『ミラノがカーボンニュートラル実現へ本格始動』『コンセント充電不要なソーラー発電EV』『廃棄物バイオマスから作るPET代替プラ 』『アクセントも聞き取るspeech-to-textエンジン』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第116回」をお届けします。
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ミラノがカーボンニュートラル実現へ本格始動
イタリア第二の都市ミラノが、サステイナビリティに関して野心的なゴールを発表した。この新たに承認された「Air and Climate Plan」は、2050年までにカーボンニュートラル、そして自動車を制限した自転車と歩行者を中心とした街づくりを達成するための行動計画が、健康、接続とアクセシビリティ、エネルギー、気候変動への適応、認識度という5つの領域に分けて定められている。この計画達成に向けては特にモビリティが重要視されており、昨年10月を皮切りに、害を及ぼす可能性の高いとされる車両が市内の特定地域で徐々に禁止されつつある。また再生可能エネルギーへの注力も顕著で、公共建築物のエネルギー消費をカバーするために6万平方メートルもの太陽光発電パネルが設置される予定だ。この計画は、実施に向けて欧州を代表する気候イノベーションイニシアチブである
EIT Climate-KICの
Clean Cities Deep Demonstrationsに支援を受け、多くの革新的な技術と持続可能性政策を打ち出す場として期待されている。
コンセント充電不要なソーラー発電EV
人々がEVへの切り替えを思いとどまる大きな要因の一つとして、その長い充電時間が挙げられる。そんな中、オランダ発
Lightyearが、そのソリューションの開発に取り組んでいる。同社のソーラー発電EVは、走行中または駐車中に搭載したソーラーパネルの活用してバッテリーを充電することで、何ヶ月もコンセントでの充電を行わずに走り続けることができるという。1日の平均走行距離が約35 kmの場合、曇りが多い気候の地域では約2ヶ月、晴れが続く地域では7ヶ月ほど充電設備の使用が不要となる。現在、Lightyearのソーラー発電EVは約25万ユーロで販売されているが、同社は今後3年間で3万ユーロまで価格を抑え、人々の手に届きやすい、サステイナブルなモビリティを提供することを目指している。
廃棄物バイオマスから作るPET代替プラ
スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)のチームが、植物の非食用部分を材料としたPETに替わるプラスチック素材の開発に成功した。このプラスチックは、丈夫で耐熱性がある上、酸素などのガスに対する優れたバリア性を備えているため、食品包装に適している。他にもテキスタイル、医療、3D印刷用の電子機器やフィラメントなどの分野でも活用が期待されている。この技術は、糖構造をプラスチックの分子構造内にそのまま維持することにより、既存の代替品よりもはるかに単純な化学構造を実現する。そして、その製造技術は農業廃棄物を最大25%、また精製された砂糖の95%をプラスチックに変換することができる。最終的には無害な糖に分解する形でのリサイクルも可能とされ、PETの有望な代替品となる可能性を秘めている。
アクセントも聞き取るspeech-to-textエンジン
音声アシストを使用する際、アクセントや方言など話し方の細かな違いによってうまく聞き取ってもらえない、ということを経験した人も少なくないはずだ。英ケンブリッジ発の
Speechmatics は、ディープラーニングを活用した文字起こし技術で、ライブ及び録音されたメディア媒体向けに30以上の言語を理解し、毎月世界中で数百万時間分の音声を文字に変換しているという。同社は話者の人口統計、年齢、性別、アクセント、方言、場所などに関係なく、すべての「声」を理解することを目指し、その技術は既にDeloitte UK、3Play Media、Veritoneなどで採用されている上、Microsoft Azure Marketplaceにも導入されている。なお、SpeechmaticsはシリーズBラウンドで6200万ドルの資金調達に成功したばかりで、米国やアジア太平洋地域への事業拡大、さらにインフラや研究開発能力の改善に資金を充てる予定だ。

植木 このみ
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