『Electriq、パウダー式固体水素キャリア製造プラント建設』、『生体インプラントのXeltisが、3,200万ユーロを調達』、『ドローン開発のSkyports、韓国進出でアジア事業加速』、『バリューベースケアのVytalize Health、1億ドル調達』、『クラウドコスト最適化ProsperOps、7,200万ドル調達』、『134日で100万ユーザー突破、Tomeが4,300万ドル調達』、『Alchemy Foodtech、糖質制限ソリューションに進出』、『IoTのWillowmore、最新シリーズA+で資金確保』を取り上げた「イノベーションインサイト:第21回」をお届けします。 
Electriq、パウダー式固体水素キャリア製造プラント建設
イスラエルを拠点に水素キャリアを開発するElectriqは、液体貯蔵ターミナル運営会社のZenith Energy Terminalsと、パウダー式固体水素キャリアの製造プラントを蘭アムステルダム港に建設する契約を締結した。気体や液体といった従来の水素輸送ソリューションと比較し、Electriqは安全性とエネルギー密度に優れ、ラストマイル、オフグリッド、バックアップ用途での水素の貯蔵、輸送、利用を簡素化できるという。同社の水素パウダーは、特許取得済みの小型発電機を用いて電気に変換することができ、Zenithとの契約では、ターミナル敷地内にある風力発電機で発電した再エネを活用したグリーン水素の製造も行うという。この工場建設により、燃料として水素をいち早く採用したオランダを中心に、ベネルクス各国の顧客にサービスを提供する狙いだ。 
生体インプラントのXeltisが、3,200万ユーロを調達
スイス及びオランダの2大学からのスピンアウトで、心臓血管の機能回復向けに生体インプラントを開発するXeltisが、最新のシリーズDラウンドで3,200万ユーロを調達した。 今回のラウンドには、昨年に1,500万ユーロを調達したラウンドにも出資した中国のGrand Pharmaをはじめ、複数の既存及び新規投資家が参加した。これにより、Xeltisは血液透析に依存する慢性腎臓病(CKD)患者を対象とするバスキュラーアクセスグラフト(aXess)を、極めて重要な臨床試験へと進展させる予定だ。またGrand Pharmaとは、aXess、ならびにその他血液透析製品の臨床候補に関する契約も締結し、中華圏におけるこれらの製品開発、生産、商業化の独占的権利を譲渡した。約1億3,000万人と世界一多いCKD患者数を抱える中国は、両社にとって重要な市場とされている。 
ドローン開発のSkyports、韓国進出でアジア事業加速
英国発ドローンスタートアップのSkyportsは、海上ラストマイル・ドローン配送業者のMarine Drone Tech (MDT)と合弁会社を設立し、韓国の釜山と麗水にオフィスを設立した。Skyportsは、ドローン離着陸用バーティポートの設計・建設、ならびに電動エアタクシーの開発で都市内のエアモビリティを支えている。このMDTとのパートナーシップ、ならびに新オフィス開設により、Skyportsは韓国全土でドローン事業を急速に拡大する予定だ。なお、同社はアジアにおける事業展開を加速しており、昨年には日本にもオフィスを設立している。また兼松からも出資を受ける同社は、あいおいニッセイ同和損保や、日本最大の駐車場・カーシェアリング事業者のパーク24とも協業の可能性を探っているという。同社は、昨年8月に調達した2,140万ポンドのシリーズB資金を原動力に、2025年までにドローンネットワークを本格稼働する予定だ。

バリューベースケアのVytalize Health、1億ドル調達
ニュージャージー発Vytalize Healthが、Enhanced Healthcare PartnersとMonroe Capitalが主導したシリーズCラウンドで1億ドルを調達した。健康維持や持病ケアのためのバリューベース医療に焦点を当てた同社、全米36州に所在するプライマリケア診療所と提携し、25万人以上の患者を持つ。同社のソリューションには、スマートテクノロジー、バーチャルクリニックなどが含まれ、よりアクセスしやすく、持続可能な医療ケアの実現を目指している。2014年の設立以来、データを活用して最もニーズの高い患者を特定し、入院を回避するための優先ケアプログラムなどに取り組んできた。サービスの対価としてではなく、より良い医療的結果に対してお金を払う、という「バリュー追求型」医療が更に浸透することを期待したい。 
