『蘭学生起業家向けThe Philips Innovation Awardの行方』、『配車サービスBoltの企業評価額が1.9億ドルに』、『大学内イノベーション加速を目的としたファンドが増加』、『デジタルバンキングのMenigaが930万ドルを調達』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト：第9回」をお届けします。
このニュースレターでは、日本企業のグローバル展開、新規事業開拓に役立つ欧州の最新イノベーション、エコシステム、テクノロジー情報を、毎週ピックアップして現地から配信しています。
蘭学生起業家向けThe Philips Innovation Awardの行方
スタートアップを運営する学生を対象としたオランダ最大のアワード
The Philips Innovation Awardの勝者が発表された。15回目となる今回は、見パーソナライズされた高解像度の人工人間モデルを自動的に生成し、大規模に1対1のマーケティングを可能にするツール開発を行うアムステルダム発AIスタートアップの
Lalalandが優勝した。またビジネスに転換可能な優れたアイデアを持つ学生に贈られるRough Diamond Awardは、プライバシーや規制を気にすることなくデータを使用・共有できる合成データを生成するディープラーニングソフトウェアを開発する
Synthoが受賞した。
別のブログでも紹介したように蘭のエコシステムは今、戦略的立地を活用した高度なインフラとデジタルハブとしての強みを生かし、ブレグジット後の新たな『E U』の中心地として注目を集めている。
配車サービスBoltの企業評価額が1.9億ドルに
エストニア発配車サービス
Boltが、コンバーチブルノート（先にローンとして資金を貸し付け、後に算出される時価総額に見合った株を投資元に戻す資金調達方法）で新たに約1.1億ドルの資金を確保し、さらに企業価値も1.9億ドルと評価されたことが明らかになった。以前はTaxifyとして知られていた同社は、フードデリバリーや電動スクーター事業にも進出したことで2019年にBoltに改名し、世界35ヵ国で3000万人以上の利用者を抱えている。今回の資金提供には、国際協力銀行が設立に携わり、多数の日本大手企業が拠出し北欧・バルト諸国に投資するVCの
Nordic Ninjaや、ソフトバンクも関わる中国配車サービス
Didi、Daimlerらが参画した。競合Uberを筆頭に、同業界はパンデミックの影響を激しく受けているものの、Boltはこの資金確保により各種サービスの更なる強化を予定しており、状況は改善に向かっているようだ。
大学内イノベーション加速を目的としたファンドが増加
イスラエルでは学生、研究者、及び卒業生が設立したスタートアップに投資することで学内におけるイノベーションの加速と起業家精神を高めるため、学生が運営する、または学生にフォーカスを置いたベンチャーキャピタルファンドを立ち上げる高等教育機関が増えている。同国内では既に
テルアビブ大学など、複数の大学が同様の動きを見せているが、
ハイファ大学は今月、アーリースタートアップを中心に投資を行うVC の
fresh.fundとともに新たにThe HIL Fundを設立した。早速このファンド活用のためのピッチコンテストも実施され、集団心理医療を使用したデジタルメンタルヘルスプラットフォームや、ホロコーストに関連した教育用VRプログラムなどが選出された。ハリファ大学は特に海洋科学、デジタルヘルスケア、エドテックに強く、同分野における今後の学内イノベーション加速が期待される。
デジタルバンキングのMenigaが930万ドルを調達
欧州大手銀行にデジタルバンキングソリューションを提供するフィンテック企業の
Menigaが約930万ドルを調達した。アイスランド人の起業家3名によって設立された同社は、現在ロンドンを拠点に取引データと消費者のトレンドを利用し、銀行がより優れたデジタルエクスペリエンスを顧客に提供するためのプラットフォームを開発している。提供するデジタルサービスは、データ集約技術、個人及びビジネスの財務管理ソリューション、キャッシュバック特典など幅広く、最近は仏総合金融機関の
クレディ・アグリコルが同社技術を活用したバンキングアプリを公開した。昨年バルセロナとシンガポールに拠点を持つリワードプラットフォームWrappを買収し、現在は世界30ヵ国で1億人に近い利用者がいるという。
植木このみ
Open Innovation Group, Intralink Limited
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