『Oxford Quantum Circuitsの量子技術、東京で採用』、『自律型在庫追跡ドローンのVerityが資金調達』、『パナソニック、欧州で水循環型暖房空調事業拡大』、『ChatGPTに対抗、Anthropicが3億ドル調達』、『デジタルエコノミー決済処理のTilia、2,200万ドル調達』、『Sound Agriculture、味と日持ちを兼ね備えたトマトで躍進』、『エネルギー貯蔵のGreen Li-ion、Equinorなどから資金調達』、『ベトナムの遠隔医療プラットフォームMedigo、200万ドル調達』を取り上げた「イノベーションインサイト:第23回」をお届けします。 
Oxford Quantum Circuitsの量子技術、東京で採用
量子コンピュータを開発するOxford Quantum Circuits(OQC)は、デジタルインフラ企業であるEquinixと提携し、東京に設置されている同社のInternational Business Exchange(IBX)データセンター、TY11にOQCの量子技術が導入されると発表した。これにより、2023年後半には、世界中の企業がEquinixプラットフォームを通じて、量子技術の試用や実験を自ら行うことができるようになる。OQCは昨年7月、研究開発プログラムの加速とアジア市場展開に関する調査のため、4600万ドルを調達した上、先月初めにもアジア、特に日本での拡大計画を強化するため、追加の資金調達を行ったことを明らかにしていた。Equinixとの協業は、OQCのアジア市場での事業展開の始まりに過ぎず、日本を中心とした市場での今後の活躍に期待が高まる。 
自律型在庫追跡ドローンのVerityが資金調達
スイスの在庫追跡スタートアップのVerityが今週、最新のシリーズBラウンドで3,200万ドルを調達した。同社の在庫追跡システムは、完全自律型の屋内用ドローンを活用し、サードパーティ・ロジスティクス・プロバイダー(3PL)、小売業者、メーカー向けにゼロエラーで倉庫を運営する。在庫管理はオートメーションにおける主要なユースケースであり、コストと手間がかかる上、間違いが発生しやすい手作業の在庫スキャン作業に取って代わるもので、このようなソリューションは、人件費や設備費の削減、トラブル解消、顧客サービス向上、廃棄物やCO2排出量の削減を実現することができるという。Verityは手作業による在庫チェックに頼っている倉庫が、いまだに少なくとも15万ヶ所以上存在すると推定しており、同ソリューションの可能性について指摘している。なお、同社は今回の資金調達により、世界13ヶ国、30ヶ所に設置されたシステム導入の完了に向け、事業拡大を進めていく予定だ。 
パナソニック、欧州で水循環型暖房空調事業拡大
パナソニックは、カーボンフリー社会への移行に向けた取り組みをリードする欧州を重点地域と位置づけ、同域内でのヒートポンプ式給湯暖房機(Air to Water:A2W)や水循環型空調事業の拡大に向けた成長戦略を加速させると発表した。事業拡大に向けた欧州への投資額は800億円にのぼり、家庭用及び業務用の給湯・暖房・空調機器のラインアップを充実させ、幅広いニーズに対応したソリューションを提供する。さらに現地のニーズに合った製品・サービスを開発するため、伊ミラノにもR&Dセンターを新設する。同施設では、低GWP(地球温暖化係数)冷媒、クリーンテクノロジー、センシング技術、室内空気質のほか、クラウドやIoTを活用した機器の遠隔監視や故障検知などによる研究開発に取り組む予定だ。

ChatGPTに対抗、Anthropicが3億ドル調達
サンフランシスコを拠点とするAnthropicが、Sparks Capitalがリードする最新ラウンドで追加の3億ドルを調達した。同社は2月にも、MicrosoftがOpenAIに100億ドルを投資した直後、Googleから3億ドルを確保しており、その調達資金総額は13億ドルに達している。チャットボットの厄介な問題の1つは、予期せぬ行動をとりがちだという点。同社のAIチャットボットClaudeは、チャットボットがクリエイターの意図通りに動作し、人種差別的な発言など有害な出力を行わないよう制御するため、AIがユーザーの定めた原則に従った応答を生成するよう訓練される「コンスティテューショナルAI」に着目している。なお、同ソリューションは現在APIを通じた招待制で開発者に公開され、QuoraやNotionなど複数のパートナー企業に既に導入されている。な今回の限定公開が、Anthropicの価格体系を発表する機会になると見られている。 
