『ケンブリッジ・エコシステムの台頭』、『Plagazi、廃棄物の水素変換プロジェクトに助成金確保』、『リーガルテックのLegora、シリーズB資金確保で評価額が6.7億ドルに』、『シンガポールのGprnt、三菱UFJ銀行などからシード資金を調達』、『再エネ供給でマレーシア・ベトナム・シンガポールが提携』、『LMArena、AIベンチマーク。プラットフォーム拡大で1億ドル調達』、『営業担当者向けのAIコーチングのSiro、5,000万ドルを調達』、『Pallet、物流向けAI人材拡充に向け2,700万ドルを調達』を取り上げた「イノベーションインサイト:第135回」をお届けします。

Founders at the University of Cambridgeとの提携を通じて発表された最新のDealroomレポートによると、英国ケンブリッジのエコシステムは、近年著しく成長を遂げており、国内テック産業の総価値の18%を占め、ロンドンに次ぐ第2位の規模を誇る。2024年、同エコシステムは前年比の倍となる3億ドルのVC資金を調達した。これには、自動運転のWayveと量子コンピューティングのQuantinuumによる大規模ラウンドが大きく貢献している。ケンブリッジは、欧州でディープテックのVC投資においてロンドンとパリに次ぐ3位に位置付けられている。セグメント別でも、腫瘍学、AIを活用した創薬、遺伝学、半導体、チップおよびプロセッサ、クライメートテックなどが顕著な活躍を見せている。またケンブリッジのシード企業の約41%がシリーズAに進出していることから、シード企業の成長にも強みを持つことが強調されている。なお、この数値はベイエリア(40%)と類似しており、欧州全体の24%よりも大幅に高い水準だ。これは、ケンブリッジの革新的なテック企業がスケールアップへと成長する有望なパイプラインが存在することを示している。
【告知】
この度、イントラリンクは2025年9月15〜19日に英国ケンブリッジで開催されるCambridge Tech Week(CTW)に後援パートナーとして参加することとなりました。弊社を通じてCTWにご参加いただく企業様には、ピッチイベント、登壇スロット、現地テック企業・研究機関との面談設定などテーラーメイドのプラン・アクティビティを企画・提供いたします。詳細は、こちらから。

スウェーデン発クライメートテック企業のPlagaziが、廃棄物ガス化による水素生産を目的とした「Gävle Circular Park」プロジェクトに対し、EUイノベーション基金から2,950万ドルの助成金を確保した。2007年に設立されたPlagaziは、リサイクルできない廃棄物を有用な製品に変換する技術の開発を進めており。Gävle Circular Parkでは、同社は特許取得済みの熱化学的リサイクルプロセスとInEnTecのプラズマガス化技術を組み合わせ、廃棄物から水素を生産、CO2を液体状態で回収する。この施設は、年間66,000トンの廃棄物を処理し、最大12,000トンの持続可能な水素と10MWの地域暖房を地元自治体向けに供給する上、水電解に基づく水素生産技術と競合可能な技術で水の使用量を3分の1、電気使用量を80%削減するという。この発表は、2024年10月に発表された助成金候補の選定結果に続くもので、Plagaziのプロジェクトは、337件の応募の中から85件の助成対象プロジェクトの一つとして選出された。なお、同施設は2028年5月末までに操業を開始する予定だ。

スウェーデン発Legora(旧社名:Leya)は、最新のシリーズBラウンドで8,000万ドルの資金を調達し、企業評価額も6億7,500万ドルに達したと発表した。2023年に設立されたLegoraは、弁護士向けのAI搭載プラットフォームを開発、セキュリティ、プライバシー、コンプライアンスを最優先に、法的文書の調査、確認、作成を効率化する。そのユーザーベースは、20の市場にわたる250社以上の法律事務所および法務チームに及び、それには国籍法律事務所であるBird & BirdやGoodwin Procter、Mannheimer Swartlingなども含まれている。同社は、設立からシリーズBラウンドまでを2年未満で達成し、AI技術と法律サービスなどその高度に専門化された分野への応用に対する投資家の関心拡大を反映しながら、この大型資金調達というマイルストーンを達成した。今後同社は、この資金をもとに製品開発と米国市場展開を加速する。


