『ケンブリッジ大学、300億ポンドの経済効果に貢献』、『独DeepDive 、BMWなどから1,500万ユーロを調達』、『旭化成ファーマ、VectivBioと日本人臨床試験を開始』、『Mediar Therapeutics、線維症の治療法開発で8,500万ドル調達』、『ジェネレーティブAI開発Adept、3.5億ドル調達』、『がん予測検査にAI活かすArtera、9,000万ドル調達』、『インドネシアEtana、DEGなどから資金調達』、『不動産テック99 Group、新たに1,100万ドルを調達』を取り上げた「イノベーションインサイト:第24回」をお届けします。 
ケンブリッジ大学、300億ポンドの経済効果に貢献
英ケンブリッジ大学と、そのスピンアウト企業がもたらす経済効果が、プレミアリーグの約4倍にあたる年間300億ポンドにのぼっていることが明らかになった。London Economicsが発表した最新レポートによると、同大学が1ポンド支出するごとに、11.7ポンドの還元が見込まれており、この経済への貢献は、研究、起業活動、観光、卒業生が雇用にもたらす価値の向上などからもたらされているという。また、このうち80%近くがCambridge GaN Devices(半導体)、 Paragraf (グラフェン)、Constructive Bio(バイオテック)をはじめとする178社のスピンアウト、213社のスタートアップを含む研究・知識交換に関する活動で占められている。ケンブリッジ大学は、オックスフォード大学とともに、既に英国のハイテク経済に大きく貢献してきた。そんな中、英国ではジェレミー・ハント財務省が先週、同国を「次のシリコンバレー」にすることを目標に10億ポンドを投入し、大学や研究機関を中心とした12ヶ所のテックハブクラスターを開発するための投資ゾーン計画を発表したばかり。今後もイノベーションにおける高等教育機関のさらなる活躍が期待される。 
独DeepDive 、BMWなどから1,500万ユーロを調達
ミュンヘンを拠点とするDeepDive が、開発する特許取得済みのラジアルフラックス・デュアルロータモーターの大規模生産に向けて、BMW i VenturesやContinentalの投資部門であるco-paceなどから1,500万ユーロを調達した。DeepDriveのソリューションは、既存の電気自動車が抱える問題を解決する新しいEVアーキテクチャを実現することで、航続距離を20%拡大する上、バッテリーサイズも20%ほど削減することができる。また使用する磁性材料を50%、鉄を80%節減し、製造に必要なレアアースを大幅削減することにも成功している。同社は既に、グローバル自動車メーカー上位10社のうち8社と提携し、モーターのサンプル生産を行っているが、今回の新規調達資金をもとに人材強化と工業生産を開始し、2026年までに製品提供の開始を目指している。 
旭化成ファーマ、VectivBioと日本人臨床試験を開始
スイス発バイオテック企業のVectivBioと旭化成ファーマが、消化管障害を伴う短腸症候群などの希少消化器疾患に対する治療薬の日本市場認可を目指し、日本人を対象に、薬物動態、副作用、安全性、忍容性などを検討する第I相臨床試験を開始した。両社は、昨年3月に開発及び販売に関する独占的ライセンス契約を締結し、協業を開始していたが、今回の臨床試験開始により、旭化成ファーマがVectivBioの技術を活用し、日本の対象患者に新たな治療の選択肢を提供することに一歩近づいたことになる。なお、VectivBioはこの契約で約3,000万ドルの契約一時金を受け取っているが、さらなる開発活動や特定のマイルストーン達成により、最大約1億7,000万ドルの支払いを受けることができる可能性があるという。

Mediar Therapeutics、線維症の治療法開発で8,500万ドル調達
マサチューセッツ州ケンブリッジ発、線維症(様々な疾患における組織の瘢痕化)の治療法を開発するバイオテックMediar Therapeuticsが、Novartisの共同リードによるシリーズAラウンドで8,500万ドルを調達した。今回の資金調達にはPfizer、Eli Lillyなども参加しており、線維症治療薬の研究に対するグローバル医薬品メーカーの継続的な関心を示唆している。現状、線維症の治療薬は少なく、病気の進行を遅らせたり、元の状態に戻したりする能力も限られる中、2019年設立のMediarは、線維症を別の視点から見直そうとしている。多くが線維化の始まりに注目し、瘢痕化の雪だるま現象を阻止してきたのに対し、Mediarは線維化の進行因子に注目している。現在は肝臓、肺、腎臓を対象とした抗体医薬品を開発中で、2024年の臨床試験開始を目指す。なお、アステラス製薬も昨年、嚢胞性線維症の遺伝子治療を行うCarbon Biosciencesに投資している。 
