『クリプトバレー:欧州のブロックチェーンハブ』、『相次ぐケンブリッジ企業による資金調達』、『次世代不揮発性メモリのIntrinsicが資金調達』、『伊藤忠、コーヒー業界向けプラットフォームに出資』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第51回」をお届けします。
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このニュースレターでは、日本企業のグローバル展開、新規事業開拓に役立つ欧州の最新イノベーション、エコシステム、テクノロジー情報を、毎週ピックアップして現地から配信しています。
クリプトバレー:欧州のブロックチェーンハブ
スイス全土とリヒテンシュタインにおけるブロックチェーンクラスターの総称である『クリプトバレー』の成長が注目を集めている。
Crypto Valley Venture Capital発表の最新レポートによると、クリプトバレーに拠点を構えるブロックチェーン企業は、昨年だけで40社増加の960社で、同エリアの基盤として発展し、最大のホットスポットであるツーク州にその半数近くにのぼる433社が拠点を設置していることがわかった。またクリプトバレー内の上位50社の評価総額は、たった1年で680%増の約2549億ドルに達し、そのユニコーン数も11社となった。本レポート内では、今後の規制枠組みのさらなる発展によりクリプトバレーの成長は続くと予測されており、ブロックチェーン・暗号通貨などに関心の高い日本企業にとって要注目のエリアと言える。
相次ぐケンブリッジ企業による資金調達
先週のTech Nationによる発表にて、2020年に2億ポンド以上のVC投資を受け、英国テックハブトップ5にランクインしたケンブリッジの企業による資金調達がここ2週間で相次いでいる。メディカル業界からは慢性創傷向けに酸素療法を用いたメドテック企業の
NATROXや、がんの新分子療法開発に取り組む
NeoPhoreが、また弊社がアジア市場進出でサポートを提供する
FocalPointも、そのスマートフォン、ウェアラブル、自動運転車向けの次世代ナビゲーション及びポジショニングソフトウェアで資金調達に成功した。さらにブロックチェーンによる分散型AIプラットフォームの
Fetch.ai、Microsoft Azureでも使用されている音声認識技術の
SpeechmaticsなどAI企業の活躍も目立ち、そのエコシステムの強さが強調された形だ。なお、同エコシステムの特徴については、弊社ブログ「
名門大学とともに躍進するシリコン・フェン 、ケンブリッジ」でも詳細を取り上げている。
次世代不揮発性メモリのIntrinsicが資金調達
英国有数の大学として知られるUCLのスピンアウトである
Intrinsic Semiconductor Technologies Ltdが、その次世代メモリ装置でUCL Technology Fund やIP Groupからシード資金の調達を行なった。これにより、Intrinsicはベルギーの主要な半導体研究ファウンドリであるimecと提携し、業界標準のCMOSを使用して独自の不揮発性メモリデバイスのプロトタイプを開発するという。ナノエレクトロニクスと材料科学の分野で名の知れた研究者により開発された同社の関心的な抵抗変化型メモリ(RRAM)は、酸化ケイ素などCMOSチップと同様の材料を使用しており、フラッシュメモリよりも統合が簡単で、本質的に高速で電力効率が高くなる。これにより、将来のデバイスの消費電力とコストを大幅に改善し、日常の製品やサービスの範囲拡大を実現できると期待されている。
伊藤忠、コーヒー業界向けプラットフォームに出資
伊藤忠商事がコーヒー生産者と消費者を結びつけるトレーサビリティ・サステナビリティプラットフォームを開発するジュネーブ発Farmer Connectに出資し、次期中期経営計画の基本方針である『「SDGs」への貢献と取組強化』の一環として、コーヒー産業発展への貢献を目指すという。Farmer Connectは、ブロックチェーンを中心にコーヒーの生産・流通・販売にまたがる情報を繋ぐシステムを構築し、ユーザーがアプリ上で購入したコーヒー豆に関する情報を取得することで、サプライチェーンにおける透明性を向上する。さらにコーヒー生産の大部分を占める発展途上国における生産・労働環境の向上のため、ユーザーが直接参加し、持続可能な生産を支援する取り組みも行っており、トータルで安全で楽しいサステナブルなコーヒーライフの構築を目指す。

植木 このみ
Open Innovation Group, Intralink Limited
イントラリンクについて
イントラリンクは、海外ベンチャー企業のアジア事業開発、日本大手企業に対する海外オープンイノベーション支援、海外政府機関の経済開発をサポートするグローバルなコンサルティング会社です。