『次世代生体認証センサーの蘭Sencure が資金調達』、『火星でも使用可能な、生きた有機3D印刷素材』、『相次ぐ日本企業とイスラエル企業のコラボ』、『4月大型ラウンドでの資金調達成功企業』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第57回」をお届けします。
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このニュースレターでは、日本企業のグローバル展開、新規事業開拓に役立つ欧州の最新イノベーション、エコシステム、テクノロジー情報を、毎週ピックアップして現地から配信しています。
次世代生体認証センサーの蘭Sencure が資金調達
医療機器やウェアラブル向けの生体認証センサー技術を開発する
Sencureが、弊社クライアントであるオンサイト水素製造のなど、インパクト・ディープテックに出資する
Cottonwood Technology Fundなどから150万ユーロを調達した。ICチップを設計する
ItoM B.V.の医療部門から今年スピンアウトしたばかりのSencureは、IPライセンスベースで医療機器に実装できる信号処理アルゴリズムの広範なライブラリにより、心電図、筋電図、脳波などの生理学的パラメータを測定できる、電力効率が高く高品質なICチップを開発している。この技術は、COVID-19、心臓病、慢性閉塞性肺疾患、小児喘息、神経学的症例などに関する患者の遠隔監視と診断だけでなく、一般的にもアスリートのトレーニングやリハビリの改善、日常生活におけるストレスや活動レベルの把握にも役立つという。なお、新型チップは来年初旬に発表予定。
火星でも使用可能な、生きた有機3D印刷素材
オランダ最大の公立工科大学である
デルフト工科大学(TU Delft)において、藻類を持続可能なエネルギー源に変換した『生きた有機3D印刷素材』が開発された。最も有望な使用方法として挙げられている人工葉は、自然の葉が光合成を行うように、太陽光を使ってエネルギーを生み出すことができるため、材料自体の生分解性と微細藻類細胞のリサイクル性により、将来的には火星などの植物が育たない環境での活用が可能だという。また人工葉の基本材料にはバクテリアセルロースが採用され、その柔軟性や強度などの形状を維持する能力を含む独自の機械的特性を備えた素材を生成する。そして3Dプリンターを使用して、生きた藻類をバクテリアセルロースに適用することで、その藻類がインクとして機能する。この2つの素材の組み合わせにより、丈夫で耐久性があると同時に、生分解性と自己再生能力を持ち合わせる、持続可能性の高い素材を作り出すことができると期待されている。
相次ぐ日本企業とイスラエル企業のコラボ
先週の
SOMPOグループとParametrixの新商品共同開発のニュースに次いで、大手日本企業のイスラエル企業への投資・提携に関する発表が続いている。国内有数のファインケミカルメーカーであるDICは4月末、健康食品などの藻類由来製品の事業拡大に向け、バイオテック企業の
Vaxa Technologiesへ出資した。Vaxaは再生可能エネルギーを活用したプロセスで、LEDを用いた独自のフォトバイオリアクター(PBR)設備と藻類培養技術に基づいたサステイナブルな藻類製品を開発している。一方、トヨタグループの日野自動車は、新たな社会的価値の提供を目的に次世代商用モビリティを実現するため、独自のEVプラットフォームを開発する
REE Automotiveとの業務提携を発表した。両社はこの技術を活用した共同開発により、革新的なコンセプトのモビリティ開発、モビリティ起点のデータ活用、ビジネスモデルの検討を行い、2022年までに次世代モビリティのプロトタイプ開発を目指すという。
DIC (公式プレスリリース)
HINO (公式プレスリリース)
4月大型ラウンドでの資金調達成功企業
2021年4月に入り、既にMessagebird(クラウド型コミュニケーション・プラットフォーム)、Exscientia(AI創薬)、Blockchain.com(仮想通貨ウォレット・取引所)などの有名企業が1億ドルを超えるメガラウンドで資金を調達する中、その他成長中のテック企業も大型ラウンドに成功している。以下、それらの中から注目企業をまとめてみた。
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TravelPerk(Spain、6億ドル):各社のポリシーに基づいた、企業向けの出張管理・予約SaaSプラットフォーム
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Caresyntax(Germany、1億ドル):IoTによるリスク特定・管理、ワークフローの自動化、知識の共有強化を通した分析・統合による手術結果の改善ソリューション
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Ornikar(France、2億ドル):サブスクリプションベースで運転レッスンや学科教習を提供するget-your-license-fasterプラットフォーム
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Polestar(Sweden、5億ドル):Volvoが共同設立し、韓国SKグループも出資するプレミアムEVブランド
植木 このみ
Open Innovation Group, Intralink Limited
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