『伊、持続可能なテクノロジーセンターを設立 』『三菱重工、英企業の水素生成技術を検討 』『ポーランド、大砲で大気汚染対策』『イノベーション文化を創り、保つための5ステップ 』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第94回」をお届けします。
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このニュースレターでは、日本企業のグローバル展開、新規事業開拓に役立つ欧州の最新イノベーション、エコシステム、テクノロジー情報を、毎週ピックアップして現地から配信しています。
伊、持続可能なテクノロジーセンターを設立
イタリアは、放棄されたミラノ万博の見本市会場を持続可能なポスト・パンデミック・テクノロジーセンターに再生する計画を立てている。欧州最大の跡地の一つを51億ドルで再開発し、研究所、スタートアップアクセラレータ、サイエンスキャンパスを建設する予定だ。グリーンな都市計画のランドマークとなることを目指し、この地区は完全に再生可能エネルギーで運営され、自動車を使用せず、高速鉄道とミラノの公共交通機関(2025年までに2つ目の地下鉄駅が開業予定)でアクセス可能にする。 また、廃棄物を減らすため古いパビリオンの一部は改修され、解体されるパビリオンの材料は98%リサイクルされる。ミラノはロンドンやパリ、アムステルダムといった他の都市と競争しながらランクアップを目指しており、今後欧州は新技術の開発で米国や中国に対する競争力を一層高めていくとみられる。
三菱重工、英企業の水素生成技術を検討
Hydrogen Utopiaと三菱重工業は、英国の
Powerhouse Energyが開発した廃プラスチックを水素に変換する分散型モジュール発電技術に関する契約を締結した。本契約の一環として、三菱重工は1年間この技術をレビューし、日本での商業化の可能性を評価する。この動きは、エネルギーの脱炭素化と安全性を確保しながら循環型経済の概念を拡大するものである。三菱重工業は、過去40年間日本における環境に優しい技術の開発をリードし、カーボンニュートラルな世界への移行を支援してきた。一方Hydrogen Utopiaは、リサイクル不可能な混合廃棄プラスチックをカーボンフリー燃料や新素材、分散型再生可能熱に転換することを専門とする欧州の新しいリーディング企業を目指す。両者の今後の動きに注目したいところだ。
ポーランド、大砲で大気汚染対策
ポーランドの多くの都市では、毎年冬になると暖房使用のためスモッグが発生し、高いレベルの汚染に直面する。この対策として、音波でPM2.5やPM10などの有毒粒子を上空に押し出し、住民が呼吸できるようにする「大砲」が試験的に使用されている。金属製の容器の上に設置されたこの実験装置は、大きな逆さの円錐形でできており6秒ごとに大きな音を出すが、住民はこの音がほとんど聞こえずまるで花火が上がっているようだと述べる。大砲を30分から1時間使用すると、大砲から2-3キロの範囲の汚染が15-30%減少することが明らかになっており、その効果は1時間から3時間の間続くという。
イノベーション文化を創り、保つための5ステップ
イノベーションの文化を創造することは単なる文化以上のものであると、デンマーク大手海運企業のCVC、Maersk Growthの責任者Shereen Zarkani氏は言う。戦略的な展望を確立し、創造性やリスクテイクを重視して失敗を受け入れていく一方、規律や構造も考慮した基盤をつくらなければならない。同氏はイノベーションをコアビジネスの一部として維持するための5つのステップを以下のように紹介する。
1. 失敗をイノベーションの一部として受け入れる。
2. イノベーションの課題(目標、理由)を事前に明確にしておく。
3. イノベーションチームの構造と作業プロセスの透明性を確保し、社内の信頼と信用を獲得する。
4. イノベーターとコアビジネスとの双方向の対話を継続し、スタートアップとビジネス部門の両方から戦略的な洞察を得る。
5. スタートアップとビジネスユニットの関係の形成期である数週間〜数ヶ月間はイノベーションチームがハンズオンで支援し、PoCや試験が始まってから引き渡す。

植木 このみ
Open Innovation Group, Intralink Limited
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