シンガポールを拠点とするサステナビリティ報告・データプラットフォーム企業Gprntは、戦略的投資家である三菱UFJ銀行、またグローバルなデジタル決済・金融テクノロジープロバイダーのAnt Internationalから462万ドルのシード資金を調達した。両社は今回の出資を通じて、Gprntによるサステナビリティ報告の簡素化および拡張を支援する構えだ。また自社エコシステムへのGprntの統合を進め、企業のサステナビリティ開示を促進するとともに、顧客企業のスコープ3におけるサプライチェーン・データのギャップ解消を後押しする。これにより新たなパートナーシップや資金調達機会の創出も視野に入れている。Gprntは、先週木曜日に開催されたイベントにおいて、シンガポール企業が基本的なサステナビリティ指標を自動生成できる世界初の全国規模ユーティリティを発表した。同プラットフォームは、シンガポール金融管理局(MAS)が設立したGlobal Finance & Technology Network(GFTN)のデジタル基盤として機能するものである。

マレーシア、ベトナム、シンガポールの主要エネルギー企業が、三国間における再生可能電力輸出の実現可能性を共同で評価するための開発協定に調印した。この協定は、地域エネルギー協力における画期的な動きとされ、商業的に実現可能なソリューションを通じて地域間の電力統合を推進、脱炭素化を加速することを目的としている。関係各社は、5月27日付の共同声明において、業界をリードする企業としての責任と覚悟を強調した上で、この協定に基づき、新たな海底ケーブルを通じたスキームの評価を進める。ケーブルはマレー半島の国家送電網に接続され、加えて再生可能エネルギーの発電および貯蔵設備の整備も検討対象となる。この目的のもと、関係当局と緊密に連携し、各プロジェクト段階における認可の取得を進めながら、域内における電力統合とエネルギー連携の具体化に向けた体制を構築していく。なお、マレーシアは2025年のASEAN議長国として、域内における持続可能性、レジリエンス、経済成長を支える協働体制の推進において中核的な役割を担っている。


AIベンチマーク・プラットフォーム「Chatbot Arena」を運営するLMArenaが、評価額6億ドルで、AI領域では異例の大型資金調達となる1億ドルのシード資金を調達した。
UCバークレーの研究プロジェクトから生まれたLMArenaは、大規模言語モデル(LLM)をブラインド形式で比較できる中立的なプラットフォームを提供し、実際のユーザー嗜好に基づいたランキングが特徴としている。すでにOpenAIやGoogle、Anthropicといった主要企業も、透明性や幅広いユーザー・エンゲージメントを理由に同プラットフォームを採用している。一部でバイアスの指摘があるものの、LMArenaは手法の公平性と透明性を強調している。Andreessen HorowitzとUC Investmentsが主導した今回の調達資金は今後、プラットフォーム拡充と分野別の評価ツール開発に活用される予定だ。AIの普及が進む中、LMArenaは独立した評価機関として存在感を高めている。

AIを活用した営業支援スタートアップのSiroは、SignalFire主導のシリーズBラウンドで5,000万ドルを調達し、資金調達総額も7,500万ドルに達した。Siroは、商談内容をチーム全体で共有・学習できる仕組みを特徴に、対面営業の会話をモバイルアプリで自動的に記録・分析し、営業担当者の会話力や対応力を可視化するプラットフォームを提供する。同社によると、訪問販売の実体験をもとに立ち上げられた同サービスは、HVACなど業界特化型のAIモデルを活用した実践的なコーチング機能も備えているという。これまで記録されることのなかった対面営業の「ダークマター」をデジタル化し、顧客理解や製品改善に活かせる点が高く評価されている。

AI物流プラットフォーム「CoPallet」を提供するPalletは、General Catalyst主導、Bain Capital VenturesやActivant Capitalなども参加した最新のシリーズBラウンドで2,700万ドルを調達し、調達総額も5,000万ドルに達した。関税、そして経済的な圧力がサプライチェーンの見直しを強いる中、サービス品質を損なうことなくコスト削減を図るため、多くの物流業者が自動化に注力している。CoPalletは、注文入力や見積もり、追跡といった煩雑な業務をAIで自動化し、従来の手作業に比べて10倍のスピード、半分以下のコストで処理する。すでに中規模の運送会社では、25人の業務を再配置し、数百万ドルのコスト削減を実現した事例もあるという。11兆ドル規模の物流業界はいまだ手作業が多く残っており、Palletのようなソリューションへのニーズは高まるばかり。今回の調達資金は、技術開発およびエンジニアリング体制の強化に充てられ、増加する物流業者や荷主からの需要に対応していく計画だ。