デジタルエコノミー決済処理のTilia、2,200万ドル調達
デジタルエコノミー向け決済プラットフォームのTiliaが2,200万ドルを調達した。今回の資金調達は、韓国のフィンテック企業Dunamuが、既存投資家のJ.P. Morgan Paymentsに加わって行われた。Linden LabのSecond Lifeで仮想空間上での取引に携わったことをきっかけに、同社は現在、メタバース内での決済プラットフォーム提供を目指している。昨今の決済インフラは、従来の商取引向けに構築されたもので、デジタル環境に追いついていないのが現状。一方で、同社のソリューションは、ユーザー生成コンテンツ (UGC) 取引やマイクロトランザクションに対応し、クリエイターやコラボレーターへの直接支払いを可能にする。今回の資金調達は、デジタルエコノミーのニーズに対応し、クリエイターやソーシャル主導のプラットフォームにおいて新しい収益化を実現するTiliaの決済エンジンへの需要に応える形となった。 
Sound Agriculture、味と日持ちを兼ね備えたトマトで躍進
過去10年間で、BMO Capital Marketsなどから1億6千万ドルを調達しているアグテックスタートアップのSound Agricultureが、「新種」トマトを市場に送り出す。通常トマトといえば、風味がよくても日持ちしないもの、あるいは風味に欠けるがしっかりと日持ちするものという異なる傾向を持つ。しかし、Sound Agricultureは、DNAの中で各遺伝子のオン・オフを制御するプロセスに注目した急成長中の科学分野であるエピジェネティクスを用いて、スーパー商材が持ち合わせる日持ちレベルと、ファーマーズマーケットで買うような風味を備えたトマトを育てる。なお、このエピジェネティクスで育種した「Summer Swell」というトマトは、ニューヨーク都市圏の食料品店にて消費者向けに直接提供されると発表されたばかり。このような流れにより、消費者の好みに合わせた品種がより早く市場に出回る、「オンデマンド」時代が農作物にも訪れると期待されている。

エネルギー貯蔵のGreen Li-ion、Equinorなどから資金調達
シンガポール発Green Li-ion は、脱炭素化の取り組み支援に注力するTrirecが主導し、Equinor VenturesやタイのスマートエネルギーソリューションプロバイダーであるBanpu Nextも参加したプレシリーズBラウンドで、2,050万ドルを調達した。既に米国、欧州、オーストラリア、シンガポールに展開する同社は、使用済みリチウム電池の処理を行い、金属をリサイクルすることで、新しい電池用に正極材を製造している。Green Li-ionのマルチカソード技術はシンガポールで開発・試作され、そのバッテリープロセッサーは米国で生産されている。これらのプロセッサーは一軒家一つほどの大きさがあるものの、平ボディトラックで輸送できるほどモジュール化されており、設置後は1日あたり4~6トンの使用済み電池を処理できるという。同社は今回の資金調達により、商業的に持続可能なリチウムイオン電池の再製造事業を開始するリサイクル業者向けに、年間50台のGreen Li-ionモジュラーユニットを提供できるよう製造規模を拡大する計画だ。 
ベトナムの遠隔医療プラットフォームMedigo、200万ドル調達
オンデマンドで薬の処方と配達サービスを提供する遠隔医療プラットフォームのMedigoが、East Venturesが主導するシリーズA資金調達ラウンドで200万ドルの調達に成功した。2019年にベトナムで設立された同社は、プラットフォームを通じて、高品質な医療サービス求めるユーザーと近場の信頼できる薬局を結びつけ、オンデマンドの薬配達サービスを提供している。利便性が高くスピーディー、かつコストを抑えた医療サービスを提供することで、Medigoアプリは現在、ベトナム全土で50万名以上のアクティブユーザーと約1,000の薬局パートナーを有している。今後は遠隔医師相談、24時間365日迅速な医薬品配達、在宅検査サービスなどのヘルスケアサービスの開発強化を行う予定だ。
植木 このみ Open Innovation Group, Intralink Limited イントラリンクについて イントラリンクは、日本大手企業の海外イノベーション・新規事業開発、海外ベンチャー企業のアジア事業開発、海外政府機関の経済開発をサポートするグローバルなコンサルティング会社です。