ジェネレーティブAI開発Adept、3.5億ドル調達
サンフランシスコ発Adeptが、シリーズBラウンドで3億5,000万ドルを調達した。最近Anthropicに出資したばかりのSparks Capitalが共同リードしたラウンドには、Microsoft、Atlassian Ventures、Nvidiaなどが参加。Forbesによると、その企業評価額は少なくとも10億ドルにのぼるという。言語や画像の巨大なAI基礎モデルが驚異的な能力を発揮する中、同社は自然言語を用いて、あらゆるソフトウェアツールに対してアクションを実行できる新しいタイプの基礎モデルで挑む。Adeptのビジョンは、さまざまなソフトウェアツールやAPIを使用できるように訓練された「AIチームメイト」を作る点に焦点をおく。OpenAIのようにテキストや画像を生成する方法を研究するのではなく、人々がどのようにコンピュータ上でウェブを閲覧したり、ソフトウェアを操作したりするのかを研究し、テキストの指示をデジタルアクションに変換できるAIモデルを訓練することを目指す。 
がん予測検査にAI活かすArtera、9,000万ドル調達
サンタバーバラを拠点に、様々な種類の入力情報を活用するマルチモーダルAIベースのがん予知・予後予測検査を開発するArteraが、9,000万ドルを調達した。今回のラウンドには、Johnson & Johnsonを含む7つの機関投資家と、セールスフォースCEOのマーク・ベニオフを含むエンジェル投資家が参加した。同社の主力ソリューションは、ArteraAI Prostate Testと呼ばれるもので、限局性前立腺がんにおける治療効果を予測する初の検査方法となる。米国がん協会は、2023年に29万人近くの前立腺がん患者が新たに発生し、3万4000人以上が死亡すると推測している。AIによるArtera独自の検査を活用して、臨床医は患者の予後を予測し、治療に関する意思決定の個別化が可能になる。今回の資金調達により、Arteraは検査の販路を米国内から海外に拡大する上、他のがんにおける治療の個別化を支援する検査の開発にも投資する予定だ。

インドネシアEtana、DEGなどから資金調達
インドネシアのPT Etana Biotechnologies Indonesiaが、DEGが主導し、Yunfeng Capital、HighLight Capital、East Venturesなどが参加したラウンドで資金調達を行った。2014年に設立された同社は、がんを含むさまざまな代謝性疾患、自己免疫疾患、その他の生命を脅かす疾患を治療するために、高品質で手頃な価格のソリューションを提供するバイオテック企業だ。Etanaは、ASEAN地域初のmRNA技術を持つ企業として、現在mRNAプラットフォーム、タンパク質、またモノクローナル抗体の生産に注力している。この技術は柔軟なワクチン開発プラットフォームとしても利用できるため、がんやワクチンなどに対する革新的で柔軟なバイオ医薬品のニーズへ迅速に対応できるようになる。今回調達した資金は、同社のパイプラインとポートフォリオのさらなる強化、特にがん領域における原薬製造施設に充てられるという。 
不動産テック99 Group、新たに1,100万ドルを調達
シンガポールとインドネシアで複数の不動産ポータルを所有・運営する99 Groupが、Gaw Capital Partnersと、シンガポールの大手銀行OCBC の投資部門であるOCBC NISP VenturaによるシリーズCエクステンションラウンドで1,100万ドルを調達した。同社は、他にもSequoia Capital India 、500 Startups、Allianz X などのからも出資を受けてきた経緯を持ち、今回の調達により、これまでの調達資金総額は8,000万ドル以上にのぼる。2013年に設立された99 Groupは、インドネシアとシンガポールの不動産の賃貸と購入のソリューションに焦点を当てた99.co、rumah123.com、iProperty.com.sg、SRX.com.sgなど多数のウェブサイトを運営している。同社は今後も、戦略的パートナーシップや買収を通じて、成長・拡大の継続を目指す。
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