『英テックスタートアップ好調』『世界初の風力・太陽光エネルギー貯蔵用CO2電池 』『ソフトバンク、AR手術の Proximieを支援 』『スマートロードガードレール開発 』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第114回」をお届けします。
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英テックスタートアップ好調
Dealroomと英国Digital Economy Councilによると、2022年の最初の5カ月間で950社以上の英国のテック企業が合計約149億ドルを調達し、2020年の調達額合計約144億ドルを半年足らずで上回ったとのことだ。 フィンテックは引き続き英国で最も有力なテックセクターであり、同国における今年のVC資金の半分にあたる約74億ドルを調達している。ロンドンに拠点を置くテック企業は、今年これまでに約103億ドルを調達しており、これはパリに拠点を置く企業の調達額47億ドルの2倍、ベルリンに拠点を置く企業の4倍以上となっている。この報告書によると、英国には現在122社のユニコーンが存在し、「フューチャーコーン」と呼ばれる、ユニコーンになる可能性のある企業も248社存在する。最新の数字は、さまざまな世界的な課題がある中でも、英国における民間の技術投資が成長を続けていることを示している。
世界初の風力・太陽光エネルギー貯蔵用CO2電池
イタリアのスタートアップ企業が、CO2を地球温暖化防止の武器に変える方法を発見した。
Energy Domeは、CO2を利用したエネルギー貯蔵ソリューションの最初の実証プロジェクトとして、イタリアのサルデーニャ島で4MWhのシステムを立ち上げたばかりだ。Energy Domeは、CO2を燃料とし、圧力と熱を利用してエネルギーを貯蔵する。CO2を気体から液体へ、あるいは液体から気体へ変換し、再生可能エネルギーの貯蔵や発電・送電を需要に応じて行う。この技術の利点は、リチウムイオン電池やコバルトなどの希土類鉱物に依存しないことだ。これは、エネルギー安全保障の観点からも、地政学的安定性の観点からも特に重要である。同社によると、最初のフルスケールの貯蔵プラントのコストは1キロワット時あたり200ドル弱で、リチウムイオン蓄電システムの約半分となる見込みだ。次の目標は、来年末までに最初のフルスケールのプラントを配備することである。
ソフトバンク、AR手術の Proximieを支援
病院は常に手術のパフォーマンス向上のために努力しているが、革新的なスタートアップの技術がそれを達成するためのソリューションとなる可能性がある。その一例として、英国に拠点を置く
Proximieは、世界中の病院における外科手術のトレーニングギャップを埋めるのに役立つAR技術を開発するため、8000万ドルのシリーズCラウンドを調達したばかりである。このラウンドにはソフトバンクが参加している。昨年ソフトバンクは16件の欧州企業のラウンドに参加したが、2022年の参加は珍しい。ProximieはARを使い、手術中の執刀医に対して、遠隔で監視する外科医が手を動かして技術を実践して見せ、執刀医がその技術をスクリーン上で確認することを可能にする。また、同社は手術を記録して「デジタルフットプリント」と呼ばれる知識のデータベースを作成し、世界中で共有することを可能にしている。このソリューションは現在、世界100カ国、500の病院に導入されている。今回の資金調達は、Proximieのプラットフォームのさらなる拡大に活用される予定だ。
スマートロードガードレール開発
バレンシア工科大学の研究者は、業界大手
Metalesaと共同で、アクティブな交通安全システムとして機能する新しいスマートロードガードレール「Metaurban」を開発した。このガードレールには、外部視認センサー、温度センサー、空気質センサー、レーダー、音頭カメラなど、さまざまなセンサーが搭載されている。最大10種類のシナリオを想定しており、危険な状況を把握し、自治体当局に事故を知らせることが可能である。その他の使用例としては、ガードレールへの衝撃やスピード違反の車両の接近、周辺の気象状況などを通知する。さらに、このスマートガードレールは、CO2濃度などの情報を収集し、クラウド上のデータ収集プラットフォームに送信することも可能だ。これまでガードレールは受動的な安全バリアとして認識されてきたが、今回のような研究は、ガードレールがスマートシティ建築の重要な一部になり得ることを示している。

植木 このみ
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