独自の自律走行とナビゲーション技術により、既に欧州で数千件の配送の自動化に成功している。同社は宅配サービス企業
Glovoと自律型モビリティサービス企業
Goggo Networkとの連携を通し、マドリードの日常に非接触型配送の利点を提供することを目指している。自律型配送はオンライン注文のラストワンマイル配送コストを削減すると同時に、スマートシティの人々の生活を改善する可能性を秘めている。マドリード内でのPoC(概念実証)承認により、同市が世界中の宅配ロボットの進出先として魅力的な地点となる上、市全体の雇用創出及び経済発展が促されることが期待される。
新結晶でソーラーパネルの自己修復を実現
SF映画やスーパーヒーローの物語では、あらゆるダメージに耐え、自己回復可能な優れた素材が登場し、いつも私たちを驚かせてくれる。そのような非現実的と思われていたことが、科学者の集団による新たな発見のおかげで可能になりつつある。テクニオン・イスラエル工科大学の研究者グループは、太陽電池への応用が期待されるダブルペロブスカイトという材料を用いて、自己修復ナノ結晶(1億分の1メートルの大きさの粒子)を開発した。宇宙衛星に搭載される太陽電池は常に損傷を受けているが、同グループの発見した技術を用いると材料は自己修復し、経時的に生じた損傷もある程度修復できる。同様に、建物に使われるソーラーパネルもより効率的になり交換頻度も低くなる。 ペロブスカイトは水との接触により劣化するなど課題はあるものの、ソーラーパネルの改良という点で重要な役割を果たすだろう。

植木 このみ
Open Innovation Group, Intralink Limited
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