『世界のトップ・テック企業がMWCでバルセロナに集結 』『CO2から次世代のタンパク質原料を生産』『アイルランド、電力需要の53%を風力発電で達成 』『独Forto、物流業界の持続可能な発展に向け世界展開』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第100回」をお届けします。
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このニュースレターでは、日本企業のグローバル展開、新規事業開拓に役立つ欧州の最新イノベーション、エコシステム、テクノロジー情報を、毎週ピックアップして現地から配信しています。
世界のトップ・テック企業がMWCでバルセロナに集結
パンデミックの始まりとともに停止していた世界中の対面会議が、今またゆっくりと回復しつつある。その一例として、先週スペインのバルセロナで開催された欧州を代表するテクノロジーショー「
Mobile World Congress(MWC)」があげられる。この展示会には、昨年の2万人の参加者から大幅に増加した6万1000人以上が集まり、出展者は5Gやモバイル技術など、最新技術を披露した。また、「
4 Years From Now(4YFN)」イベントには、600以上のスタートアップ企業が参加しており、その一例として、研修医がデジタルで手術の練習をするための外骨格を開発しているギリシャのスタートアップ企業
MAGOSなどが挙げられる。また、弊社のロンドン在住のエキスパート、Paul DupontとAlex Goverは、MWCでの実体験を
ウェブサイトで紹介しているので、ぜひご覧いただきたい。
CO2から次世代のタンパク質原料を生産
気候変動の緩和には、CO2排出量の削減と、ネガティブ・エミッション技術の推進が必要である。そんな中、ウィーンのフードテックスタートアップ企業である
Arkeon Biotechnologiesは、ガス発酵と古細菌(アーキア)というユニークな性質を持つ微生物を用いて、CO2を食品に変える技術を開発している。同社は最も持続可能で栄養価が高く、倫理的な食料システムを構築することをミッションとしており、独自の技術により、人間の食事に必要な20種類のアミノ酸を1度の製造工程ですべて生産することを可能にした。また、この手法では農地から完全に独立してCO2を食品原料に変換するため、資源や地理的な制約のない食料システムが実現できる。
アイルランド、電力需要の53%を風力発電で達成
欧州では現在、化石燃料への依存やロシアのウクライナ侵攻による世界的な経済ショックもあり、電気料金が過去最高水準で高騰している。このような状況下で他国がエネルギーコストに苦しむ中、アイルランドは2月に電力需要の半分以上を風力発電で賄うことに成功した。これにより過去最高記録が更新されたことになる。この結果、アイルランドの卸売電力価格は、その月の最も風が強い日に大幅に下がり、1メガワット時あたり約100ユーロ(約109ドル)安くなった。この結果は、世界のエネルギー部門における風力エネルギーと再生可能エネルギーの重要性がますます高まっていることを示している。
独Forto、物流業界の持続可能な発展に向け世界展開
Covid-19の大流行により、サプライチェーンの脆弱性が露呈し、物流会社は、サプライチェーンのデジタル化と持続可能性を支援する革新的なソリューションを持つスタートアップ企業に注目している。例えばドイツの物流スタートアップ企業、
Fortoは、2億5000万ドルの巨額の資金調達を受け、8ヶ月で評価額をほぼ2倍の21億ドルにした。このラウンドには、前回のラウンドでリード・インベスターを務めた
Softbank Vision Fund 2などが含まれる。Fortoは、透明で摩擦のない、持続可能なデジタル・サプライ・チェーンを実現することを目指しており、オファーから予約、書類管理、追跡などの全プロセスに対応している。製造業やEコマースブランドを含む約2,500社の顧客が、同社のデジタルに特化したソリューションを利用しているという。

植木 このみ
Open Innovation Group, Intralink Limited
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