『保険サービスインフラを提供するInstanda』『パリの環境保全への取り組み』『首、腰の痛みを解消するAI技術 』『Euratom研究およびトレーニングプログラム』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第115回」をお届けします。
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このニュースレターでは、日本企業のグローバル展開、新規事業開拓に役立つ欧州の最新イノベーション、エコシステム、テクノロジー情報を、毎週ピックアップして現地から配信しています。
保険サービスインフラを提供するInstanda
保険業界は破壊的イノベーションの機運にあり、英国のInstradaは、保険商品の提供方法を変えることで顧客体験を向上させようとするスタートアップ企業の一つである。コード不要の保険商品管理・販売ソフトウェアを開発する同社は、シリーズBラウンドで4500万ドルを調達したばかりで、資金調達総額は7300万ドルに達している。Instradaのソリューションにより、保険会社やMGAは、複雑な保険商品を業界標準の10倍の速さで構築・導入することができる。同社のソリューションは、損害保険、生命保険、医療保険などの分野で、70社以上の企業が保険商品の構築に利用しており、顧客にはHamilton Fraser、Standard Bank、HDI Global SEなどが名を連ねている。Instradaは、今回の資金調達により、欧州、UAE、日本、米国市場でのさらなる事業拡大を目指す予定だ。
パリの環境保全への取り組み
パリは長年、窒素酸化物(NOx)排出量の多さに悩まされてきた。パリ市のエコロジー担当副市長Dan Lert氏は、この問題に対する現在の計画について次のように述べた。まず、パリでは2024年までにディーゼル車、2030年までにガソリン車を廃止することを目標としている。この取り組みに加え、EVや自転車、カーシェアリングなどの普及を進めていく予定で、例えば、職業人が電気自動車、水素自動車、NGVトラックを購入する場合、最大9,481ドルの資金援助を行うなどしている。また、EVドライバーのために、2024年までに8,400基の充電ステーションを設置し、2050年までに100%再生可能エネルギーで供給する計画もある。過去15〜20年にわたる市の取り組みにより、パリは大気環境と持続可能性が大幅に改善され、Dan Lert氏らはこれを野心的な政策で継続したいと考えている。
首、腰の痛みを解消するAI技術
多くの人が腰痛や首の痛みに悩まされている。実際、これらの痛みは世界で最も一般的な慢性疼痛のひとつであり、悪い生活習慣が原因となっている。イスラエルとドイツのスタートアップ企業であるiPlenaは、この問題の解決に向けて取り組んでいる。同社のアプリは、AIデータ分析に基づく特許取得済みのソリューションで、腰痛や首の痛みを治療し、姿勢や体の動きを改善する。アプリはまず、身体の形状、姿勢、プロポーション、左右対称の構造などをスキャンする。第2、第3段階では、3分間のターゲットエクササイズを通し、なぜ問題があるのか、これらの問題にどのように対処すべきかをアプリが詳細に説明し、パーソナルトレーニング計画のスケジュールを設定する。同社の治療方法は、ドイツのクリニックで6年間開発・改善され、すでに1万人以上をサポートしている。
Euratom研究およびトレーニングプログラム
欧州委員会は、Euratom Research and Training Programme 2021-2022の下で、新たに28件の助成金契約を発表した。同プログラムは、原子力の安全性、セキュリティ、放射線防護、核融合エネルギー研究の継続的な改善に重点を置いた原子力研究およびトレーニングにフォーカスしている。プロジェクトの中には、地下水中のラドン濃度の変化を測定するためのスマート地球化学センサーの研究、デコミッションと放射性廃棄物管理の初期段階における規制と基準の調和、宇宙でのエネルギー生成のための原子力発電システムなどが含まれている。Euratomの新規プロジェクトは、25のEU加盟国にまたがり、ウクライナ、英国、スイス、ノルウェー、米国、日本からの参加もあるとのことだ。

植木 このみ
Open Innovation Group, Intralink Limited
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