『Sequoiaが選ぶ欧州のスタートアップ17社』『ブレーキから発生する有害粒子を規制対象へ 』『プラスチックに代わる新素材を開発』『TransferMate、クロスボーダー決済のイノベーション加速』を取り上げた「欧州イノベーションインサイト:第111回」をお届けします。
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Sequoiaが選ぶ欧州のスタートアップ17社
米VCのSequoia Capitalは、欧州のArcアクセラレータープログラムの最初のコホートを形成する欧州のシードステージ企業17社を発表した。このコホートは13カ国から集まり、AI、B2B、コンシューマー、フィンテックなど、さまざまな分野にまたがっている。選ばれたコホートには、Synativのようなコンピュータビジョンに特化した企業、Akeeroのようなサイバーセキュリティのスタートアップ、Fidesのような企業コンプライアンスソリューションを開発するスタートアップが含まれている。これらのスタートアップは、Sequoiaから初期投資を受けるとともに、長期的な企業づくりのためのトレーニングを受けることになる。Sequoiaは、Google、Oracle、Appleなどの企業への早期投資で知られており、今回選ばれた17社のスタートアップも、特に優れた成長性を示していると見られる。Sequoiaのアクセラレータは、より早い段階で革新的なスタートアップ企業との関係を確立しようとするVCの大きなトレンドの一部を形成している。
ブレーキから発生する有害粒子を規制対象へ
自動車が大気汚染に与える影響を抑制するためのEUの規制で、ブレーキパッドの摩耗による超微粒子が初めて対象となる。7月に発表される予定のEuro7規制では、従来型自動車と電気自動車のブレーキパッドから排出される微粒子に特に焦点が当てられることになる。ブレーキパッドから排出される粒子の大きさは、PM10(粗い塵)からPM2.5(細かい塵)までさまざまで、土壌や水に影響を与えるだけでなく、呼吸器の問題や特定のがんの発生、アルツハイマー病のリスクなどを高める可能性がある。EUが自動車メーカーへの規制を強化する中、この分野で革新的なソリューションを開発するスタートアップ企業にますます注目が集まることが予想される。
プラスチックに代わる新素材を開発
現代社会において、プラスチックの使用はますます問題視されており、石油由来のポリマーに代わる新たな代替品を発見するために多くの研究が行われている。ポルトガルのコインブラ大学を中心とする研究チームは、ナノセルロースと繊維状鉱物(セルロースナノフィブリル:CNF)を組み合わせた、完全に分解可能で生体適合性のある革新的なプラスチック代替品を開発した。研究チームによると、この新種のコンポジット膜は健康へのリスクがなく、従来の方法に比べて製造時間が1週間から数時間に大幅に短縮されるとのことだ。これは、食品包装や電子印刷などさまざまな用途に応用できる可能性があり、より持続可能なプラスチック製造への道を開くものとなるであろう。
TransferMate、クロスボーダー決済のイノベーション加速
欧州でまた新たなユニコーンが誕生した。ダブリンに拠点を置くB2B決済Infrastructure-as-a-Service (IaaS)のスタートアップ企業TransferMateは、新たなラウンドで7000万ドルを調達し、同社の評価額は10億ドル、総資金額は1億3000万ドルに達したと発表している。TransferMateは、ソフトウェアプロバイダー、銀行、フィンテック企業に対して、従来のSWIFTシステムよりも高速かつ低コストで、201カ国以上、141通貨でのクロスボーダー決済を可能にする。TransferMateは、同社への出資者でもあるINGやAIBといった欧州の銀行を顧客に持つ。TransferMateは今年ユニコーンの評価を得たデジタル食品注文プラットフォームFlipdishや収益ベースの資金調達プラットフォームWayflyerなどに続き、新たに誕生したアイルランドのテックユニコーンの最新企業となる。

植木 このみ
Open Innovation Group, Intralink Limited
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