『欧州投資、2021年前期だけで過去最高年総額を打ち破る』、『世界競争力ランキング、スイスが初の首位獲得』、『抗ウイルス表面保護技術のKastusが資金調達』、『凧を使用する空中風力エネルギーシステムとは』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト：第64回」をお届けします。
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欧州投資、2021年前期だけで過去最高年総額を打ち破る
新たに発表されたデータによると、欧州へのVC投資が2021年前半の6ヶ月だけで438億ユーロ（522億ドル）に達し、2020年全体で記録した過去最高額となる385億ユーロを既に上回っていることが分かった。これまでのディール数は、まだ2020年全体の半分以下となる2700件であることから、特にフィンテックのKlarna（16億ドル）、株式取引アプリの独Trade Republic（9億ドル）、決済プラットフォームの英Checkout.com（4.5億ドル）などの大型ディールをはじめ、一件あたりの投資金額が大幅に上昇していることが一因とされている。またユニコーン企業や買収案件の増加に加え、フードデリバリーのDeliverooやサイバーセキュリティのDarktraceなどが大型IPOにも成功しており、欧州テック企業はパンデミックによる経済的不確実性に逆らいながら、成長し続けていると言える。
世界競争力ランキング、スイスが初の首位獲得
先週、スイスの国際経営開発研究所（IMD）が最新の
世界競争力ランキング2021を発表し、スイスが1位（昨年3位）を獲得した。同国が首位となるのは、同指標が開始された1989年以来初となる。また2位にはスウェーデン（6位）、3位にデンマーク（2位）、4位にオランダ（4位）がランクインし、過去2年連続トップから5位に後退したシンガポール以外、西欧勢が上位を独占する形となった。今回のランキングは、これらの国々が特に「イノベーションへの投資」、「デジタル化」、「福利厚生システム」、「社会的結束力を高めるリーダーシップ」の4つの点に優れ、パンデミックによる経済危機からの回復力を反映しながら競争力を高めることに成功したと述べている。またトップ3に入った国々がEU圏外、またユーロ圏外である点も指摘され、欧州市場へのアクセスを持ちながらも、その独立性による機動力を持つことが強みとして挙げられた。なお、日本は31位（昨年34位）だった。
抗ウイルス表面保護技術のKastusが資金調達
ダブリン発
Kastusが、光を動力源とする抗ウイルス表面保護技術の開発促進のため、560万ユーロの資金調達に成功した。2014年に設立されたKastusは、タッチスクリーンやガラス表面用の抗ウイルス・抗菌表面コーティングを製造しており、既にヒトコロナウイルスを含む99％以上の有害な細菌やウイルスを殺菌することがISOで証明されている。つまり、この素材を使用することで、例えば携帯電話の画面を抗菌化することができる。同社は既に44つの特許を取得済み及び申請中であり、今までにLenovo、Lavazza、Koneなどからの需要があったという。パンデミックの影響もあり、今後もこのような新素材への需要は高まるものと期待される。
凧を使用する空中風力エネルギーシステムとは
既存の風力タービンの代替案となりうる空中風力エネルギーシステム（AWES）を開発する蘭
Kitepowerが、新たに300万ドルの調達に成功した。デルフト大学のグループが行った凧を使用した電力生成に関する研究から2016年にスピンアウトしたKitepowerの技術は、通常の風力タービンとは異なり、リソースを大量に消費するタワーや重い基盤を必要としないため、輸送と実装が簡単である上、より高い高度でより強い風を利用し、費用対効果の高い発電を実現する。さらに既存技術の2倍の効率性を持ちながら、使用する素材を90％削減することで既に特許も取得しており、風力発電における新しい地理的市場の開拓が可能となる。このAWESは、広い土地を必要とする太陽光発電とは異なり、たった6 x 2.5 mの地面だけで十分であるため、例えば農地所有者が風力発電者にその土地を貸したり、農場用に自身で風力発電を行ったりと、あらゆる形でクリーンな電力生成に貢献することができるとしている。
植木 このみ
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