『英国、過去最大の研究開発予算案を発表』『車載データに関する規制の動向』『仏Alice&Bob、耐障害性の高い量子コンピュータを開発』『錠剤を3D印刷するスタートアップ企業Doser 』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第101回」をお届けします。
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英国、過去最大の研究開発予算案を発表
英国政府は、これまでで最大規模の研究開発予算を発表した。2022年から2025年にかけての研究開発予算は520億ドルにのぼり、2027年までに研究開発投資総額をGDPの2.4%に引き上げるという目標を含む政府の
イノベーション戦略の実現に貢献する。この戦略では、AIやクリーンテックなどの主要技術や、宇宙分野など英国が競争優位にある分野を強化することを特に目指している。政府の野心的な研究開発投資計画は、研究開発税額控除プログラムと相まって、英国でのイノベーションに企業が積極的に投資できるよう自信を与えてくれるだろう。
車載データに関する規制の動向
データの重要性がますます注目される中、EUの規制当局がウェブ対応車両に関する世界初の規制の開始を準備していることから、欧州の自動車産業は極めて重要な局面を迎えている。この動きは、自動車メーカーだけでなく、保険会社、リース会社、修理工場にも影響を与えることになる。欧州委員会は今週、車載データに関する業界協議を開始する予定であり、これが今年後半の法制化につながる可能性がある。データ主導の革新的なソリューションとプライバシー、セキュリティ、安全性、倫理基準の維持のバランスを取ることを目指す世界において、新たな規制はサービスやビジネスモデルに影響を与える可能性がある。
仏Alice&Bob、耐障害性の高い量子コンピュータを開発
近年、量子コンピュータへの関心が高まっており、大手テクノロジー企業や世界中の研究所が耐障害性の高い量子コンピュータを構築するのに競い合っている。そこで注目されているのが、パリに拠点を置くスタートアップの
Alice&Bob社だ。同社は、大規模で耐障害性の高い量子コンピュータを開発しており、機能的な量子コンピュータを実現するための主な障壁の1つを取り除き、その複雑さを大幅に軽減したと主張している。Alice&Bobは、シリーズAラウンドで2900万ドルを調達したと発表した。この資金は、同社の技術の可能性を商業化するための次のステージに向けて活用される。
錠剤を3D印刷するスタートアップ企業Doser
パーソナライズド・メディシン(個別化医療)は、より良い、より安価な、個人に合った治療法を提供することで、医療システムを変革しようとしている。オランダのスタートアップ企業
Doserは、この業界を破壊しようとする企業の一つで、個人が必要とする量の薬を印刷する3Dプリント技術を開発した。創業者たちが「ネスプレッソ・マシン」に似ていると表現するこのソリューションにより、薬剤師は個人向けの薬を現地でオンデマンドで製造できるようになり、放出特性が異なるカスタムポリピルを作り複数の薬に代えることもできるようになる。今月、この新しいプロトタイプがオランダのライデン大学医療センター(LUMC)で運用開始となる予定だ。

植木 このみ
Open Innovation Group, Intralink Limited
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