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イノベーションインサイト:第6回

『効率的な成長を続ける欧州の穴場、CEE 』、『英国政府、国内初となる商業用リチウム精製所の設立を発表 』、『繊維生産の近代化を目指すSmartex が、約2500万ドルを調達』、『リモートワークの未来に賭けるスタートアップと投資家』、『ジェネレーティブAIの台頭で変わる将来』、『メタバース普及が現実味帯びず、VR/AR資金調達減少』、『TV東京、ベトナムPops Worldwideに出資』、『シンガポールNuevocor、遺伝子治療で1160米ドル』を取り上げた「イノベーションインサイト:第6回」をお届けします。

効率的な成長を続ける欧州の穴場、CEE

Dealroomの最新レポートによると、 今年の中東欧(CEE) 地域へのVC投資は既に530億ユーロに達し、年間総額の最高記録を更新する勢いだ。CEEへのVC投資は2000年以降倍増しており、昨年からはユニコーンの輩出数も更新し続け、その数は合計44社にのぼる。また2022年に入り、オンデマンド印刷のPrintfulや、経費管理ソフトウェアのPayhawkが拠点を置くリガ(ラトビア)やソフィア(ブルガリア)などがユニコーンシティとなった。セクター別では、エンタープライズソフトウェアに強みを持つ一方、フィンテック、トランスポーテーション、Eコマース、セキュリティ企業も顕著な資金を集めている。またポーランドの支払インフラ開発のRampを筆頭に、CEEはその他にもゲーム、Web3、Crypto などのディスラプティブテクノロジーを含む多くの分野で有望なスタートアップの本拠地となっている。

英国政府、国内初となる商業用リチウム精製所の設立を発表

リチウムはバッテリーに不可欠な構成要素であり、その安全な供給は将来の自動車及びエネルギー産業にとって非常に重要である。英国政府は今週、イングランド北部のティーズサイド(Teesside)に、国内初となる大規模商業用リチウム精製所を設立すると発表した。同政府は、Automotive Transformation Fundを通じて、このプロジェクトを担うGreen Lithiumに60万ポンド以上の助成金を提供してきた。この最新のリチウム精製所は、電気自動車、再エネ、コンシューマーテクノロジーのサプライチェーンなどに使用されるバッテリー向けの材料を生産する。現時点で、東アジアが世界的なリチウム加工市場の89%を占めており、欧州に精製所は存在していない。アジア圏外で初となる商業用リチウム精錬所の設立を目指すGreen Lithium は、その建設において1,000 人以上、さらに精錬所の運営開始後には250人以上の地元民に長期的で高スキルな雇用を提供するという。

繊維生産の近代化を目指すSmartex が、約2500万ドルを調達

繊維及びファッション産業は、前世界で 3 番目に汚染度の高い産業であり、廃水排出量の 20% 、さらにCO2排出量の 10% を占めている。この点に注目するポルトガル発のSmartex は、昨年のWeb SummitにおいてSiemensが後援する『PITCH』というコンテストで優勝したばかりで、今回のシリーズAラウンドでは約2500万ドルの調達に成功した。同社は、製造中に繊維の欠陥を検出するため、丸編み機向けに自動化されたリアルタイム検査ソフトウェアを開発している。このソリューションにより早い段階で不良品を特定することで、Smartex は材料の無駄を防ぐために生産を自動的に停止し、繊維廃棄物、CO2 排出量、エネルギー、水、生産時間、設備投資を削減することができるという。同社は今回の資金を活用して、事業の新規市場・地域を開発していく予定だ。

リモートワークの未来に賭けるスタートアップと投資家

リモートワークの廃止を表明する企業が増える中、ハイテクスタートアップやその投資家は、続くリモートワークをサポートするために様々なデジタルツールを提供している。そして、この賭けは成功しつつあるようだ。カリフォルニア州サンマテオのスタートアップRemotebaseは、遠隔地のソフトウェア・エンジニアと企業をつなぐサービスを提供しており、昨年の年間売上は約600%に急増、先週、Indus Valley CapitalとHustle Fundが主導したプレシリーズAラウンドで、210万ドルの資金調達ラウンドを発表したばかりだ。一方、シカゴ発Atlasは、160ヶ国以上の遠隔地で働くスタッフの雇用規則や規制を遵守するための技術プラットフォームで、成長投資会社Sixth Street Growthから新たに2億ドルを調達した。どうやら投資家たちは、企業の思惑とは裏腹に、リモートワークが今後も続くと確信しているようだ。