クラウドコスト最適化ProsperOps、7,200万ドル調達
テキサスを拠点に、自律型クラウドコスト最適化プラットフォームを提供するProsperOpsが、H.I.G. Growth Partners主導の最新ラウンドで7,200万ドルの資金を調達した。毎月約2,000万件の顧客情報をクラウド上で変更、分析する同社のプラットフォームは、AI、アルゴリズム、リアルタイム実行エンジンでコストを最適化し、平均で68%の節約率向上、ならびにリスク削減を実現する。個人投資分野のロボアドバイザーと同様、洗練された戦略を自律的に実行し、人間以上の節約を組織にもたらすProsperOpsは、現在AWS上で稼働するクライアントのみに対応しているが、今回の資金調達により、Microsoft AzureやGoogle Cloud Platform向けに同様の自動化サービスを構築する予定だ。 
134日で100万ユーザー突破、Tomeが4,300万ドル調達
AIを活用した生産性向上ツールを提供するサンフランシスコ発Tomeが、シリーズB資金として4,300万ドルを調達し、その評価額が3億ドルに達した。2月上旬に、ローンチからたった134日目で100万ユーザーを突破した同社は、Lightspeed Venture Partnersを筆頭に、Stability.aiのCEOや元Google CEOのEric Schmidt氏などからも出資を受けている。Tomeは、マイクロソフトのパワーポイントに不満があったMeta卒業生の2人が、誰もが使える、説得力あるストーリーを語れるようなツールを目指して設立した。GPT-3とDALL-E 2を活用し、入力された説明文をもとに数秒でプレゼンテーションを作成する。プレゼン作成が最も人気のある用途だが、Tomeは視覚的なブログ投稿、3Dプロトタイプなど、あらゆる種類のストーリーテリング機能を備えている。

Alchemy Foodtech、糖質制限ソリューションに進出
シンガポール発ディープテック企業のAlchemy Foodtechは、食品による糖質負荷を低減し、その摂取量を減らすことで、より健康的な精製炭水化物へのアクセスを支援する「Make Carbs Good」をミッションとしている。同社は、独自ブレンドのパウダーを混ぜ合わせることで、味と食感を変えることなく、炭水化物を低糖質で高繊維な食品に変換するための総合的なソリューションを提供する。同社は米に混ぜることができる主力製品「Alchemy Fibre」に加え、先日様々な炭水化物に適応可能な糖質制限ソリューションの展開を発表し、現在シンガポール国内ではファーストフード店Subwayが提供するチョコチップクッキーに使用されている。この特許取得済みのAlchemy FibreTMテクノロジープラットフォームは、植物成分をベースに、糖分や炭水化物を代替し、優れた味と食感を実現しながらグリセミック指数を低減させるため、チョコレートのおいしさはそのままに、糖質を従来の17.5gからほぼ半分に削減することに成功している。 
IoTのWillowmore、最新シリーズA+で資金確保
シンガポールを拠点にスマートアクセス、IoT、またアナリティクス技術を提供するWillowmoreが、シリーズA+ラウンドを無事に終了したと発表した。この資金調達ラウンドは、ファンド運営会社のGreenwillow Capital Management Pte Ltdと中国の投資会社Oriza Holdingsが共同で設立したベンチャーキャピタルファンド、Oriza Greenwillow Technology Fundが主導した。Willowmoreは、重要インフラのスマートアクセスコントロールに特化したセキュリティ、またサステナビリティ関連の技術を提供している。同社によると、この特許技術は、センサー、CCTVシステム、またビデオ解析に統合することができ、重要なインフラのセキュリティと信頼性を損なうことなく自動化を推進できるとしている。これにより、同社は今後、営業チームの拡大、新規市場における販売チャネルの強化、スマートロックやセキュリティソリューションの製品群拡大に向けたR&D投資、またAI能力のさらなる強化に資金を充てる予定だ。
植木 このみ Open Innovation Group, Intralink Limited イントラリンクについて イントラリンクは、海外ベンチャー企業のアジア事業開発、日本大手企業に対する海外オープンイノベーション支援、海外政府機関の経済開発をサポートするグローバルなコンサルティング会社です。