『Carbon Crusher、カーボンネガティブな道路を実現』『欧州、世界最高の電池を目指す』『環境に配慮したフードテック』『データクリーンルームのDecentriqが資金調達』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第102回」をお届けします。
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このニュースレターでは、日本企業のグローバル展開、新規事業開拓に役立つ欧州の最新イノベーション、エコシステム、テクノロジー情報を、毎週ピックアップして現地から配信しています。
Carbon Crusher、カーボンネガティブな道路を実現
年間約4億トンものCO2を排出すると言われる道路インフラ建設や維持管理の課題を解決すべく、ノルウェーの
CarbonCrusherなどのスタートアップ企業がソリューションを開発している。CarbonCrusherは、独自に開発した粉砕機で既存のアスファルトを細かく粉砕してリサイクルすることで、カーボンネガティブな道路を建設している。同社のソリューションは、従来の石油系ビチューメンの代わりに製紙業の廃棄物であるリグニン系(植物由来)の結合剤を使用し、環境にやさしく、ひび割れしにくい道路を作るというものである。同社は現在、人工衛星を通じてインフラの変化を追跡し、補修が必要な高速道路や道路を積極的に発見するソフトウェアなど、道路改善のための補完的な方法を模索している。
欧州、世界最高の電池を目指す
機能性に優れ、持続的に生産される電池は、欧州の気候変動対策の重要な部分を形成している。そのため、EUは電池のライフサイクル全体に関する規制を強化し、循環型経済の実施を促進するための新しい法律の策定を進めている。EUは、電池規制の一般的なアプローチについて合意したと発表したばかりで、まもなく規制文書の最終版が完成するとされている。EUが持続可能で循環型の電池サプライチェーンの構築を目指す中、電池ソリューションを開発する欧州のスタートアップ企業はますます求められるようになるだろう。最新の例としては、スウェーデンのスタートアップ企業
Altris が、リチウムイオン電池の代替材料を製造するために、今週
シリーズA資金調達ラウンドで約1100万ドルを調達した。
環境に配慮したフードテック
代替肉の市場は急速に拡大しており、フードテック企業は環境に優しく、適度な価格で、食欲をそそるソリューションの開発を競っている。イスラエルのフードテックスタートアップ企業
More Foodsと
Flying Sparkはその代表で、ユニークなソリューションを提供している。More Foodsは、カボチャやヒマワリの種油を作る際に出る種子の破片を使い、産業廃棄物を代替肉製品に変えている。すでにイスラエルのレストランでいくつかのパイロットプロジェクトが進行中である。同じフードテックのスタートアップであるFlying Sparkも、ミバエの幼虫という少し変わった素材から食肉代替品を開発している。最近では、食品メーカーのThai Unionと提携し、ペットフードの製造にこのタンパク質を利用することに成功した。
データクリーンルームのDecentriqが資金調達
データ駆動型の世界では、信頼とプライバシーが最重要視されるようになっている。そのため、スイスのスタートアップ企業である
Decentriqのようなソリューションプロバイダーがますます求められるようになってきている。同社は、機密コンピューティングの暗号化技術に基づく企業向けSaaSプラットフォームを開発しており、組織が内部または外部の関係者と機密データについて共同作業できるデータクリーンルームを提供している。これは、データ所有者以外の誰もプラットフォームにアップロードされた生データにアクセスできないことを意味する。その結果、データ所有者は自分のデータを完全にコントロールすることができ、データプライバシーを守ると同時に、GDPRなどの最も厳しい規制基準を遵守することが可能になる。同社は、シリーズA資金として約1500万ドルを調達したばかりで、この資金は、AI、最先端の暗号化、プライバシー強化技術に基づくデータクリーンルームの開発と商業化をさらに加速させるために使用される。

植木 このみ
Open Innovation Group, Intralink Limited
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