ジェネレーティブAIの台頭で変わる将来

テクノロジーの世界で、ジェネレーティブAIほど注目されているトピックがあるだろうか。既存データを単に分析するだけでなく、それを使って新規コンテンツを生成できるジェネレーティブAIだが、この夏にテキストから画像に変換するAIモデルが出現しホットトピックとなって以来、Stability AIなどの新興企業に対する10億ドルの資金調達、大々的な会社設立パーティー、続くメディア報道、起業家の波、急遽AIフォーカス企業として生まれ変わるベンチャーキャピタルなどが見られるようになった。AIによって生成されたマーケティングコピーは、ほんの始まりに過ぎない。医療分野では、ジェネレーティブ言語モデルが臨床医の診断書作成を支援する。ホスピタリティからeコマース、ヘルスケアから金融サービスまで、あらゆる業界のカスタマーサービスやコールセンターの世界も、社内のITや人事のヘルプデスクもジェネレーティブAIの台頭で一変するとされている。そして続くのは、膨大な価値の創造、雇用減少に対する懸念、数十億ドル規模のAIファースト企業達などだろうか。

メタバース普及が現実味帯びず、VR/AR資金調達減少

バーチャルリアリティ (VR)、拡張現実 (AR)、仮想世界のカテゴリーに属する企業への資金提供が、2021年第4四半期に21億ドル超を記録して以来、メタバース関連の資金調達は約7億6000万ドルまで減少している。もちろん、世界全体のベンチャー資金も激減しており、ARとVRのカテゴリは、投資家のリスク回避の高まりの例として決して孤立しているわけではないが、注目分野はトレンドに逆行するという現象が、今回は起こっていない。しかし、投資家がこのカテゴリーを見捨てたわけではないことは明らかである。1億ドル以上のメタバースおよびAR関連ラウンドが、Web3のLootMogul、アバター開発のGenies含め、今年少なくとも7件クローズしている。資金調達の上下動は、仮想世界に引き込むデジタル技術のコンセプトが、依然として魅力的なものであることを示している。そして必然的に投資家は、そのビジョン追求のため、メタの例にもあるように、多くの損失を覚悟しなければならないようだ。

TV東京、ベトナムPops Worldwideに出資

2008年に設立され、ホーチミンに本社を置くPops Worldwideは、動画配信サービスとSNSを通じて計6億9,000万名の視聴者にテレビドラマ、アニメーションなどの娯楽コンテンツを提供している。オリジナル作品に加え、国内外からのコンテンツも提供しており、タイ、インドネシアにも拠点を構える。両社は、2020年から「NARUTO-ナルト-」や「ケロロ軍曹」などのアニメの吹き替え版を東南アジア地域で展開するために協力しているが、今回のパートナーシップのもと、東南アジアのZ世代に日本のコンテンツを積極的に紹介していく予定だ。

シンガポールNuevocor、遺伝子治療で1160米ドル

シンガポールに拠点を置く前臨床段階のバイオテクノロジースタートアップNuevocorは、遺伝による心疾患治療のためのアデノ随伴ウイルス遺伝子治療法を開発している。同ソリューションは、主に心筋症を対象としている。心筋症とは、心臓が血液を全身に送り出すのを困難にする遺伝的および非遺伝的疾患を指し、中でも拡張型心筋症は有病率が250人に1人で、心不全の最も一般的な原因の一つであるとされる。同社は、2021年に行われた2,400万ドルのシリーズA投資ラウンドに加え、既存のSingapore Economic Development Board、Zora Innovations、SEEDS Capitalなどから追加で1160万ドルを調達した。その他、シンガポール発のバイオテックスタートアップで、今年資金調達を受けた企業にはImmunoScapeNalageneticsAMILIなどが挙げられる。 植木 このみ Open Innovation Group, Intralink Limited イントラリンクについて イントラリンクは、海外ベンチャー企業のアジア事業開発、日本大手企業に対する海外オープンイノベーション支援、海外政府機関の経済開発をサポートするグローバルなコンサルティング会社です。

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