『テックコミュニティによるウクライナ支援 』『英Solivus、「皮膚のような」ソーラーパネルを開発』『2021年、欧州のテックユニコーンの成長率が米国を上回る』『急成長するデンマークのバイオテック』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第99回」をお届けします。
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このニュースレターでは、日本企業のグローバル展開、新規事業開拓に役立つ欧州の最新イノベーション、エコシステム、テクノロジー情報を、毎週ピックアップして現地から配信しています。
テックコミュニティによるウクライナ支援
この東欧の困難な時期に、世界のテック・エコシステムは、ウクライナを支援するためにいくつかのイニシアチブをとっている。今回は、その中から支援につながる3つの取り組みを紹介したい。
まず、
Tech To The Rescueは、「TechforUkraine」というイニシアチブを立ち上げ、テクノロジーを使って、リソースの分配、支払い、寄付、安全なメッセージングなどで、NGOを支援している。これまでに250社、400人のフリーランサーが支援することを誓約した。同様に、ドイツ在住のグーグルエンジニア、Gustavo Iwanaga氏が立ち上げたUkraine Global Taskforceは、世界中の500人のテックボランティアから支援を集めている。また、アムステルダムに拠点を置くユニコーンのMessageBirdは、世界のテックコミュニティからの人道的活動を調整するために、
約1億ドルのNGOファンドを立ち上げた。
英Solivus、「皮膚のような」ソーラーパネルを開発
世界がクリーンエネルギーに移行する中、太陽光発電は魅力的な代替エネルギーとして注目されている。とはいえ、従来のかさばる長方形のソーラーパネルは、再生可能エネルギーへの最初の一歩を踏み出すことを躊躇させるかもしれない。英国のスタートアップ企業
Solivusは、この問題を解決すべくユニークなソリューションを提供する。同社が開発した「超薄型」有機薄膜太陽電池(OPV)は、倉庫やスタジアム、大型オフィスなど、従来の太陽電池では重さに耐えられない建物の平らな屋根に巻き付けることが可能である。同社はすでに、
コッツウォルズ空港の格納庫の屋根にこの技術を試験的に使用しており、このソーラーパネルでグリーン水素を生成し、
ZeroAviaの水素電気飛行機を飛行させる予定である。
2021年、欧州のテックユニコーンの成長率が米国を上回る
i5invesが作成した新しいレポートによると、2021年に欧州は400%のユニコーン成長率を記録し、米国の2倍以上となった。欧州大陸では2021年に評価額10億ドル以上のテック企業が新たに85社増え、欧州のユニコーンの総数は132社となっている。国別では、英国がトップで、ドイツ、フランス、スウェーデン、オーストリアと続く。2022年も非常に有望で、欧州のテックスタートアップ企業は今年の最初の1カ月間で130億ドル強の資金を調達している。セクター別では、フィンテックがリードし、AI&ビッグデータスタートアップ、ライフサイエンス&ヘルステックの順に続くと予想されている。
急成長するデンマークのバイオテック
パンデミックによって加速されたとはいえ、今もなおバイオテクノロジーは急成長の途上にある。このセクターへの世界のVC投資は2021年に過去最高の410億ドルに達し、5年間で3.4倍の増加となっている。欧州諸国の中でも、デンマークのバイオテクノロジー・エコシステムは最も急成長しており、VC投資は昨年だけで2倍以上に増え、2021年には4.34億ドルに達している。デンマークのバイオベンチャーは、海外の投資家の注目も集めており、2021年のVC投資のうち国内投資家からの投資はわずか25%で、残りは他の欧州や海外の投資家からのものである。デンマークのバイオテクノロジー企業の最近の例としては、持続可能なバイオケミカルを創出する
Cysbio、上皮傷害の治療法を創出する
Cytoki Pharmaなどがある。

植木 このみ
Open Innovation Group, Intralink Limited
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