『欧州がディープテック市場をリードする』、『B2BモビリティサービスのSkipr、欧州市場拡大のため資金調達』、『コロナショックによるイスラエルのVC投資環境への影響』、『いつでもどこでもスプレーで作り出すタッチスクリーン』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第14回」をお届けします。
このニュースレターでは、日本企業のグローバル展開、新規事業開拓に役立つ欧州の最新イノベーション、エコシステム、テクノロジー情報を、毎週ピックアップして現地から配信しています。
欧州がディープテックでテック市場をリードする
欧州の専門家によると、10年後には欧州がテック市場において世界をリードする可能性が高いという。第一の理由は、今後最も需要と市場の拡大が期待されるセクターがGoogleやFacebookのようなプラットフォームではなく、欧州が豊富な専門知識を持ち、得意とするロボットや半導体、AIをはじめとするディープテックや、公共サービスに活用されるヘルスケア、モビリティ、エナジー、ファイナンスなどである点である。その背景には、欧州にコンピューターサイエンスで世界トップ10のうち5つ、またエンジニアとテクノロジーでトップ100の3分の1を占める大学が集中し、この分野に優れた人材に多く恵まれていることが挙げられる。さらに米国とは対照的に、欧州各国はこのパンデミックを通じてスタートアップ救済と強力な基盤構築のため、100億ドルに上る資金を投入したことで、スタートアップが前に進み続けることができる環境を構築した。実際、昨年の欧州VC投資は前年比40%増で史上最高となる340億ドルにのぼり、今後もその特徴を生かした市場拡大が期待される。
B2BモビリティサービスのSkipr、欧州市場拡大のため資金調達
企業を対象としたスマートモビリティサービスを提供するベルギー発MaaSスタートアップの
Skiprが、新たに780万ドルを調達した。特に欧州では、持続可能な移動手段としてMaaSが不可欠になっている中、Skiprの技術は日々変化する法的規制と利用者のニーズに基づき、企業とその従業員に最適なモビリティソリューションを提供する。
Dott、
Bird、
Uberなどその他のモビリティサービスプロバイダーや各地域の公共交通機関も統合したこのB2Bソリューションは、アプリ、オンラインポータル、支払いカードの3つの基本サービスで、各社員の出張や顧客訪問に適切なドアツードアのモビリティ体験を提示するだけでなく、コストや予算、Co2排出量の管理を行うこともできる。同社まだフランスをはじめとする欧州市場拡大を目指している段階だが、日本企業もデジタルトランスフォーメーションの一環として採用できる技術かもしれない。
コロナショックによるイスラエルのVC投資環境への影響
イスラエルのVC投資に関するコロナショックのインパクトが少しずつ明らかになってきた。過去3ヵ月のデータを基に行われた調査の結果、全体的な投資件数は例年に比べてスピードダウンし、特にアーリーステージ企業への投資が減少しているものの、レイターステージ企業への投資は増加傾向にあることがわかった。以前の予測では、今はまだ収益のない企業が市場に出る数年後には不況を抜け出している可能性が高いとして、シード企業の方が資金を調達しやすい状況にあるとの見方もあったが、実際にはシードからシリーズBの投資案件が昨年の71件から36%減の45件に減少し、特にシード企業が一番大きな影響を受けていることがわかった。しかし、この結果は前年比54%減で1784件から815件に縮小した米国の投資状況よりもポジティブな数字であるとも言える。また最近資金を調達した農業害虫駆除技術の
Greeneye Technology やユーザー行動分析の
Convizitなど、AIを活用したシード企業への投資は増え続けており、医療から自動車、フィンテックや農業まで、あらゆる産業に関連するAIへの投資は、イスラエルでも今後安定した伸びが期待できるだろう。
いつでもどこでもスプレーで作り出すタッチスクリーン
ブリストル大学の研究者たちが、3D印刷技術とスプレー可能な電子技術を組み合わせ、どんな表面にもスプレー可能な新しいタッチスクリーンディスプレイを考案した。アーティストが壁に落書きをするところからアイデアを得たこの
ProtoSprayという技術は、3D印刷されたプラスチックを使用し、その上に通電時に光る素材をスプレーすることで、情報の表示だけでなく、シンプルなタッチ操作にも対応する。また立方体、球、帯状などほとんど全ての形の物体で使用することができるため、非常にマーケットの広く、またあらゆる製品を製造するメーカーがどんな形やサイズの製品にも相互作用をもたらすことができるようになるため、特にスマートデバイスやIoTの分野で広範な影響と意味合いを持つと予測されている。
植木このみ
Open Innovation Group, Intralink Limited
イントラリンクについて
イントラリンクは、海外ベンチャー企業のアジア事業開発、日本大手企業に対する海外オープンイノベーション支援、海外政府機関の経済開発をサポートするグローバルなコンサルティング会社です。
弊社の無料ニュースレター配信をご希望の方は、
こちらから。