『公共交通機向けAIプラットフォームのOptibusが資金調達』『英クリーンテックのLevidian、UAEでCO2e削減目指す』『スマートスキンで技術的ブレークスルー実現』『日EU間における「Horizon Europe」提携交渉の開始』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第110回」をお届けします。
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公共交通機向けAIプラットフォームのOptibusが資金調達
Covid-19の大流行は、バス、電車、飛行機など、あらゆる公共交通機関に影響を及ぼしている。公共交通機関が回復しつつある中、関係者はこの業界をより回復力があり持続可能な、かつデジタルなものにするためのソリューションを求めている。弊社のクライアントであるOptibusは、こうしたニーズに対応するソリューションを開発し、世界中から注目を集めている。Optibusは公共交通機関向けのAIプラットフォームを提供しており、路線管理や計画、労務管理等などの様々な機能を通じ、DX、事業の効率化や生産性向上を推進する。同社はシリーズD資金として1億ドルを調達。これにより同社の評価額は13億ドルに達し、公共交通技術分野における初の「ユニコーン」となった。Optibus は1,000以上の都市に顧客を有しており、今回の資金調達は、製品群の継続的な拡大と幅広い事業展開に活用される予定である。
英クリーンテックのLevidian、UAEでCO2e削減目指す
CO2排出企業は、脱炭素化のための新技術を常に模索している。英国に拠点を置くクリーンテックのスタートアップ企業Levidian Nanosystemsは、この分野の革新企業の一つで、同社の脱炭素装置LOOPをUAEに展開するためZero Carbon Venturesと約8億ドルの輸出契約を締結したばかりである。Levidianの特許取得済み技術は、触媒や添加剤を使用せずにメタンをその構成原子である水素と炭素に分解する。炭素はグラフェンに固定され、水素は混合物として使用されるか、分離した形で貯蔵される。この契約により、LOOPは今後10年間でUAEの500カ所に展開され、大手石油・ガス会社や政府機関と共同で埋立地やガスフレア現場の廃棄ガスを脱炭素化し、二酸化炭素換算(CO2e)で50万トンを削減する予定である。
スマートスキンで技術的ブレークスルー実現
皮膚は人間の最大の感覚器官であり、湿度、温度、圧力などの情報を同時に感知して伝達することができる。このような多感覚特性をもつ材料の開発は中々達成することが難しいとされている中、既にTU Grazの固体物理学研究所のチームにより大きな技術的ブレークスルーが達成されている。Anna Maria Cocliteとそのチームが開発した薄型の「スマートスキン」は、1平方ミリメートルあたり2000個のセンサーを備え、圧力、湿度、温度を同時に感知して電子信号を生成することができる。この技術は、人間の皮膚と同じように統合され、より正確なセンシングシステムが必要とされるロボット工学やスマート義肢に応用される予定である。
日EU間における「Horizon Europe」提携交渉の開始
先週東京で開催された日・EU定期首脳協議において、日・EU間のパートナーシップにとって重要な節目が訪れた。日・EU首脳は、日本が「Horizon Europe」プログラムに関連国として参加する可能性を探るための協議開始を発表した。Horizon Europeは、EUと共通の価値観を持ち、科学技術やイノベーションの分野で優れた能力を発揮していることを考慮し、EUの地理的近接性のない国々に提携のステータスを提供する最初のEU枠組みプログラムである。日本は韓国に次ぐ2番目の東アジアの国となり、955億ユーロの研究およびイノベーションプログラムへの参加に向けてEUと非公式協議を開始した。このマイルストーンは、すでに良好なレベルにある日・EU間の協力関係に基づいている。Horizon 2020のもと、日本の219の事業体が、欧州をはじめとする世界各地の研究機関とともに176のプロジェクトに参加した。日・EUは今後、想定される協力関係や参加条件に関する協議を進めていく。

植木 このみ
Open Innovation Group, Intralink Limited
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